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購買力平価(PPP)とは

今回は購買力平価(PPP)について説明していきます。

 

この文章を読むことで、「購買力が平価になる理由」「購買力平価と為替相場の関係」などについて学ぶことができます。

 

購買力が平価になる

 

購買力平価(purchasing-power-pairtity)は、購買力が平価になる法則を示します。

 

これは、例えば1万円のお金を持っている人は、日本で車にガソリンを入れるのとアメリカでガソリンを入れるのとでは、同じ量が入れられるという法則です。

 

これは「一物一価の法則」というルールが原理になっています。

 

この購買力平価は、経済学の中では長期的な為替相場の決定要因となるとされます。

 

さて、これでは全くもってなんのことか理解ができないと思われますので、具体例をあげながら購買力平価説についてじっくりと考えていきましょう。

 

一物一価の法則とは

 

まずは、購買力平価の基礎理論となる「一物一価の法則」から考えていきましょう。

 

これは文字通り、一つの物には一つの価値しかないというものです。

 

つまり、「同じ財は世界中どこに行っても同じ価格で売られているはずだ」という仮定です。

 

例えば次のような状況です。

 

【例題1】
X村のPさんは住所不定無職の男でした。ある日隣家のおばさんから恵んでもらった小銭でX村で唯一のパン屋に出向き、そこで食パンを100円で購入します。

 

Pさんは暇だったので、そのまま隣村のY村まで食パンを脇に抱えて歩いて行きました。

 

Y村に到着したまたま立ち寄った公園で食パンを食べようかとベンチに座ると、立派な服装をした初老の男性が素っ頓狂な声をあげて、こう言いました。

 

「なんと食パンじゃないか!250円で譲ってくれ!」

 

<解説>
X村では食パンが100円で売られているにもかかわらず、その同じ食パンがY村では250円の価値を持つというわけです。

 

おそらくこれを知ったPさんは、250円で初老の男性に食パンを売った後、X村に引き返して食パンを2つ購入し、またY村に引き返すことでしょう。

 

ちなみに、このように同じ商品の価格差を利用して儲けを出すことを「裁定」と言います。

 

この時点での状況は、同じ食パンが2つの価値を持っているので一物一価ではありません。

 

しかし、この取引を続けていると、X村ではどんどん食パンの需要が上がっていきます。Pさんが村の間を往復するたびに、Pさんが購入する食パンの量は増えていくからです。

 

同時にPさんがY村で食パンを売りさばくので、Y村での食パン供給量も増加していきます。

 

すると、X村での食パンの価格は上昇し、逆にY村での食パンの価格は下落していきます。最終的にはX村とY村の食パンの価格差はなくなり、一物一価の法則が成立します。

 

購買力平価(ppp)とは1

 

貿易する2国間でも同じ

 

この食パンの例は、そのまま貿易する2国間にも適用できます。

 

日本で買う食パンが100円で、アメリカで買う食パンが250円の場合、(関税を無視した場合)食品商社は先ほどの例に挙げたPさんと同じ行動をするだけで儲けを出すことができます。

 

そして同じように、最終的には日本の食パンもアメリカの食パンもよく似た価格に落ち着きます。

 

結果として100円を握りしめていけば、日本でもアメリカでも同じだけの食パンが買えるようになります。

 

つまり、購買力が平価(均等)になるわけです。これが購買力平価説です。

 

購買力平価と為替相場

 

購買力平価説は、2国間の物価の問題を含むので為替相場と密接な関係にあります。

 

例えば、日本での原付バイクの価格が10万円、アメリカでの原付バイクの価格が1000ドルだった場合、100円=1ドルの名目為替相場が成立している必要があります。

 

もし、1ドルのものを買うために100円以上の日本円が必要になるのであれば、購買力が平価になっていないからです。

 

これを数式で表すと次のようになります。

 

1 / P = e / P*

 

Pを日本の価格、P*をアメリカの価格とし、eを名目為替相場とします。

 

すると、Pは10万円でP*は1000ドル、そしてeは1円で買えるドルの為替相場を示すので1/100ドルです。そうすると左辺と右辺は等しくなります。

 

この式の両辺にP(日本の価格)を掛けると、次のようになります。

 

1 = eP / P*

 

この場合、「右辺は常に一定の数値を取る」、すなわち不変であることがわかります。

 

そして、右辺が示しているのは名目為替相場に2国間の価格比を掛けた「実質為替相場」です。

 

つまり購買力平価、ある通貨の購買力が2国間で同じであると仮定するならば、「実質為替相場は不変である」という結論が出ます。これは先ほどの食パンの例と同じメカニズムによっています。

 

名目為替相場と物価水準

 

これは「各国の物価水準が変動すると、それがバロメータの役割を果たして名目為替相場の変動にもつながる」ということを示しています。

 

前述の数式の両辺をeで割り、全体を逆数にすると、もうすこしわかりやすくなります。

 

<前掲式>

 

1 = eP / P*

 

<両辺をeで割る>

 

1 / e = P / P* 

 

<全体を逆数にする>

 

e = P* / P

 

P*の価格が変動してもPの価格が変動しても、名目為替相場が変動することがわかるはずです。

 

先ほど挙げたようにP*をアメリカの価格、Pを日本の価格とすれば、それらは各国の物価水準によって決定されているわけで、であれば「名目為替相場は物価の変動と関係する」ことになります。

 

名目為替相場と中央銀行

 

これをさらに視点を大きくしてみると、「名目為替相場は中央銀行の動向に左右される」ということがわかります。

 

なぜならば、各国の物価水準というのは中央銀行が行う貨幣供給量拡大策(買いオペ)や縮減策(売りオペ)によって左右されるからです。

 

貨幣供給量が増加すれば、それに合わせて貨幣需用量も調整され、結果として物価水準は上昇します(インフレーション)。

 

貨幣供給量が減少すれば需用量も減少し、物価水準も低下します(デフレーション)。

 

物価水準は名目為替相場の変動につながり、国内でインフレーションが起きれば自国通貨の国際市場における価値が低下し、デフレーションが起きれば価値は上昇します。

 

逆に、相手国の物価水準が上昇すれば自国通貨の国際市場における価値は上昇し、物価水準が下落すれば価値は低下します。

 

購買力平価(ppp)とは2

 

試みに先ほどの原付バイクの例をとって、ここまでの一連の流れを追っておきましょう。

 

【例題2】

 

e = P* / P

 

・e:名目為替相場
・P*:アメリカの価格
・P:日本の価格

 

この時、日本の原付の価格は10万円、アメリカでの価格は1000ドルです。物価水準、そして中央銀行との関係を見ていきましょう。

 

<解説>
まず、現時点での数値を式に代入すると以下のようになります。

 

1 / 100 = 1000(ドル) / 100000(円)

 

この状態から、例えば日本銀行が買いオペ、すなわち金融緩和政策を行って貨幣供給量を拡大したとします。

 

すると、日本の物価水準は上昇するため、原付の価格が上昇します。仮にそれを12万円だとしましょう。

 

1 / 120 = 1000(ドル) / 120000(円)

 

すると、このように名目為替相場は下落し、1ドルが120円となり、円安となります。

 

これが逆に売りオペによって価格が80000円に下がるとすると、

 

1 / 80 = 1000(ドル) / 80000(円)

 

このようになり1ドル=80円の円高となります。

 

逆に、アメリカの中央銀行FRB(連邦準備)によるドルの供給量が変化すれば、その分名目為替相場に影響が出ます。

 

中央銀行の金融政策如何では国全体の通貨高、通貨安すら左右できてしまうわけで、中央銀行の動向に新聞や各誌が騒ぎ立てる理由がここにあります。

 

購買力平価はいつでも成り立つわけではない

 

こうして説明してみると、非常に理屈が通っており、経済もそのように動いているように思えます。

 

しかし、この購買力平価も常に成立するわけではありません。他のどの法則にもあるように、購買力平価にも例外が存在します。

 

価格が是正されるほど貿易されない

 

理由の1つは財の性質上、例題1の食パンに起きたような交易関係が頻繁に成立しない場合には、市場による価格是正が行われないためです。

 

例えば、例題1で登場したPさんから食パンを購入した老紳士がものすごく食パンが好きなだけで、Y村の他の村人は誰一人食パンに興味がないとします。

 

すると、Pさんが食パンを売れるのは老紳士だけになるので、Y村における食パンの供給量もX村における食パンの需用量も大して変化しません。であれば価格も大きくは変化しないでしょう。

 

これは、現実の経済で言えば散髪代などが挙げられます。特別な理由がないかぎり理容師や美容師はわざわざ外国に行って散髪はしませんし、客側も「ちょっとドイツに髪切りに行ってくるわ」とはならないからです。

 

必ずしも代替財になり得ない

 

2つ目の理由は、貿易が頻繁に行われる財でも、それが必ずしも代替財とはなりえないためです。

 

例えば、日本は毎年決められた量の外国産のコメを輸入していますが、これらの多くは家畜の飼料などに使われており、一般家庭の食卓や外食のメニューなどには並びません。

 

これは日本人が日本のコメを好んで食べ、外国産のコメを代替材として認めていないからです。

 

購買力平価の役割

 

貿易に適さない財や外国産のものが国内産のものの代替財になり得ない場合などには、確かに購買力平価は成立しません。

 

しかし、だからと言って購買力平価の有効性が失われたわけではありません。

 

「おおむね購買力平価が成り立つ」というだけでも十分、世界の経済を理解する上では大いに役に立つということに留意しておきましょう。

 

まとめ

 

・購買力平価:一物一価の法則により財に対する通貨の購買力が世界中どこでも均等(平価)になる法則。

 

・一物一価の法則:同じ財は世界中どこでも同じ価格で売られているという法則

 

・購買力平価は貿易を繰り返すことによる価格の均衡によってもたらされる(例題1)

 

・購買力平価は名目為替相場、物価水準、中央銀行の金融政策と深い関わりがある。

 

・国内中央銀行の買いオペ→貨幣供給量増加→物価上昇→名目為替相場下落→通貨安

 

・国内中央銀行の売りオペ→貨幣供給量減少→物価下落→名目為替相場上昇→通貨高

 

・相手国中央銀行の買いオペ→自国通貨高

 

・相手国中央銀行の売りオペ→自国通貨安

 

<購買力平価説が成立しない場合>

 

価格が是正されるほど貿易されない

 

必ずしも代替財になり得ない

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