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プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その3

【プット・コール・パリティ】
プット・コール・パリティとは、プットとコールの相関関係のことです。

 

これまで見てきたオプションのプレミアムには、以下のような相関関係があります。

 

(コールのプレミアム)−(プットのプレミアム) = (対象資産の価格)−(行使価格をリスクフリーレートで割り引いた現在価値)

 

パリティとは、日本語で言うと「等価」という意味になり、今回の場合で考えてみると、以下のようになります。

 

(コールのプレミアム)−(プットのプレミアム) = 50.98−47.06 = 3.92

 

(対象資産の価格)−(行使価格をリスクフリーレートで割り引いた現在価値) = 200−(200÷1.02) ≒ 3.92

 

今回は「対象資産の価格 = 行使価格」で考えていますので、その場合はコールとプットの本質的な価値は同じで、差は行使価格の時間的な価値だけになるということです。

 

そして例えば対象資産の価格が200円で、行使価格が250円だった場合のプット・コール・パリティは以下のようになります。

 

 

(コールのプレミアム)−(プットのプレミアム) = 200−(250÷1.02) ≒ −45.10

 

 

これをコールとプットのプレミアムを計算して確認してみましょう。

 

先ほどと同じく、プレミアムがx円、Cさんが銀行から借り入れる金額がy円、購入する株式の株数がz株とします。

 

 

≪コールのプレミアム≫

 

x+y−200z = 0 ・・・ (1)
300z−300+250−1.02y = 0  ・・・ (2)
100z = 1.02y  ・・・ (3)

 

(2)より、
1.2y = 300z−50

 

(3)より、
100z = 300z−50
200z = 50
z = 0.25
y = 25÷1.02 ≒ 24.51

 

(1)より、
x = −24.51+50 = 25.49

 

 

コールのプレミアムは25.49円です。

 

 

≪プットのプレミアム≫

 

x+y−200z = 0  ・・・ (1)
300z = 1.02y   ・・・ (2)
100z+100−250−1.02y = 0   ・・・ (3)

 

(3)より、
1.2y = 100z−150

 

(2)より、
300z = 100z−150
z = −0.75
y = −225÷1.02 ≒ −220.59

 

(1)より、
x = 220.59−150 = 70.59

 

 

プットのプレミアムは70.59円です。

 

 

(コールのプレミアム)−(プットのプレミアム) = 25.49−70.59 = −45.10

 

 

これは上記の「(対象資産の価格)−(行使価格の現在価値)」と一致しています。

 

そして行使価格が対象資産の価格よりも高い場合は、買う権利であるコールは不利であるためにプレミアムが低くなり、売る権利であるプットは有利であるためにプレミアムが高くなっていることがわかります。

 

また、この式は以下のように考えることもできます。

 

 

(コールのプレミアム) = (対象資産の価格)+(プットのプレミアム)−(行使価格をリスクフリーレートで割り引いた現在価値)

 

 

この計算式は実は会社が借り入れを行う際の金利(負債コスト)の理論づけと考えることもできます。
(負債コストとオプションの関係については、後述します。)

 

ここではプレミアム(オプション価格)の仕組みについて、その概要が理解できるようにしておきましょう。

 

 

前のページ 「プレミアムの算定(二項過程モデル、ヘッジレシオ、プット・コール・パリティ) その2」

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