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良い仮説の3要素 その2

【例題】
それでは、良い仮説の3要素について、例題を通じて確認していきましょう。

 

<例>
ベンチャー企業向けの経営コンサルティングを行っているA社は、国内市場の飽和を懸念して、香港で海外事業を展開することにしました。

 

陣頭指揮をとるのは、入社6 年目のK課長です。

 

K課長は、まだ若くして管理職に抜粋された期待のホープとして、社内からはいずれは社長ともてはやされているビジネスウーマン。

 

まだ独身ということもあって、海外への転勤についても、自ら名乗り出るほど前向きです。

 

もっとも、海外事業は前例がないだけに、多くの課題を抱えていることは明白でした。

 

A社の社長も海外で仕事をした経験はなく、他の社員も同様です。

 

K課長自身も、学生時代にオーストラリアへの留学経験があるだけで、今回計画されている香港については、ビジネス経験はもとより生活の質やレベルに関しての知識もありません。

 

ただ、それだけに、今回の事業が成功すれば、他国での事業展開も検討できる可能性があります。

 

そもそもなぜ香港市場に目をつけたかというと、ある中国のベンチャー企業が日本に進出してきた際に、香港市場についての情報を得ることができたためです。

 

とくに、日本の企業がこれから香港に進出しようと目論んでいるケースは増えており、また、そのためのコンサルティングを行っている業者はまだ少なく、先行者利益を得られる公算が大きいのです。

 

A社としても、社運をかけた事業展開となるのではと予想しています。

 

ただ、A社は中規模コンサルティング会社ということもあって、派遣できる人間はK課長を含めてたったの3人しかいませんでした。

 

全員入社5年目までの若手であるOさん、Sさん、Tくんです。

 

仕事の質はともかくとしても、3人とも英語に長けているという点が評価されて抜擢されました。

 

もちろん、選んだのはK課長自身です。

 

3人中2人が女性社員ということもあって、今後、社内での女性の活躍を推進する狙いも透けて見えています。

 

そんなK課長の思惑を肌で感じつつも、社長はチームの構成に対し、K課長に一任していました。

 

それは信頼の証でもありますが、なにより、K課長の実力を引き出すための一番の秘訣だと考えていたためです。

 

部下を信用するためには、まず、自ら考えて行動させるための自由が必要だと理解していたのですね。

 

人選はともかくとして、香港での事業展開が社運を担っていることは間違いありません。

 

そのため、実際に現地での業務をスタートさせる前に、社長はK課長が選んだ3人にあるテストを行うことにしました。

 

その内容は、これまで社長が自ら実践してきたもので、会社をここまで育てたひとつの要素でもある「仮説思考」に関するもの。

 

仮説思考とは、課題に対して情報収集を行う前に、まず仮の結論を設定する思考法ですね。

 

テーマは「香港事業を成功させるためのポイントとなる施策は何か?」です。

 

これから実際に行う事業でもある以上、それぞれが一定レベルの仮説を構築していなければ、現地に行ってもすぐに活躍することはできません。

 

だからこそ、テストを通じて課題を浮き彫りにし、事業のスタートを加速させるという効果も期待されいます。

 

K課長はテストの対象外だったのですが、本人の希望もあって参加することになりました。

 

数日後、OさんSさんTくん、そしてK課長が提示した答えは以下のとおりです。

 

<Oさん>:
公用語である英語と広東語が、ビジネスを行ううえでの要となるかと思います。
英語についてはみなさん問題ないでしょうが、広東語については不十分なので、まずは社内で研修を行ってはいかがでしょうか。

 

<Sさん>:
香港には、自由な経済活動を促進させる独特の空気があると聞きます。
それは日本の空気感とはまた違ったものでしょう。
現地の人を積極的に採用することで、そうした雰囲気を社内に取り込み、交流を深めていくことが大事ではないでしょうか。

 

<Tくん>:香港は世界でも有数のビジネス圏ということもあって、その変化は、わずか数年でも目まぐるしいほどになるかと思います。
そのため、先行きをしっかりと予測し、ビッグデータをもとに行動することが何より大切なことではないでしょうか。

 

<K課長>:数字やデータに基づいたコンサルティングだけでなく、日本の伝統である「おもてなし」の心を事業活動に盛り込みたい。
そのためには、事務所の雰囲気から和を取り入れ、日本式のマナーを徹底し、コンサルティング以外の付加価値を高めるべき。

 

それぞれの意見はとりあえずの仮説思考となっており、社長はひと安心しました。

 

あとは各自が検証作業を行いつつ、仮説の精度を高めていくことで、より効果的な施策へと成長することでしょう。

 

もっとも、K課長をのぞく3人の仮説は、いずれも、良い仮説と言えるためには欠けている要素があります。

 

社長はその点を指摘しつつ、検証を行わせるようK課長に命じました。

 

もちろん、これからも仮説思考を重視することも念押しして。

 

 

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