経営を学ぶ-経営学・MBA・起業・ネットビジネス・リアルビジネスなど

最適資本構成とMM理論 その2

最適資本構成とMM理論 その2

【法人税を考慮した場合】
次に、法人税を考慮した場合の最適資本構成について考えてみましょう。

 

法人税を考慮した場合は、以下のようになります。

 

なお、ここでは法人税は35%で考えます。

 

 

≪ケース1の債権者利益と株主利益≫
・a年度
営業利益 1億円
支払利息 0円
税引前当期純利益 1億円
法人税 3,500万円
当期純利益 6,500万円

 

 ↓

 

債権者利益 0円
株主利益 6,500万円

 

 

・b年度
営業利益 5,000万円
支払利息 0円
税引前当期純利益 5,000万円
法人税 1,750円
当期純利益 3,250万円

 

 ↓

 

債権者利益 0円
株主利益 3,250万円

 

 

・c年度
営業利益 1億5,000万円
支払利息 0円
税引前当期純利益 1億5,000万円
法人税 5,250円
当期純利益 9,750万円

 

 ↓

 

債権者利益 0円
株主利益 9,750万円

 

 

≪ケース2の債権者利益と株主利益≫
・a年度
営業利益 1億円
支払利息 2,000万円
税引前当期純利益 8,000万円
法人税 2,800万円
当期純利益 5,200万円

 

 ↓

 

債権者利益 2,000円
株主利益 5,200万円

 

 

・b年度
営業利益 5,000万円
支払利息 2,000万円
税引前当期純利益 3,000万円
法人税 1,050円
当期純利益 1,950万円

 

 ↓

 

債権者利益 2,000万円
株主利益 1,950万円

 

 

・c年度
営業利益 1億5,000万円
支払利息 2,000万円
税引前当期純利益 1億3,000万円
法人税 4,550万円
当期純利益 8,450万円

 

 ↓

 

債権者利益 2,000万円
株主利益 8,450万円

 

 

ここで債権者利益と株主利益をまとめると、以下のようになります。

 

 

≪ケース1≫
・a年度
債権者利益 0円
株主利益 6,500万円

 

・b年度
債権者利益 0円
株主利益 3,250万円

 

・c年度
債権者利益 0円
株主利益 9,750万円

 

 

≪ケース2≫
・a年度
債権者利益 2,000円
株主利益 5,200万円

 

・b年度
債権者利益 2,000万円
株主利益 1,950万円

 

・c年度
債権者利益 2,000万円
株主利益 8,450万円

 

 

そして「債権者利益+株主利益」は以下のようになります。

 

 

≪ケース1≫
・a年度
外部利益 6,500万円

 

・b年度
外部利益 3,250万円

 

・c年度
外部利益 9,750万円

 

 

≪ケース2≫
・a年度
外部利益 7,500万円

 

・b年度
外部利益 3,950万円

 

・c年度
外部利益 1億450万円

 

 

ケース1とケース2の外部利益には変化が生じています。

 

そしてそのすべてで、ケース2がケース1を上回る外部利益が発生しています。

 

これがこれまで学習してきた「財務レバレッジ効果」です。

 

税金を考慮した場合の企業価値は、「負債がある会社>負債がない会社」となります。

 

 

【現実的な最適資本構成とは】
では最後に、現実的な最適資本構成を考えてみましょう。

 

まず、MM理論で考えた企業価値には「税金が存在しない完全資本市場」という制約があったため、残念ながら現実的とは言えません。

 

そして税金を考慮した場合の最適資本構成は、「負債がある会社>負債がない会社」です。

 

そしてこれを突き詰めると、実は「資本が100%負債の会社」が最も企業価値が高いことになります。

 

しかしこれも極端な考え方で、資本を100%負債にするということは、現実的には考えにくいことです。

 

なぜなら、資本金を0に近くし、MM理論の条件の1つにあった「発生した利益(キャッシュフロー)はすべて株主に還元する」などの対策を行わなければならないからです。

 

そして最大の問題点は、負債が多くなればなるほど、「倒産リスクが高まる」ということです。

 

例えば負債が100%の会社の営業利益がマイナスとなった場合、途端に支払利息の返済が滞ることになります。

 

そして債務不履行の状態となり、かついわゆる債務超過という状態に陥る可能性が高くなります。

 

債務不履行とは債権者に対する義務を果たせないこと(ここでは支払利息が支払えないこと)を言います。

 

そして債務超過とは、負債が総資産を上回る状態のことです。

 

通常、利益がマイナスになるということは、その分株主資本が減少して、結果的に総資産が減少します。

 

しかし、株主資本がゼロである場合は、減少する株主資本がありません。

 

そして負債は返済しない限り減らないため、利益がマイナスの場合は返済できる可能性は少なく、結果的に債務超過に陥りやすいということです。

 

このことは会社が倒産する可能性を飛躍的に高めることになります。

 

よって、「負債が100%の会社」というのは現実的にはあり得ないということになるのです。

 

負債増加に伴う企業価値のイメージとしては、以下のようになります。

 

最適資本構成とMM理論

 

では改めて「現実的な最適資本構成」を考えてみましょう。

 

まず、現実的な最適資本構成は業種や会社の信用度、今後の会社の方向性などによって変わってきます。

 

例えば事業のための固定資産を多く持つ業種の会社などは、万が一の時はそれを売却して現金化することが可能であるため、比較的負債の多い資本構成にしても問題がないと言えます。

 

これに対して、例えばソフトウェア開発などの優秀な人材や技術力が会社の原動力となっている会社などの場合は、比較的負債比率を上げることは難しくなります。

 

なぜなら、そのような人材や技術力は変化することが多く、かつ固定資産などと違って簡単に現金化することができないためです。

 

そしてそのような場合は、金融機関などの債権者はリスクの高さを理由に融資に慎重になります。

 

しかし逆にそのような会社は成長性が高い場合が多く、資金を提供する投資家が目をつけて出資するケースが見られます。

 

リスクは高くなりますが、そのリスクを上回るリターンが期待できるためです。

 

つまり、人材や技術力などを原動力としているような会社の最適資本構成は、株主資本比率が高くなる傾向になるということです。

 

そして安定的にキャッシュフローが稼げるなど会社の信用度が高く、健全な財務状態の会社が今後投資活動を活発化させようと考えたときは、負債で資金を調達したほうが節税効果も見込まれるため、企業価値の増加に貢献すると言えます。

 

最適資本構成は、その会社の個別要素によって異なり、かつ絶対的な計算方法はありません。

 

しかし、資本構成を意識することで、経営が効率化する可能性は大いにあります。

 

MM理論から始まる最適資本構成の考え方を理解しておきましょう。

 

 

前のページ 「最適資本構成とMM理論 その1」

関連ページ

ファイナンスとは
「儲け」とは
財務諸表とファイナンス その1
財務諸表とファイナンス その2
キャッシュフローを理解する その1
キャッシュフローを理解する その2
キャッシュフローを理解する その3
埋没コストと機会費用
企業経営とキャッシュフロー概念 その1
企業経営とキャッシュフロー概念 その2
現在価値を理解する その1
現在価値を理解する その2
現在価値の計算
永続価値を理解する その1
永続価値を理解する その2
リースファクター(年金現価係数) その1
リースファクター(年金現価係数) その2
リスクを理解する その1
リスクを理解する その2
リスクとポートフォリオ その1
リスクとポートフォリオ その2
ファイナンスのための統計学基礎
リスクとリターン その1
リスクとリターン その2
リスクとリターン その3
ポートフォリオの拡張と最適ポートフォリオ
CAPM(Capital Asset Pricing Model)とは
β(ベータ)を理解する
CAPMの公式と解明 その1
CAPMの公式と解明 その2
ファンダメンタル価値理論と砂上の楼閣理論
効率的市場仮説とランダムウォーク
資本コスト(WACC)を理解する その1
資本コスト(WACC)を理解する その2
資本コスト算定の注意点
財務レバレッジとβ(ベータ) その1
財務レバレッジとβ(ベータ) その2
財務レバレッジとβ(ベータ) その3
バリュエーションを理解する
NPV(Net Present Value:正味現在価値)
NPVによる投資評価 その1
NPVによる投資評価 その2
NPVの注意点
APV(Adjusted Present Value:調整現在価値)
NPVとAPVの関係
IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)
EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)
MVA(Market Value Added:市場付加価値)
回収期間(Payback)法と会計上の収益率 その1
回収期間(Payback)法と会計上の収益率 その2
PI(Profitability Index:収益性指標)
負債を活用した場合のNPV
企業価値を理解する
株価の理論値を理解する その1
株価の理論値を理解する その2
連結決算が企業価値に与える影響
経営の多角化が企業価値に与える影響
M&A(企業の合併・買収) その1
M&A(企業の合併・買収) その2
財務政策を理解する
最適資本構成とMM理論 その1
利益還元政策を理解する その1
利益還元政策を理解する その2
株主に報いるには
オプションを理解する その1
オプションを理解する その2
プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その1
プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その2
プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その3
ブラック-ショールズの公式
リアルオプションを理解する
負債コストとオプションの関係
「格付け」を理解する
経営戦略とファイナンス その1
経営戦略とファイナンス その2
コーポレートガバナンス(企業統治)を理解する その1
コーポレートガバナンス(企業統治)を理解する その2
資金調達方法(負債と自己資本) その1
資金調達方法(負債と自己資本) その2
資金調達方法(負債と自己資本) その3
資金計画を考える
IR(インベスター・リレーションズ)とは
証券化とは

HOME メルマガ登録 プロフィール お問い合わせ