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業務的意思決定(差額原価収益分析)

【業務的意思決定と戦略的意思決定】
ここからは会社の「意思決定」について考えていきましょう。

 

意思決定と一口に言っても会社の意思決定には様々なものがあります。

 

例えば部署レベルで責任を負っている業務について、その効率性を高めるためにこれまでのチーム編成を部署内で変更し、より効率的に作業を行えるようにしたというのも一つの意思決定です。

 

あるいはこれまで海外からの輸入材料で食材を賄ってきたチェーン展開のレストランが円安の進行や輸入材料のイメージダウンにより、全社的に国産品に切り替えるというのも意思決定です。

 

そして一般には前者のような意思決定を業務的意思決定、後者のような意思決定を戦略的意思決定と呼びます。

 

 

【業務的意思決定と戦略的意思決定の違い】
業務的意思決定と戦略的意思決定では、以下の点が決定的に異なります。

 

それは、「業務的意思決定は組織や資産の変更を伴わず、戦略的意思決定は組織や資産変更が行われる場合がある」ということです。

 

よって原則としては業務的意思決定を行う主体は、部署や担当者になります。

 

その部署や担当者の責任範囲内で行うことのできるものが業務的意思決定と呼ばれるものです。

 

これに対して、戦略的意思決定を行うのは経営層です。

 

その意思決定に合わせて組織や会社の資産が変更されるケースが多くなるためです。

 

例えば新事業を行う際の大規模な人事異動や、不採算となっている資産の除却などは、現場が勝手に決めるわけにはいきません。

 

業務的意思決定と戦略的意思決定には、このような違いがあります。

 

 

【差額原価収益分析とは】
では次に、業務的意思決定についてその代表的な考え方である「差額原価収益分析」について考えてみましょう。

 

差額原価収益分析とは、いくつかの選択肢の中からその状況下で最適な選択肢を選ぶという考え方です。

 

名称は難しく感じるかもしれませんが、実は誰しもが意識せずに行っていることです。

 

例えばAさんが昼食をとる際に、行列ができているラーメン店と待たずに入れるレストランで悩んだとします。

 

Aさんにとってはラーメン店もレストランも同じくらい魅力のあるお店です。

 

そしてラーメン店は価格が安く、レストランは価格が高いことで知られるお店です。

 

この場合、Aさんは時間がかかっても価格の安いラーメン店選ぶかもしれませんし、あるいは、逆に価格が高くてもすぐに入れるレストランを選ぶかもしれません。

 

このどちらを選ぶかは、Aさんのそのときの時間や使えるお金の余裕の有無によって変化すると考えられます。

 

Aさんはお金を優先する場合はラーメン店に、時間を優先する場合はレストランに入ることになるはずです。

 

これが差額原価収益分析です。

 

このように差額原価収益分析は、「今の状況でどう行動することが得か?」と考えたときに誰もが無意識に行っていることと言えます。

 

そのときの与えられたリソース(ここでは時間とお金)の中で最適だと思われる判断をすることが差額原価収益分析なのです。

 

 

【差額原価収益分析の具体例】
では差額原価収益分析の具体例を見てみましょう。

 

ここでは自動車部品販売会社のS社が「部品を箱詰めする際の緩衝材として何を使うか」ということを決める際の意思決定で考えます。

 

候補となっている緩衝材は2種類あり、ともにその品質を満たしています。

 

そしてそれぞれの価格と使用できるまでの加工に関するデータは以下です。

業務的意思決定(差額原価収益分析)

緩衝材の価格は緩衝材1のほうが安くなっています。

 

しかし緩衝材1、緩衝材2ともにそのままの状態では形状などが合わないために使用できず、使える状態に加工しなければなりません。

 

そしてその加工時間は緩衝材1のほうが長くかかり、時間当たりの労務費は同じなので、1個当たりの加工費は緩衝材1のほうが高くなります。

 

よってその総費用がどうなるかは微妙なところですので、差額原価収益分析によって計算してみます。

 

総費用は「1個当たり材料費+1個当たり加工労務費」です。

 

緩衝材1にかかる総費用 = 50(1個当たり材料費)+(500×(6÷60)(1個当たり加工労務費)) 
                =100円

 

緩衝材2にかかる総費用 = 80(1個当たり材料費)+(500×(3÷60)(1個当たり加工労務費)) 
                =105円

 

若干ですが、緩衝材1のほうが安くなっています。

 

差額原価収益分析の結果は、「緩衝材1を採用する」ということになります。

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