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企業の収益性を分析 その2

2.売上原価を下げる
売上原価を下げることも売上高総利益率を高めるためには非常に有効です。

 

最も手っ取り早い方法は、原材料や仕入れの見直しです。

 

業者自体の見直しや、一括購入できるものは一括して購入するなどの方法があります。

 

また、内部的には人材の配置や作業部門の効率化とともに、変化に合わせた生産体制の流動化などがその手段として挙げられます。

 

これには作業の効率化目標を掲げ、それをPDCAと呼ばれる手法で管理していくことが有効です。

 

PDCAとはPLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(改善)のサイクルを繰り返していくというものです。

 

これを継続することで、長続きさせるのが難しい効率化作業を続けていくことが可能となります。

 

そしてS社がY社に勝つためには、上記の1か2のいずれかに対応しなければいけないということになります。

 

売上高総利益率は会社の根本とも言える利益率であるため、その収益と費用の金額も大きく、会社として最も大切にすべき指標であると言えます。

 

 

【売上高営業利益率】
次は売上高営業利益率です。

 

これは売上に対する「主となるビジネス」の収益性を見る指標となります。

 

売上高営業利益率は、売上に対する営業利益の割合です。

 

計算式は以下になります。

 

売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100

 

そしてS社とY社の売上高営業利益率は以下です。

 

S社の売上高営業利益率=1000万円÷1億円×100 = 10%

 

Y社の売上高営業利益率=2500万円÷1億円×100 = 25%

 

営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を引いたものです。

 

S社の販売費及び一般管理費は3000万円、Y社の販売費及び一般管理費は2500万円です。

 

費用の違いはわずかのように見えますが、比率で考えると、両社には大きな差がついています。

 

そしてY社は販売費及び一般管理費も徹底して低く抑えており、S社に対して優位性があるとわかります。

 

 

【売上高経常利益率】
次は売上高経常利益率です。

 

これは売上に対する「経営力」の収益性を見る指標となります。

 

売上高経常利益率は、売上に対する経常利益の割合です。

 

計算式は以下になります。

 

売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100

 

そしてS社とY社の売上高経常利益率は以下です。

 

S社の売上高経常利益率=900万円÷1億円×100 = 9%

 

Y社の売上高経常利益率=2500万円÷1億円×100 = 25%

 

S社は営業外損益がマイナス、Y社は0であるために、両者の差はさらに広がっています。

 

Y社は主となるビジネス以外でもバランスの取れた堅実な経営を行っていることが伺えます。

 

 

【売上高当期純利益率】
最後は売上高当期純利益率です。

 

これは売上に対する「会社の全活動」の収益性を見る指標となります。

 

売上高当期純利益率は売上に対する当期純利益の割合です。

 

計算式は以下になります。

 

売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高×100

 

そしてS社とY社の売上高当期純利益率は以下です。

 

S社の売上高当期純利益率=520万円÷1億円×100 = 5.2%

 

Y社の売上高当期純利益率=1300万円÷1億円×100 = 13%

 

Y社は今後の新戦略に向けてこれまでの事業の効率化を図り、800万円の特別損失を出しています。

 

そして特別損益はマイナス500万円です(S社はマイナス100万円。)。

 

にもかかわらず、売上高当期純利益率はS社が5.2%、Y社が13%と2.5倍の差がついています。

 

S社の経営も決して無鉄砲なものではありません。

 

しかし、収益性だけを見るとY社に軍配が上がります。

 

そして売上は同じでもそれぞれの収益や費用を少しずつ改善するだけで、収益性の比率を大幅に伸ばせることが確認できます。

 

Y社はS社よりも各部門が少しずつ競争力を高めることにより、結果的に大きな利益率をあげているのです。

 

小さな努力が会社全体の利益率を大きく押し上げているということです。

 

S社はY社が今後高い収益性を武器に台頭してくる可能性があることを常に意識して、自社の営業力を高め、かつ効率化を推進して経営を進めていかなければならないということになります。

 

収益性については損益計算書だけで判断することができ、かつ計算もそれほど複雑ではありません。

 

そして収益性はその期によって変化するため、複数年度の損益計算書を見ればその会社が成長しているかどうかなども判断することができます。

 

4つの指標を再確認し、ぜひ理解しておきましょう。

 

 

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