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連結決算が企業価値に与える影響

【連結決算が企業価値に与える影響】
現在は日本にも「連結決算」という言葉が定着しています。

 

これは会社単独の決算を重視するのではなく、子会社などを含めてグループとしての決算を重視しましょうという考え方から来ています。

 

例えばある上場会社が業績悪化を投資家に知られないよう、上場していない子会社に赤字を押しつけるなどして、その会社の業績に問題はないように装うことを防ぐなどの目的があります。

 

そして連結決算を考えた場合、会社を子会社化する際などにはこれまで単独で考えてきたファイナンス理論はより複雑になるため、順を追って考えていくことが必要となります。

 

 

≪出資が連結決算に与える影響≫
まず、出資が連結決算に与える影響について考えてみます。

 

ここではA社が取引関係のあるB社に対して出資し、経営に関する影響力を高めて取引の安定化を図るという前提で考えてみます。

 

現在のA社、B社の状況は以下の通りです。
(なお、ここではA社、B社ともにすべての資産が事業資産であると考えます。)

 

 

【A社】
・総資産 200億円
・負債 100億円
・株主資本 100億円
・資本コスト 8%

 

 

【B社】
・現在の総資産 8億円
・現在の負債 5億円
・株主資本 3億円

 

 

【A社とB社の関係の変化】
A社はB社に対して2億円を出資、これにより、B社から毎年一定の売上を得ることが可能となり、フリーキャッシュフローは5,000万円増加する。

 

このようなケースで、A社がB社に出資した場合の企業価値の変化を考えてみましょう。

 

まず、A社はB社に出社することで、年間5,000万円のフリーキャッシュフローを得ることができます。

 

するとその分A社の企業価値も高まることとなり、A社の企業価値の増加分は以下になります。

 

A社の企業価値の増加分 = 5,000万円÷0.08(資本コスト) =6億2,500万円 ・・・ (1)

 

次に、A社が2億円を出資した後のB社の状況は以下のようになります。

 

 

・総資産 10億円
・負債 5億円
・株主資本 5億円
・資本コスト 8%
・B社のフリーキャッシュフロー 1億円/年

 

 

この場合のB社の企業価値を計算してみましょう。

 

B社の企業価値 = 1億(フリーキャッシュフロー)÷0.08(資本コスト) = 12億5,000万円

 

A社が2億円を出資した後のB社の企業価値は12億5000万円です。

 

B社には負債が5億円ありますので、それを差し引くと、株主資本の理論値は7億5000万円となります。

 

ここで、A社はB社の株主資本の2/5である2億円を出資していますので、7億5000万円の2/5がA社の価値となります。

 

よって、A社の出資分の理論値は以下となります。

 

7億5000万円×(2億円÷5億円) = 3億円

 

これは、A社が2億円出資することで3億円の資産を得たことを意味します。

 

差額は1億円です。 ・・・ (2)

 

A社の企業価値は、(1)で計算した6億2,500万円+(2)で計算した1億円分、すなわち7億2,500万円分企業価値が高まり、出資後の企業価値は207億2,500万円になります。

 

このように連結で企業価値を考えた場合、「単独で考えた場合」+「出資した企業の自己資本の出資割合」分企業価値が高まるということになります。

 

しかし、出資後のB社の企業価値が上記のように「必ず出資前よりも高まる」というわけではありません。

 

よって、その点には注意が必要です。

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