経営を学ぶ-経営学・MBA・起業・ネットビジネス・リアルビジネスなど

経営を学ぶ~経営学・MBA・起業~

現状把握の基本1(MECE) その2

<解説>
 先述のEくんの発言を吟味する前に、B係長、C主任、Dさんの回答を見ていきましょう。

 

まずB係長ですが、新規顧客が獲得できていない理由を「営業件数が足りない」ことだと分析しています。

 

次にC主任は「インターネットの活用」、そしてDさんは「広告媒体」というそれぞれマーケティングツールについて着目していますね。

 

ここでEくんが言いたかったことは、各自が問題点をすべて認識できていないために、議論の到達点があいまいである、ということです。

 

実際に、MECEを使って問題点をピックアップしてみると次のようになります。

 

<新規顧客が開拓できてない理由>
・営業「訪問件数」が足りない→人員の不足
・営業「ツール」が不十分→インターネット、広告媒体
・営業「スキル」が弱い→研修の必要性

 

 このように問題点をあげてみると、次のようなミスが浮き彫りになります。

 

・B係長の認識
→ただの根性論で、実際には人員を増やすべきかどうかを議論しなければ意味が無い

 

・C主任の認識
→ツールの不足という意味で、大きくはDさんと同じ

 

・Dさんの認識
→ツールが不十分という意味で、大きくはC係長と同じ

 

つまり、Eくんが到着するまでの会議では、現状の認識が「モレあり(スキルへの言及がない)」「ダブリあり(C主任とDさんの意見が同じ)」の状態にあったのです。

 

これでは建設的な議論ができるはずもありません。

 

MECEができていない会議の例(モレありダブリあり)

 

【ポイントと注意点】
 MECEを実践する場合には、次のポイントを押さえておきましょう。

 

<部分と全体>
 MECEを活用して現状を分析する際には、「部分と全体」に着目する必要があります。

 

部分とは最終的にピックアップされた項目のこと。
全体とは現状を把握するために必要な問題の本質のことですね。

 

とくに、全体に対して意識が向いていないと、思い込みや感情をベースとした現状分析になりがちです。

 

たとえばB係長の発言は、遠回しに「他の営業パーソンがしっかりやっていないから」と考えているため、冷静な分析ができていません。

 

<属性の分類>
 また、個々の項目に対しては、それぞれの「属性の分類」にも注目しましょう。

 

属性とは切り口という言い方もできますが、つまり「何を基準に分類するか」ということですね。

 

属性に対する認識が甘い場合、C主任とDさんのように、意見のダブリに気付くことができません。
そのため、方法論にばかり終始してしまい、結果的に議論が平行線をたどってしまうのです。

 

<優先順位の決定>
 MECEを活用して思いつく限りの項目をすべてピックアップしたら、最後にそれぞれの優先順位について検討していきましょう。

 

各項目について優先順位を明確にしておけば、具体的に何をやるべきなのかが浮き彫りになります。

 

上記の例で言えば、研修を行ってもすぐに成果は出ませんし、営業パーソンの増員には社員の採用が必要です。

 

そこで現実的には、ツールの不足を補うという行動が最優先だと分かりますね。
あとは、どんなツールを使うかについて掘り下げていくだけです。

 

【まとめ】
・解決策を導き出すには正しい「現状把握」が欠かせない

 

・現状把握に活用できるのが「MECE」という考え方

 

・MECEは「モレなくダブりなく」要素をピックアップする思考法

 

・MECE実践時は「部分と全体」「属性の分類」「優先順位」に気をつける

 

 

前のページ 「現状把握の基本1(MECE) その1」

関連ページ

ピラミッドストラクチャー その2
論理の構造化の重要ポイント その1
論理の構造化の重要ポイント その2
因果関係の把握 その1
因果関係の把握 その2
因果関係の把握 その3
因果関係の把握 その4
因果関係の把握 その5
好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その1
好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その2
好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その3
ゼロベース思考 その1
ゼロベース思考 その2
仮説・検証の3つの効果 その1
仮説・検証の3つの効果 その2
仮説・検証の3つの効果 その3
仮説・検証の3つの効果 その4
仮説・検証の3つの効果 その5
良い仮説の3要素 その1
良い仮説の3要素 その2
良い仮説の3要素 その3
良い仮説の3要素 その4
良い仮説をつくるための3つの資質 その1
良い仮説をつくるための3つの資質 その2
良い仮説をつくるための3つの資質 その3
良い仮説をつくるための3つの資質 その4
良い仮説をつくるための3つの資質 その5
因果関係を考える3ステップ その1
因果関係を考える3ステップ その2
因果関係を考える3ステップ その3
因果関係を考える3ステップ その4
仮説・検証の具体的な4ステップ その1
仮説・検証の具体的な4ステップ その2
仮説・検証の具体的な4ステップ その3
仮説・検証の具体的な4ステップ その4
分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その1
分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その2
分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その3
分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その4
分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その5
検証の際の5つの注意点 その1
検証の際の5つの注意点 その2
検証の際の5つの注意点 その3
検証の際の5つの注意点 その4
クリティカル・シンキングとは その1
クリティカル・シンキングとは その2
クリティカル・シンキングとは その1
クリティカル・シンキングとは その2
現状把握の基本2(切り口と切り方) その1
現状把握の基本2(切り口と切り方) その2
現状把握の基本2(切り口と切り方) その3
複合的な論理展開 その1
複合的な論理展開 その2
演繹法 その1
演繹法 その2
フレームワーク思考 その1
フレームワーク思考 その2
フレームワーク思考 その3(3C分析、SWOT分析)
フレームワーク思考 その4(5フォース分析、ポーターの3つの基本戦略)
フレームワーク思考 その5(7つのS、短期・中期・長期)
フレームワーク思考 その6(4P、バランススコアカード)
フレームワーク思考 その7(バリューチェーン:付加価値の連鎖)
フレームワーク思考 その8(PPM、過去・現在・未来、仮説思考)
フレームワーク思考 その9(その他のフレームワーク)
仮説と検証 その1
仮説と検証 その2
仮説と検証 その3
仮説と検証 その4
仮説と検証 その5
仮説と検証 その6
因果関係の7つの錯覚パターン その1
因果関係の7つの錯覚パターン その10
因果関係の7つの錯覚パターン その2
因果関係の7つの錯覚パターン その3
因果関係の7つの錯覚パターン その4
因果関係の7つの錯覚パターン その5
因果関係の7つの錯覚パターン その6
因果関係の7つの錯覚パターン その7
因果関係の7つの錯覚パターン その8
因果関係の7つの錯覚パターン その9
帰納法 その1
帰納法 その2
イシューと枠組み その1
イシューと枠組み その2
イシューと枠組み その1
イシューと枠組み その2
論理展開のパターン その1
論理展開のパターン その2
論理展開のパターン その3
大きな論理の構造 その1
大きな論理の構造 その2
論理展開のパターン その1
論理展開のパターン その2
論理展開のパターン その3
論理展開の6つの注意点 その1
論理展開の6つの注意点 その2
論理展開の6つの注意点 その3
論理展開の6つの注意点 その4
ロジックツリー その1
ロジックツリー その2
ロジックツリー その3
現状把握の基本1(MECE) その1
現状把握の基本1(MECE) その2
大きな論理の構造 その1
大きな論理の構造 その2
ピラミッドストラクチャー その1

HOME
HOME メルマガ登録 プロフィール お問い合わせ