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損益計算書(P/L) その3

≪法人税・当期純利益≫
最後に、法人税と最終的な当期純利益を算出するまでの流れです。

 

個人の所得に所得税や住民税がかかるのと同じように、会社が出した利益にも法人税などがかかります。

 

2015年現在の日本の法人税(法定実効税率)は約35%です。

 

そして法人税は税引前当期純利益にかかります。

 

よって、法人税は以下のように計算できます。

 

法人税=税引前当期純利益×0.35=800万円×0.35=280万円

 

そして税引前当期純利益から法人税を引いたものが当期純利益です。

 

今回の自動車部品製造会社の場合は、以下の式になります。

 

 

当期純利益5200=税引前当期純利益8000−法人税2800

 

 

税引前当期純利益が800万円、法人税が280万円なので、当期純利益は520万円です。

 

現在、法人税減税が議論され始めており、会社の規模などによって優遇措置などもあります。

 

しかし、日本の法人税は世界的にも高いのが実情です。

 

このため、特に株主が少ない中小企業では会社の利益を出すことよりも節税をすることに重きが置かれる傾向が強く、節税対策が盛んに行われています。

 

そのため、なんと70%近くの企業の税引前当期純利益が赤字となっており、法人税が免除されているのが実情です。

 

よって、法人税は減税が検討されている一方で、赤字企業への課税も検討され始めています。

 

 

【会社に直接入るお金と出ていくお金には何がある?】
これまで、損益計算書から読み取れることを一通り見てきました。

 

ここで、これまでの知識を整理するために会社に直接入るお金と出ていくお金についてまとめてみましょう。

 

会社に直接入るお金と出ていくお金は、以下のようになります。

損益計算書

直接入ってくるお金は、売上・営業外収益・特別利益の3種類です。

 

直接出ていくお金は売上原価・営業外費用・特別損失・法人税の4種類です。

 

なお、特別利益ですが、これは本来想定していない利益です。

 

例えば貸倒引当金などは、会計の一般原則にあった「保守性の原則」の考え方から、元々貸し倒れが起こる前提で設けられた引当金です。

 

よって、結果として利益が発生したという考え方になります。

 

特別損失も同じ考え方です。

 

本来想定していない損失が結果としてその期に発生したということです。

 

 

【収益と利益の違いは?】
最後に、収益と利益の違いについて考えてみます。

 

今見た直接入ってくるお金が「収益」、直接出ていくお金が「費用」です。

 

そして、収益を上げるためには費用をかけなければいけません。

 

あるいは、収益を上げるために資産を費やすこともあります。

 

例えば売上という収益を上げるためには、売上原価(費用)と販売費及び一般管理費(費用)がかかります。

 

貸付を行って受取利息という営業外収益を得るには、それ以前に貸付金という資産を費やしています。

 

このように考えると、収益は費用や資産を考慮しない収入であり、費用や資産を考慮した後のものが利益ということになります。

 

利益と名前が付く項目は、6つあります。

 

売上総利益・営業利益・経常利益・特別利益・税引前当期純利益・当期純利益です。

 

そして特別利益以外はすべて「収益−費用(あるいは税金)」です。(特別利益は本来想定していない利益です。)

 

また、利益の源泉となる収益を上げるためには、費用や資産といった「リスク」が必要になることもわかります。

 

そして収益と費用(あるいは資産)の差が大きければ大きいほど利益が大きいということを意味し、その収益性は高いということができます。

 

売上に対する費用が少ない、あるいは貸付金に対する利息の割合が高ければ、その収益性は高いということです。

 

この逆の場合、あるいは収益がマイナスの場合は収益性が低いことになります。

 

この収益性という概念は、企業経営を行う上で非常に重要です。

 

損益計算書の基本知識とともに、収益と利益の違いも知っておくと、財務諸表を見る際に役に立つことがあるのではないでしょうか。

 

 

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