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コーポレートガバナンス(企業統治)を理解する その2

【株主重視のコーポレートガバナンス】
近年では、コーポレートガバナンスというと、株主利益、つまり企業価値の増大に重きを置くという傾向が高まっています。

 

この考え方はもともとアメリカなどの欧米諸国で主流であった考え方ですが、日本もこのアメリカ型に近づきつつあるということです。

 

この考え方にも様々な理由がありますが、主なところでは、以下のような点を挙げることができます。

 

 

1.経営が非効率である場合、株主が魅力を感じずに株価が低迷してしまう。
まず、近年よく言われることが、日本の会社は非効率な経営を行う会社が多いということです。

 

利益をあげたとしてもそれを投資などに振り向けることはせず、社内に溜め込んでしまっているという状況がよく指摘されています。

 

これは債権者にとっては安全性が高まることになり、評価すべきことと言えますが、株主には「経営者にやる気がない」と判断され、株価低迷の1つの原因となります。

 

そして現在ではそのような会社はM&Aの標的となったり、資金調達が難しくなる状況に陥ることがあるため、「積極的かつ効率的な経営」が求められるようになったのです。

 

 

2.経営の大きな目的の一つは企業価値にあると認識されるようになった。
これまでの債権者や従業員重視の経営も、確かに考え方としては納得できる部分はあります。

 

しかし、社会構造の変化や競争の激しさが日増しに速度を速めている今日では、このような「日本式」の経営は、結局会社を破たんさせることにつながるという認識が強くなってきています。

 

例えば従業員のモチベーションを高めるために行った経営戦略が、結果的に業績悪化を招いてモチベーションがさらに低下するなどというケースです。

 

もちろん債権者や従業員を重視して業績を伸ばしている会社も世の中には多数あり、どれが正解ということはできません。

 

企業価値や株主を重視した経営は従業員を困惑させるもので、乱暴すぎるという意見もありますが、企業価値を重視することが最終的に会社のためになるという意見が近年とても多く聞かれるようになってきているのもまた事実です。

 

 

3.経営のグローバル化。
上場企業の中には国際会計基準を採用する会社が増加しているように、近年では経営のグローバル化に伴い、株主も日本のみならず、世界の投資家がその割合を高めるようになっています。

 

このような流れの中で「物言う株主」なども現れ、株主を重視せざるを得ないという状況が生まれています。

 

 

【M&A(敵対的買収)について】
上述したように、非効率的な経営を行っているなどの理由で、そのような会社をM&Aで買収し、経営陣の刷新を行おうとするケースが増えています。

 

特に近年は急速に規模を拡大している新興企業も多いため、この傾向はますます顕著になりつつあります。

 

そしてM&Aはすべてが納得して行われるというわけではなく、買収を画策する会社とその対象の会社が対立し、いわゆる敵対的買収と呼ばれる事態になることもあります。

 

敵対的買収は、経営陣や経営方針が大きく変わる可能性が高いことから経営陣や従業員にとっては脅威になります。

 

そしてそれを阻止するための様々な防衛策を考えます。

 

実際、敵対的買収は買収しようとする会社が強引に株式を取得したり買収した後に会社を解体してしまうなどのイメージがあり、あまりよく思われることはありません。

 

しかしよく考えてみると、必ずしも敵対的買収は買収先の会社を壊すというわけではありません。

 

もちろん不採算事業から撤退する、あるいは根本的に会社の事業を変えてしまうといったケースも珍しくはなく、従業員もこれまでのように安泰とは言えなくなります。

 

ただ、株主からすると、買収によって「ファイナンス的な企業価値が高まる」ということも大いに考えられます。

 

あくまでもファイナンス的な見地で考えると、敵対的買収が必ずしも「悪いこと」とは言えない場合があるということです。

 

もちろんあらゆる手段を使って他者を強引に傘下に収めるということは、社会的なイメージの悪化などを招き、かつこれまでの経営者や従業員を切り捨てることにもなりかねないため、そのような場合は決して正しいとは言えません。

 

結局のところ、最も必要なことは、「経営陣がバランスの取れたコーポレートガバナンスを行い、隙を見せずに敵対的買収をさせない経営を行う」ということに尽きるといえるでしょう。

 

 

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