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検証の際の5つの注意点 その2

【例題】
それでは、検証の際の5つの注意点について、事例を通してより具体的に学んでいきましょう。

 

5つの項目をそれぞれ頭の片隅に置きつつ、読み進めてみてください。

 

<例>
海外製の安価な組み立て式家具を販売しているA社は、日本での販売網拡大を目指し、戦略部門を強化することにしました。

 

まず、これまでのように海外製の家具を輸入してそのまま販売するのではなく、日本人の需要に合わせて、インテリアグッズ全般の取り扱いを開始することが基本戦略となっています。

 

問題なのは、どのような商品を取り扱うのかという点です。

 

戦略部門のリーダーに任命されたEさんは、各販売店が収集しているデータに着目しました。

 

Eさんの独自調査によると、顧客層やその単価、あるいは売れ筋商品などについては把握できるものの、そういったデータを将来的な販売戦略に生かせていないことが分かりました。

 

そのため、今後はPOSデータを生かした商品開発を積極的に行うべきだと考えています。

 

さらに詳しく分析してみると、商品開発部の仮説・検証思考に穴があることが発見されます。

 

具体的には、次のような流れで販売が行われていました。

 

家具の販売→顧客データの収集→売れ筋商品の把握→仕入れる家具の選定→販売

 

この工程のなかでは、売れるであろう商品の選定(仮説)が、十分な検証によって行われていません。

 

また、今後は輸入だけでなく商品開発も行うということを考えれば、収集した顧客データによる入念な検証作業が必要となります。

 

なぜなら、商品開発には多額の費用、時間、労力がかかるために、売れなかったでは済まされないからですね。

 

社長をはじめとする経営層を説得する材料としても、検証過程は重要です。

 

そこでEさんは、商品開発部のスタッフに仮説・検証、とくに検証に関するスキルを醸成することにしました。

 

開発に対する仮説を、検証によってより効果的に活用することができれば、商品開発も進むのではという狙いがあります。

 

ただその前に、彼らにどの程度の検証スキルがあるかを把握する目的で、次のような簡単なテストを実施しました。

 

・スキルテスト
現在、欧米をはじめとして「スタンディングデスク」が注目を集めています。
これは立ったままパソコン操作や会議が行えるタイプの机で、とくに一日中座りっぱなしの事務作業員を多く抱える企業にとっては、慢性的な肩こりや腰痛対策として、採用を検討しているところも多いとのデータも。
そこでA社でも、日本のオフィス需要を見越して販売しようと画策しています。
商品開発目線から、この仮説に対する検証結果を報告してください。

 

スキルテストに挑戦したのは、開発部のスタッフであるFさん、Gさん、Hさんの3名です。

 

それぞれの回答は次のとおりです。

 

・Fさんの回答
スタンディングデスクの企業内での使用例について、各国のデータを収集していますが、現段階ではまだ一部の情報しか収集できていません。
これはひとえに、スタンディングデスクの普及が不十分、あるいは予想するほどではないということを示しているのかもしれません。
詳細な検証結果は、十分にデータが集まり次第、再度行いたいと思います。

 

・Gさんの回答
知り合いがいる新興のIT企業数社に問い合わせてみたところ、椅子に対するこだわりが強いことが判明しました。
また、効果のほどは明らかになっていませんが、バランスボールを椅子代わりに使っている企業も何社かありました。
しかし、スタンディングデスクの導入例は皆無で、時期尚早だと言わざるを得ません。

 

・Hさんの回答
社内の事務担当者に聞きこみを行い、弊社がスタンディングデスクの開発を検討していることを伝え、意見をうかがいました。
それによると、立ったまま仕事をするというのは斬新な発想であるというのが大半で、肩こりや腰痛に悩んでいる社員が多いこともあり、積極的に進めるべきとの意見が多数寄せられました。
上層部の先見性にも感服しています。

 

 

これらの検証結果を聞いて、Eさんは、商品開発部に十分な検証能力が欠けていることを知りました。

 

そこで、まずは研修によって、検証に関する基礎的な座学を教え込み、さらに実践によってより能力を高めていくことを決意したのです。

 

時間はかかるかもしれませんが、これまでに仮説・検証思考を行ってきたということは一切考慮せず、一から取り組むことになります。

 

 

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