経営を学ぶ-経営学・MBA・起業・ネットビジネス・リアルビジネスなど

最適資本構成とMM理論 その1

最適資本構成とMM理論 その1

【最適資本構成とMM理論】
ここでは最適資本構成について考えてみましょう。

 

最適資本構成とは、「企業価値を最も高める」資本構成のことです。

 

つまり、負債と株主資本の割合をどうすれば会社が最も利益(キャッシュフロー)を生み出せるかということです。

 

これを考えるにあたり、まずはMM理論を知る必要があります。

 

よってここではまずMM理論を学び、その上で最適資本構成について考えてみましょう。

 

 

【MM理論とは】
MM理論とは、アメリカの経済学者であるモジリアーニとマートンという2人の経済学者が唱えた理論で、2人の名前の頭文字を取って名づけられたものです。

 

それまでは最適資本構成については漠然と「存在するのでは?」と考えられていましたが、MM理論では「最適資本構成は存在しない」ことが証明されました。

 

まず、MM理論は以下の前提から成り立っている概念です。

 

 

前提 : 市場は完全資本市場である。

 

 

そして完全資本市場とは、以下のような市場です。

 

 

1.誰もが参加できる。
2.誰もが公平に情報を得ることができる。
3.会社の負債はリスクフリーレートと同じである(リスクがない)。
4.会社の利益(キャッシュフロー)は常に一定であり、その利益(キャッシュフロー)はすべて配当に回される。
5.あらゆる取引における費用は存在しない。
6.法人税はない。

 

 

こうしてみると、完全資本市場は、現実の市場と比べるとかなり違いがあります。

 

よってMM理論を考える場合は、あくまでも上記のような制約下での理論であるということに注意する必要があります。

 

 

【MM理論の考え方】
ではMM理論の結論である、「最適資本構成は存在しない」ということを解明してみましょう。

 

ここでは総資本は同じで、資本構成が異なる2つのケースについて、それぞれの場合の「外部に支払えるお金」を比較して考えてみましょう。

 

 

ケース1:負債0円、株主資本10億円
ケース2:負債5億円(金利4%)、株主資本5億円

 

 

なお、ケース1、ケース2ともに、営業利益は以下の通りです。

 

 

a年度:1億円
b年度:5,000万円
c年度:1億5,000万円

 

 

ここで、a年度からc年度までのケース1とケース2の場合の債権者利益と株主利益を考えてみましょう。

 

この債権者利益と株主利益の和はが大きければ大きいほど、企業価値は高まるということになります。

 

なお、計算をわかりやすくするために計算は簡略化しており、すべての費用や利益はキャッシュフローと考えています。

 

 

≪ケース1の債権者利益と株主利益≫
・a年度
営業利益 1億円
支払利息 0円
税引前当期純利益 1億円
法人税 0円
当期純利益 1億円

 

 ↓

 

債権者利益 0円
株主利益 1億円

 

 

・b年度
営業利益 5,000万円
支払利息 0円
税引前当期純利益 5,000万円
法人税 0円
当期純利益 5,000万円

 

 ↓

 

債権者利益 0円
株主利益 5,000万円

 

 

・c年度
営業利益 1億5,000万円
支払利息 0円
税引前当期純利益 1億5,000万円
法人税 0円
当期純利益 1億5,000万円

 

 ↓

 

債権者利益 0円
株主利益 1億5,000万円

 

 

≪ケース2の債権者利益と株主利益≫
・a年度
営業利益 1億円
支払利息 2,000万円
税引前当期純利益 8,000万円
法人税 0円
当期純利益 8,000万円

 

 ↓

 

債権者利益 2,000円
株主利益 8,000万円

 

 

・b年度
営業利益 5,000万円
支払利息 2,000万円
税引前当期純利益 3,000万円
法人税 0円
当期純利益 3,000万円

 

 ↓

 

債権者利益 2,000万円
株主利益 3,000万円

 

 

・c年度
営業利益 1億5,000万円
支払利息 2,000万円
税引前当期純利益 1億3,000万円
法人税 0円
当期純利益 1億3,000万円

 

 ↓

 

債権者利益 2,000万円
株主利益 1億3,000万円

 

 

ここで債権者利益と株主利益をまとめると、以下のようになります。

 

 

≪ケース1≫
・a年度
債権者利益 0円
株主利益 1億円

 

・b年度
債権者利益 0円
株主利益 5,000万円

 

・c年度
債権者利益 0円
株主利益 1億5,000万円

 

 

≪ケース2≫
・a年度
債権者利益 2,000円
株主利益 8,000万円

 

・b年度
債権者利益 2,000万円
株主利益 3,000万円

 

・c年度
債権者利益 2,000万円
株主利益 1億3,000万円

 

 

そして「債権者利益+株主利益 = 外部利益」は以下のようになります。

 

 

≪ケース1≫
・a年度
外部利益 1億円

 

・b年度
外部利益 5,000万円

 

・c年度
外部利益 1億5,000万円

 

 

≪ケース2≫
・a年度
外部利益 1億円

 

・b年度
外部利益 5,000万円

 

・c年度
外部利益 1億5,000万円

 

 

ケース1とケース2の外部利益には変化がないことがわかります。

 

つまり、収益がどのようであれ、「外部に支払う金額 = 将来的な企業価値」は資本構成に影響を与えないということです。

 

これがMM理論の考え方です。

 

 

次のページ 「最適資本構成とMM理論 その2」

関連ページ

ファイナンスとは
「儲け」とは
財務諸表とファイナンス その1
財務諸表とファイナンス その2
キャッシュフローを理解する その1
キャッシュフローを理解する その2
キャッシュフローを理解する その3
埋没コストと機会費用
企業経営とキャッシュフロー概念 その1
企業経営とキャッシュフロー概念 その2
現在価値を理解する その1
現在価値を理解する その2
現在価値の計算
永続価値を理解する その1
永続価値を理解する その2
リースファクター(年金現価係数) その1
リースファクター(年金現価係数) その2
リスクを理解する その1
リスクを理解する その2
リスクとポートフォリオ その1
リスクとポートフォリオ その2
ファイナンスのための統計学基礎
リスクとリターン その1
リスクとリターン その2
リスクとリターン その3
ポートフォリオの拡張と最適ポートフォリオ
CAPM(Capital Asset Pricing Model)とは
β(ベータ)を理解する
CAPMの公式と解明 その1
CAPMの公式と解明 その2
ファンダメンタル価値理論と砂上の楼閣理論
効率的市場仮説とランダムウォーク
資本コスト(WACC)を理解する その1
資本コスト(WACC)を理解する その2
資本コスト算定の注意点
財務レバレッジとβ(ベータ) その1
財務レバレッジとβ(ベータ) その2
財務レバレッジとβ(ベータ) その3
バリュエーションを理解する
NPV(Net Present Value:正味現在価値)
NPVによる投資評価 その1
NPVによる投資評価 その2
NPVの注意点
APV(Adjusted Present Value:調整現在価値)
NPVとAPVの関係
IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)
EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)
MVA(Market Value Added:市場付加価値)
回収期間(Payback)法と会計上の収益率 その1
回収期間(Payback)法と会計上の収益率 その2
PI(Profitability Index:収益性指標)
負債を活用した場合のNPV
企業価値を理解する
株価の理論値を理解する その1
株価の理論値を理解する その2
連結決算が企業価値に与える影響
経営の多角化が企業価値に与える影響
M&A(企業の合併・買収) その1
M&A(企業の合併・買収) その2
財務政策を理解する
最適資本構成とMM理論 その2
利益還元政策を理解する その1
利益還元政策を理解する その2
株主に報いるには
オプションを理解する その1
オプションを理解する その2
プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その1
プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その2
プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その3
ブラック-ショールズの公式
リアルオプションを理解する
負債コストとオプションの関係
「格付け」を理解する
経営戦略とファイナンス その1
経営戦略とファイナンス その2
コーポレートガバナンス(企業統治)を理解する その1
コーポレートガバナンス(企業統治)を理解する その2
資金調達方法(負債と自己資本) その1
資金調達方法(負債と自己資本) その2
資金調達方法(負債と自己資本) その3
資金計画を考える
IR(インベスター・リレーションズ)とは
証券化とは

HOME メルマガ登録 プロフィール お問い合わせ