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固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その2

【減価償却費の特殊性】
減価償却費は費用として計上するものの、実際には現金が出ていかないことにその特殊性があります。

 

よって、例えば当期純利益が赤字の会社でも多額の減価償却費が計上されている場合は、減価償却費を除くと黒字になっている可能性もあります。

 

現金という側面で考えてみると、実はその期は現金が増えている可能性があるのです。

 

会計上は赤字であっても現金(キャッシュ)は潤沢であり、資金繰りなどにも苦労していないかもしれないということです。

 

これは会計上の利益だけからはわからないことです。

 

そしてこの特性を利用して行われるのが、会社の「節税」です。

 

このような節税対策は、外部に株主がいなく、経営権を独占しているオーナー経営の中小企業などでよく見られます。

 

利益が大きくなると見込まれる期に「あえて」車などの固定資産を取得し、減価償却費で利益を減少させて法人税負担を和らげるというような方法です。
(当然ながら、購入する固定資産は事業で使用するものでなければなりません。)

 

そしてその場合は、初期に費用負担が多くなる定率法の方がより節税効果が高いことになります。

 

よって、そのような企業は定率法を採用している企業が多いと言われています。

 

また、節税対策で取得した固定資産は、赤字が見込まれる期に売却することで赤字と売却利益が相殺されます。

 

そして赤字が売却利益を上回るとしたら、またもその売却利益には税金がかからないことになります。

 

会社の節税は、減価償却費の特殊性を活かして、このように行われているのです。

 

 

【減損会計】
固定資産は、原則としてそこから収益をもたらすために購入されます。

 

例えば今回の例であれば、500万円の機械を購入しているので少なくとも500万円以上の収益が出ると予測されているということです。

 

しかし実際に購入してみたら収益が思うようにあがらないというケースも考えられます。

 

するとその場合、固定資産への投資は赤字となります。

 

減損会計とは、このように予定よりも固定資産から得られる収益が少ないと判明した段階で、その赤字分を特別損失という形で計上しようという考え方です。

 

今回の例で考えた場合、購入当初は収益と費用がトントンで、2年経過した段階で次年度からの収益が50万円しか出ないと判明したとします。

 

すると、収益と費用の関係は以下のようになります。
(わかりやすくするため、定額法を使っています。)

 

1年目 収益100万円 減価償却費100万円 利益0万円 残存価額400万円
2年目 収益100万円 減価償却費100万円 利益0万円 残存価額300万円
3年目 収益50万円 減価償却費100万円 利益−50万円 残存価額200万円
4年目 収益50万円 減価償却費100万円 利益−50万円 残存価額100万円
5年目 収益50万円 減価償却費100万円 利益−50万円 残存価額0万円

 

3年目からはずっと赤字で、最終的に合計150万円の損失が発生するということになります。

 

よって、3年目からの150万円の赤字が判明した2年目の段階で特別損失を150万円計上し、固定資産の残存価額を150万円減額します。

 

すると以下のようになります。

 

1年目 収益100万円 減価償却費100万円 利益0万円 残存価額400万円
2年目 収益100万円 減価償却費100万円 利益0万円 残存価額150万円
(残存価額150万円の減少分を減損損失として特別損失に計上)
3年目 収益50万円 減価償却費50万円 利益0万円 残存価額100万円
4年目 収益50万円 減価償却費50万円 利益0万円 残存価額50万円
5年目 収益50万円 減価償却費50万円 利益0万円 残存価額0万円

 

このように処理することで、3年目以降も利益が0となり、長期にわたる損失を回避することができます。

 

なお、減損会計は現在は会社ごとに方針を決めるというものではなく、強制的に適用が義務付けられているものです。

 

 

前のページ 「固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その1」

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