業績評価のステップと留意点
【業績評価のステップと留意点】
これまで見てきた通り、業績評価は可能な限り公平なものでなくてはなりません。
部門や職務などによってその業務は異なりますが、それぞれの業務について可能な限り従業員が納得できるものとする必要があります。
よってその評価は「何となく」行うものではなく、ステップを踏んだ根拠のあるものでなくてはなりません。
ここでは業績評価を行う際のステップについて考えてみましょう。
【業績評価のステップ】
業績評価はその評価基準は会社によっても異なりますが、一般的な評価を行う際のステップは以下のようになります。
ではこれらのステップを具体的に考えていきましょう。
≪その期の部署あるいは担当者の目標を設定する≫
評価の最初に来るステップは、「目標の設定」です。
目標は例えばプロフィットセンターの営業担当者なら「売上のアップ」などとなり、コストセンターの製造担当者なら「生産過程における不良品率の減少」などとなります。
目標はその部署や担当者によって異なるため、一概によい目標が何かということはできません。
また、個人のこれまでの実績などに応じて、異なったものとなります。
それぞれの実績や期待度にあった目標とすることが必要です。
≪目標に対しての指標を設定する≫
次に設定された目標に関して、達成すべき指標を決定します。
この目標に対する指標はKGI(Key Goal Indicator: 重要目標達成指標)などと呼ばれます。
目標は基本的にあいまいなものであるため、それを評価のために数値化しようということです。
例えば先ほどの営業担当者の「売上のアップ」という目標であればそのKGIは売上高ということになり、製造担当者の「生産過程における不良品率の減少」であれば、歩留まり率ということになります。
歩留まり率とは、製造した製品の中で、実際に出荷可能だった製品(不良品ではない製品)の割合です。
このような具体的な数値を設定することにより、その評価を客観的なものとしようということです。
≪その指標に対する具体的な行動内容を設定する≫
目標とKGIを設定したら、今度はその達成に向かって具体的な行動内容を設定します。
この行動内容は、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)などという指標を使って設定します。
KGIが目標に対する指標であるのに対して、KPIはKGIを達成するための「進捗」に対する指標で、KGIに対してその進捗を図るためのKPIを設定し、行動を継続的に確認することで、KGIの達成により効率的に近づくことができるようになります。
そして実際の業務はこのKPIの達成を積み重ねるように行い、最終的に目標が達成できるように行動することとなります。
ここまでが期初に行う内容です。
≪目標に対する指標と実際の活動結果を評価する≫
ここからは期が終わる段階となります。
業績評価が実際に行われるのはここからです。
期初に設定した目標やKGI、KPIといった指標に対し、実際にそれがどの程度達成できたかを確認します。
(KPIについては進捗が指標となるので、期中に随時評価を行っていく場合が大半です。)
また、評価は数値上の評価だけではなく、職場での勤務姿勢や人間関係なども総合的に取り入れて行います。
数値化できない定性的な評価がなくては、動機づけ要因によるモチベーションのアップにつながらないためです。
≪評価のフィードバックを行う≫
評価が決定したら、その評価のフィードバックを行います。
評価のフィードバックは、その期の反省材料を発見したり次の目標などにつながるものとなるため、非常に大切です。
しかし実際には時間などの都合から、きめ細やかなフィードバックが行われず、次の期の目標がうまく設定できないという会社が多くなっているのが実情です。
可能な限りフィードバックに力を入れ、フィードバックを返された側に「今後も頑張ろう」という気持ちを起こさせることが必要です。
【インセンティブの種類】
業績の評価結果は、結果的にインセンティブによって与えられることとなります。
インセンティブの代表的なものは報酬です。
報酬は給料やボーナスなどの金額に反映させることが一般的ですが、全社的に業績が伸びた場合などは福利厚生を厚くして全従業員の待遇を改善させるなどの方法も取られます。
また、報酬以外のインセンティブの与え方としては役職をアップさせることなどで責任と権限を与えることもあります。
報酬以外のインセンティブは従業員に新しい役割を与えることで会社への貢献度を高めるという効果があり、かつ従業員のモチベーションを高めることもできるようになります。
このように、報酬を軸としながら従業員のモチベーションもコントロールする仕組みを作ることが、業績評価システムを機能的なものとするポイントとなります。
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