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財務レバレッジとβ(ベータ) その1

今回は資本構成の変化(財務レバレッジ)とβの関係について、詳しく考えていきます。

 

 

【財務レバレッジとは】
まずは財務レバレッジの概要を理解しましょう。

 

財務レバレッジとは、財務に関してレバレッジ(てこ)を効かせた経営を行うことです。

 

具体的には、自己資本だけでは増やすことが難しい総資産を負債を活用することでレバレッジ(てこ)を訊かせて増やそうということです。

 

財務レバレッジは、以下のように計算します。

 

財務レバレッジ = 総資産(総資本)÷自己資本(株主資本)
(注:総資産と総資本は必ず同額となりますが、自己資本と株主資本は厳密には異なります。しかしここでは便宜上、これまで使ってきた総資本と株主資本という表記で進めていきます。)

 

財務レバレッジを計算してわかることは、「総資本が株主資本と比べて何倍になっているか」ということです。

 

そしてこの数値が高ければ高いほど、負債を有効に活用しているということになります。

 

例えば以下のケースで考えてみます。

 

 

≪ケース1≫
総資本 2,500万円
負債 0万円
株主資本 2,500万円

 

財務レバレッジ = 2,500÷2,500 =1

 

 

≪ケース2≫
総資本 5,000万円
負債 2,500万円
株主資本 2,500万円

 

財務レバレッジ = 5,000÷2,500 = 2

 

 

この場合、株主資本が同じでも、ケース2の会社のほうが「財務でレバレッジを効かせている = 負債を有効に使っている」ということになります。

 

そして実際に負債を活用している分、総資本は2倍に増えています。

 

これが財務レバレッジという考え方です。

 

なお、今回は輸出関連企業であるO社について財務レバレッジとβの関係を考えます。

 

まず、O社の財務状況と今後のO社の各環境における収益率の変化は以下の通りです。

 

 

・O社の総資本 1億(10,000万)円

 

・O社の現在の営業利益 1,000万円

 

・O社の収益率の変化
円高:収益が10%ダウン
円安:収益が20%アップ
不変:収益に影響はない
景気の悪化:営業利益が500万円の赤字に転落

 

 

≪無借金経営の場合の資本構成≫
まずはO社が無借金経営の場合の資本構成を考えます。

 

無借金経営の場合は、総資本と負債、株主資本の関係は以下のようになります。

 

・総資本 1億(10,000万)円
・負債 0円
・株主資本 1億(10,000万)円

 

財務レバレッジ = 10,000÷10,000 = 1

 

この場合は上記のケース1と同じく負債が0、つまり「総資本 = 株主資本」です。

 

よって財務レバレッジは1となります。

 

次に、負債:株主資本が1:1の場合を考えてみましょう。

 

 

≪負債:株主資本が1:1の場合の資本構成≫
負債:株主資本が1:1の場合は、総資本と負債、株主資本の関係は以下のようになります。

 

・総資本 1億(10,000万)円
・負債 5,000万円(利息4%)
・株主資本 5,000万円

 

財務レバレッジ = 10,000÷5,000 = 2

 

この場合は上記のケース2と同様、「総資本 = 負債+株主資本」で、財務レバレッジは2となります。

 

そして上記の2つのケースで、βに与える影響を考えていきます。

 

 

【財務レバレッジとβの関係に関する考え方】
財務レバレッジとβの関係は、ROAとROEを使って考えます。

 

ROAは総資産に対する経常利益率(総資産利益率:経常利益÷総資産×100)のことです。

 

そしてROEは自己資本に対する当期純利益率(自己資本利益率:当期純利益÷自己資本×100)のことです。

 

なお、ROAの算出方法は複数あり、通常は計算のしやすい経常利益を使用することが多くなっています。

 

しかし、今回はROEとの比較を行いやすくするため、ROAは支払利息を引く前の営業利益を使用して計算を行います。

 

なお、財務レバレッジやROA、ROEに関する詳しい説明は、当サイトの「アカウンティング(会計)」の「企業の総合力を分析」でも解説していますので、そちらを参照してみてください。

 

 

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