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検証の際の5つの注意点 その3

<解説>
スキルテストの結果をうけて、Eさんが肩を落としていることは間違いありません。

 

すぐにでも商品開発部のレベルアップをはかりたいと考えているEさんとしては、これまでの開発工程の中にしっかりとした検証を組み込むことによって、スムーズに改善することが可能だと考えていたからですね。

 

しかし、今回のスキルテストの結果、それぞれのスタッフに検証に関する問題点があることが判明したのです。

 

ではEさんは、彼らの検証結果にどのような問題点があると気付いたのでしょうか。

 

それぞれ細かく分析していきましょう。

 

 

・Fさんの回答
スタンディングデスクの企業内での使用例について、各国のデータを収集していますが、現段階ではまだ一部の情報しか収集できていません。
これはひとえに、スタンディングデスクの普及が不十分、あるいは予想するほどではないということを示しているのかもしれません。
詳細な検証結果は、十分にデータが集まり次第、再度行いたいと思います。

 

→日本でスタンディングデスクを発売するにあたって、すでに利用実績のある各国の実情を調査することは大切です。

 

同じようなライフスタイル、あるいは同じような仕事の形態をしているのであれば、日本でも同様に需要を喚起できる可能性があります。

 

プロモーションの一環として、各国の事例を紹介するのも有効でしょう。

 

ただ、いかにスキルテストとは言っても、一定の検証結果を結論として報告できないのは問題です。

 

あらかじめ締め切りは設けられていましたし、残された時間から逆算して検証に必要な材料の収集を行うことは十分に可能だったはずです。

 

結論を提示しないばかりか、賛否に関する明確な方向性を示さないのは、完璧主義の弊害に陥っていると言えるでしょう。

 

<問題点>
・検証の材料を集めすぎてしまう
・スピード感を無視した完璧主義

 

 

・Gさんの回答
知り合いがいる新興のIT企業数社に問い合わせてみたところ、椅子に対するこだわりが強いことが判明しました。
また、効果のほどは明らかになっていませんが、バランスボールを椅子代わりに使っている企業も何社かありました。
しかし、スタンディングデスクの導入例は皆無で、時期尚早だと言わざるを得ません。

 

→明るみにされていないだけで、すでにスタンディングデスクを採用している企業が日本にもあるかもしれないという予測は、至極まっとうだと言えるでしょう。

 

その点に着目して、日本の企業にヒアリングを行った点は評価できます。

 

ただ、椅子に対するこだわりがあることや、バランスボールの使用については、今回の件とは関係ありません。

 

また、ヒアリング対象が新興のIT企業だけというのも気になります。

 

市場規模で考えると、予算を確保できる大手企業や中規模企業をターゲットとしたいところです。

 

新しいものを積極的に採用するベンチャー企業とは違い、より積極性のあるプロモーション活動が必要となるでしょう。

 

そのための材料として、今回の検証は明らかに不十分です。

 

<問題点>
・収集したデータのかたより
・検証者の思い込みやバイアス

 

 

・Hさんの回答
社内の事務担当者に聞きこみを行い、弊社がスタンディングデスクの開発を検討していることを伝え、意見をうかがいました。

 

それによると、立ったまま仕事をするというのは斬新な発想であるというのが大半で、肩こりや腰痛に悩んでいる社員が多いこともあり、積極的に進めるべきとの意見が多数寄せられました。

 

上層部の先見性にも感服しています。

 

→スタンディングデスクに関して、実際にデスクワークを行っている人の意見を手っ取り早く収集したいのであれば、社内の人間に対するヒアリングも有効でしょう。

 

それぞれの仕事の内容や質はともかくとしても、事務作業としての性質そのものは大きく違わないためですね。

 

抱えている不満や体の不調、その傾向などは同じ可能性が高いのです。

 

もっとも、「弊社がスタンディングデスクの開発を検討している」という前提を話してしまうのは問題でしょう。

 

その瞬間、上層部の顔色をうかがう人がいるかもしれませんし、会社の意向を無条件で肯定的にとらえてしまう人もいるかもしれないのです。

 

そうなれば、仮説が間違っていないという裏づけのための意見を収集するだけになってしまうでしょう。

 

これはまっとうな検証作業とは言えません。

 

<問題点>
・初期仮説に対する固執・盲信

 

 

以上のとおり、FさんGさんHさんの検証結果は、冒頭で説明した「検証の際の5つの問題点」に当てはまります。

 

改善のための第一歩は、そのことに本人たちが気づくこと。

 

遠回りすることになるかもしれませんが、そのためには、検証に関する意識を高めつつ、仮説・検証思考の全体像をあらためて理解する必要があることでしょう。

 

 

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