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人材育成

今回は人材育成について取り上げます。

 

今回の文章を読むことによって、実行力のある人材の育成や、ミドルの育成、キャリアデベロップメント等、人材育成を取り巻く様々なテーマについて学ぶことができます。

 

実行力のある人材

 

社員の育成は、社員個人にとっても企業組織にとっても重要な問題です。

 

これまで日本企業の多くでは、OJTを中心としてOff-JTも組み込みながら人材育成に取り組んできました。

 

社員の能力開発に加え、その企業組織固有の仕事のやり方を身につけ、組織文化を伝承し、その企業組織内で望まれるがメンバーとの双方向でのやり取りことが重要なポイントであるとされてきたのです。 

 

また、その企業組織の戦略を適切に遂行し、新しい戦略を生み出すような人材を育成することも重要なポイントとなります。

 

そのような中で近年注目されているのが、仕事に対する「実行力」です。

 

この実行力とは、「企業組織のビジョンや戦略の実現のために、リーダーがメンバーとの双方向でのやり取りを通じて、課題一つ一つを具体的な行動レベルに落とし込んで最後までやりぬかせること」と言い換えることができます。

 

様々な業界において、その業界のトップに君臨する企業の多くは、単に戦略が優れているがためにその地位にいるのではなく、戦略の内容が妥当であるだけでなく、実行力が優れているのです。

 

そのようなトップ企業においては、実行力を高めていくために莫大な労力をかけており、日常的に管理職からのコーチングにそのような要素を盛り込んだり、人事考課における重要な評価項目としたり、階層別に研修を行うなどしているのです。

 

実行力を高める取り組み例

 

実行力を高めるための取組みについて、資生堂とジョンソン・エンド・ジョンソンの実例を見ていきましょう。

 

?資生堂

 

資生堂は創業当初より、「書生堂」という別名でも呼ばれていたように、社員の指導や育成に力を入れており、その社風を引き継いで、2006年10月に「資生堂共育宣言」を発表しました。

 

その資生堂共育宣言において、企業倫理や経営ビジョンである「”魅力ある人”で組織を埋め尽くす」の実現に向けて、これまで同社で培われた人材育成の考え方などをベースに、「資生堂人としての魅力(美意識)」「実行する力(自立性)」「変革する力(変革力)」の 3 つをキーコンセプトとして、資生堂が求める人材像を設定しています。

 

これらを通じて、社員各個人が自己実現に積極的に取り組む意思を強く持ち、共に育ち合い、育て合い、社員自身の成長と企業の成長が重なり合う企業となるように取り組んでいます。

 

人材育成については、「目標管理に基づくOJT」「公正な評価・処遇」「適切な機会をとらえた研修」「異動・ローテーション」の4 つの機能があり、それら4つの機能が有機的に連動することで社員を成長させていく仕組みとなっています。

 

これら4つの機能のサイクルを回しながら、社員に対する意識付けやモチベーションの維持やスキルアップ、成長の機会を社員に適切に与えてキャリア開発を促進し、職場における適切な役割分担や指導などのマネジメントを通じて、計画的な育成を図っています。

 

また、同社では人材育成方針の具現化と全社の研修機能を統括するため、企業内大学として「エコール資生堂」を開設しており、分野ごとのプロフェッショナルを育てる研修や、分野を横断した社員研修や管理職研修に加え、将来の経営幹部養成を目的とした研修等を実施しています。

 

人材育成1

 

また、エコール資生堂では社長が学長を、各部門の執行役員が学部長を務めており、それぞれの分野に所属する従業員の育成に責任を持つ仕組みにして、企業組織のマネジメントが従業員の育成に直接責任を負うようにしています。

 

?ジョンソン・エンド・ジョンソン

 

近年、経営理念を社員に浸透させるために「クレド」を活用している企業が増えてきています。

 

クレドを活用している企業として代表的な企業は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下J&J)でしょう。

 

クレドとは、「信条」を意味するラテン語で、「企業の信条や行動指針を簡潔に記したもの」を指します。

 

人材育成2

 

同社は1932年以来連続して増収増益を達成し、平均成長率11%の驚異的な経営で知られています。

 

同社のビジネスの根幹をなす価値観として60年前に制定されたクレドが「我が信条」です。

 

J&Jのクレドでは、社員が果たすべき責任の優先順位を、第一は「顧客」、第二は「社員」、第三は「地域社会」、第四は「株主」として定め、項目ごとに計21の順守すべき事項を明記しています。

 

同社では、クレドの定着を図るために「クレド・チャレンジ・ミーティング」と呼ばれるミーティングを開催しています。

 

毎年、全世界の社員12万人を対象にクレドの実践度合いをチェックする「クレド・サーベイ」を実施し、その結果について、部門・課・グループ単位で点数化します。

 

つまり、どこの職場がクレドを順守し、実践しているかが一目瞭然となるのです。

 

この結果に基づいて職場ごとにディスカッションを行い、問題点を明確化したうえで改善のためのアクションプランを策定・実行し、期末に成果をレビューを行うというプロセスを毎年繰り返すことによってクレドの浸透を図っているのです。

 

また、マネジメントの改善努力を促すために、クレドは人事評価にも組み込まれています。

 

同社では目標管理制度が導入されており、マネージャ層以上は設定した目標ごとに評価のウエート付けが行われますが、そのうち、クレドに関する目標はウエートが20%を占めています。

 

例えば、5つの目標を設定した場合、そのうち1つはクレドに関する目標を設定しなければならないとなっているのです。

 

これは、クレドのスコア改善はマネジメント層の重要な業務課題であることを認識させるとともに、その評価結果が報酬にも影響することになることを示しています。

 

同社では、クレドの順守・追求こそがビジネスを成長させ、企業組織を発展させるという過去の経験から積み上げた「成功の法則」を確信しているということができるでしょう。

 

 

組織で「型」を設計し伝承する

 

企業組織における「型」や組織文化の伝承は、かつては日本企業の現場で脈々と行われてきましたが、近年では容易ではなくなってきています。

 

その理由としては、厳しい競争環境の下で仕事の効率を重視するあまり、部下とじっくりコミュニケーションをとることができない、あるいは、存続させるべき「型」が判断できなくなっていることが考えられます。

 

現場の感覚としてはもっともな理由なようにも見えますが、これでは組織の強みを維持することができません。

 

逆に競争が激しい環境下であるからこそ、これからの競争において求められる、あるべき仕事の「型」を確立し、それを組織内に組み込んで実践を通じて定着を促し、その型を通じて判断基準としての組織文化を伝承していくことが重要なのです。

 

そのような「型」を設計し、社内展開していく際のポイントとしては以下のような点が挙げられます。

 

自分の頭で「考え抜く」思考の姿勢とスキルをインプットすること

 

実際の業務に即した「型」を理解させること

 

研修(Off-JT)と実務(OJT)を連動させ、定着を図ること

 

企業組織内での共通言語化を念頭に置き、短期間で一定比率以上が受講するような集中トレーニングを展開すること

 

また、学ぶ姿勢を企業組織内に定着させることも重要です。

 

互いに学び合う組織では、人が育成されやすい環境ができます。

 

それは単に先輩が後輩の面倒を見るといった類のものではなく、成功した経験からは、うまくいった理由やそこから学べるものは何か、他で活かせることはないか等を関係者とともに振り返り、組織的学習を徹底することが成果を再現する力を高めていくのです。

 

逆に失敗経験から学び、同じ失敗を繰り返さないようにすることも大きな意味を持ちます。

 

こうした組織的学習を当たり前のこととして企業組織に根付かせていくことも、マネジメント層にとって重要な責務なのです。

 

コーポレート・ユニバーシティ

 

GEやマクドナルドといったアメリカ企業において人材育成で大きな役割を果たしてきたのが、コーポレート・ユニバーシティです。

 

コーポレート・ユニバーシティでは、業務の「型」や企業文化の伝承や創造に大きな役割を果たしており、ヨーロッパの企業でも力を入れて取り組んでいる企業が増えています。

 

日本企業においても、前述の資生堂のような企業内大学や社内ビジネススクールといった制度を取り入れています。

 

それではコーポレート・ユニバーシティではどのようなプログラムが行われているのでしょうか、具体例を見ていきましょう。

 

具体的なプログラムとしては、以下のような例が挙げられます。

 

・経営戦略、マーケティング、財務等の経営学

 

・チーム・マネジメント、リーダーシップ等のヒューマン・スキル開発

 

・自社製品、自社サービスの内容を含めた自社課題の検討

 

これらの内容について、ケース・メソッドやグループワークを通して学ぶのです。

 

また、企業組織によっては、事業計画の策定や戦略課題の抽出等を行い、その成果をトップ・マネジメントに対して発表し、検証まで行うような企業も存在します。

 

つまり、社員が自律的に学びながら、自社の個別の問題について解決をする実験場を用意することによって、個々の社員のプロフェッショナル化を図りながら、結果として組織力を高めようとしているのです。

 

人材育成3

 

欧米の企業がコーポレート・ユニバーシティに力を入れるのには以下の2つの理由があります。

 

?競争優位の源泉は社員の創造性と自発的な学習力向上にあること

 

?流動性の高い労働市場において、如何に優秀な社員を集めることができるかを重視すること

 

?については、どんなに最新の戦略理論に基づいて組織を変更しても、結局はマネージャーによってビジネスの成否が左右されるということに欧米企業は気付いたということです。

 

?については、優秀な社員は転職という選択肢を持っており、そのような社員を社内に留めて、その付加価値の高いスキルを活かして会社の競争力を高めるためにも、常にそのようなスキル習得の場を提供することが重要になっているのです。

 

このような欧米企業の発想は、昨今変化の激しい経営環境下にあって、社員個人のプロフェッショナル化を図りながら変革を促す必要のある日本企業でも参考になるでしょう。

 

 

ミドル・マネジメントの育成

 

次にミドル・マネジメントの育成について見ていきましょう。

 

ミドル・マネジメントとはその名の通り、中間管理者層のことであり、一般に部課長レベルのことを指します。

 

ビジネスの成否を左右するのはミドル・マネジメントであり、また、若い人材の教育や指導を現場で行っていくのもミドル・マネジメントになります。

 

そのため、人材育成の中でも最も重要になるのがミドル・マネジメントの育成ということになります。

 

ミドル・マネジメントをうまく育成することができれば、企業の業績向上にも直接的に影響を及ぼします。

 

近年では特に、ビジネス・スクールなどで学ぶことができる標準的な経営スキルや、業務の「型」や企業文化を伝承する力を磨く必要性が高まっています。

 

ここでのビジネス・スクールとは、卒業時にMBA(Master of Business Administration:経営学修士)の学位が与えられる大学院のことをいいます。

 

MBAを取得するには通常2年間大学院に通うことになりますが、1年間のプログラムであったり、夜間プログラムや、通信教育で学ぶことができるプログラムも存在しています。

 

また、企業経営者や管理職を対象に、EMBA(Executive MBA)コースを設けているビジネス・スクールもあります。

 

EMBAのコースでは、多忙な経営幹部が短期間で経営学のエッセンスを学ぶことができるようにプログラムが設定されています。

 

欧米の著名なビジネス・スクールとしては、ハーバード・ビジネス・スクールやシカゴ・ビジネス・スクールがあり、アメリカでは特に、企業経営者や管理職の多くがMBAを保有しています。

 

ビジネス・スクールで学ぶことにより、マーケティングやファイナンスなどの普遍性の高い経営科学を学び、経営者、管理職としてのスキル身につけることができます。

 

人材育成4

 

また、それ以外にも副次的な効果として、他業界のビジネス・パーソンと接する機会を持ち、視野を広げることができ、人脈も広がります。

 

日本では、これまではビジネス・スクールの数が少なく、MBAを取得するためには海外のビジネス・スクールに入学するしかないという状況でしたが、近年は日本国内でもMBAを取得できる大学院が増えてきており、また、経営幹部向けの経営教育を提供する大学や機関も増えています。

 

また、企業内の選抜研修において、外部の大学や研修企業を活用して経営教育を提供する企業も増えてきています。

 

MBAそのものではありませんが、製造業を中心にその内容を転用した「技術経営MOT:Management Of Technology)」を取り入れる企業も広まっています。

 

これからのミドル・マネジメントを育成していくために、企業組織内部で自ら開発するにせよ、外部機関や研修を活用するにせよ、効果的なプログラムを開発していくことが日本企業には求められています。

 

企業間の競争が激しくなり、事業拡大やグローバル規模でのM&Aの活用など、企業経営者に求められる能力は広くかつ深くなってきており、企業組織の将来のために優秀なマネージャを体系的に育成していくことは重要な課題となっています。

 

ミドル・マネジメントに求められるスキル

 

ミドル・マネジメントが「型」や企業文化を次世代に伝承していくために求められる具体的なスキルとしては、コーチング質問力が挙げられます。

 

コーチングとは、メンバーの潜在能力や意欲を引き出すために相互のコミュニケーションを通じて指導する方法のことをいいます。
質問力とは、相手にロジカルに本質を考えさせるためにコミュニケーションを行動レベルでイメージさせるもので、最近では役員会に質問力を強化するためのプログラムを導入する企業も出てきています。

 

また、複数の相手への問いかけの技術として、ファシリテーション(物事の簡易化)に対するニーズも高まってきています。

 

いずれのスキルも、一方的に主張を押し付けようとするのではなく、相手の熟練度や思考の癖等も踏まえたうえで考えさせながら物事を習得させようとするところに特長があります。

 

このようなスキルが求められるのは、雇用形態の多様化や企業組織のグローバル化に伴って、伝承する相手が自社の正社員のみでなく、派遣社員、外注先のスタッフ、外国籍のスタッフなど、対象が広がってきているという事情があります。

 

ミドル・マネジメント育成の戦略

 

一方で、多くの企業ではミドル・マネジメントの育成について悩みを抱えています。

 

どのように能力を伸ばしていくかという方法論の問題もありますが、誰の育成を優先するかという選択と集中の問題も大きいのです。

 

本来ならば、全ての社員に平等に機会を与え、育成を図ることが望ましいでしょう。

 

しかし、1人の経営幹部候補を育成するには経済的、時間的コストがかかるため、企業組織として保有する資源に限りがある以上、特定の潜在能力がありそうな社員に絞り込まざるを得ないのです。

 

そのため、新入社員の時には同じ研修を受けていたのに、途中から育成プログラムに参加できるものと参加できないものが現れるといったことが起こってきます。

 

若年層を対象に早期の育成を狙うほど、こうした事態が目立ってくることになります。

 

育成プログラムに参加できる者のモチベーションは上がりますが、そうでない者のモチベーションは下がってしまうことが考えられます。

 

そのため、マネジメント層が注意すべきは誰を幹部候補として選抜するのかを慎重に検討し、メンバーに対して説明できるようにしておくことです。

 

誰が経営幹部候補として選ばれたかは、誰の目から見ても明確であるため、組織内に対して強いメッセージを発していることを強く意識しなければならないのです。

 

また、幹部候補の選抜から漏れた者へのケアとして、「敗者復活制度」のような仕組みを取り入れることなどがあります。

 

実際に目立たないような傍流部門にいたからこそ、トップ・マネジメントの目を気にせずに自由に仕事に取組み、結果としてマネジメント能力が伸びるというケースもあります

 

マネジメント側も、大器晩成型の人材がいることを忘れてはならないのです。

 

これまでの多くの日本企業においては、育成したいマネージャ像が明確でないまま、何となくさまざまな部門を異動させ、結果的に人が育つのを待つというやり方が採用されていましたが、これは、企業にとっても個人にとっても効率的とは言えないと思います。

 

将来的に育って欲しい人材像を示した上で、配置やアサイン(役割の割り当て)を考えるという戦略的な発想が今後の日本企業には求められています。

 

キャリア・ディベロップメント

 

続いてキャリア・ディベロップメントについて説明していきます。

 

キャリア・ディベロップメントとは、社員のスキルや能力をいかに伸ばしていくかを設計し、実行していくことです。

 

ここまで人材育成をテーマに説明をしてきましたが、全て組織が主体となった人材育成について取り上げてきました。

 

これまでの日本企業の多くでは終身雇用制度をとっており、社員の育成は安定した雇用が保障されていることから、企業組織に育成がゆだねられてきました。

 

しかし、経営環境の変化に伴って終身雇用制度が崩れてきており、社員のキャリア開発は社員自身が主体となって行わなければならなくなっています。

 

終身雇用制度が崩れて労働力の流動性が高まると、企業固有のスキルや能力でなくほかの企業でも通用するようなスキルや能力を伸ばしていくことができるようにキャリア・プランの設計を行う必要があります。

 

実際、ビジネスの現場でも広く汎用性のある能力開発を自主的に行うビジネスパーソンが増えてきています。

 

キャリアプランの設計に関して、特に計画的な職務異動(ジョブ・ローテーション)や研修を通じて社員の職能を高めて、将来的に必要性の高い社員に育成していくためのプログラムを「キャリア・ディベロップメント・プログラム(CDP)」といいます。

 

人材育成5

 

CDPでは、社員からの自己申告や目標管理制度を通じて、上長や人事担当者との面談を行い、企業組織側の期待と社員自身の長期的な目標や企業組織側に対する希望とのギャップを埋めるように努力します。

 

この計画に従って、社員の出向や人事異動が行われるのです。

 

個人の能力を長期的に成長させるCDPは、企業組織からの異動の命令による出向やローテーション以外にも、社員自らが自主的に異動願いを提出したり、研修への取組みを申し出ることができる制度として持ち合わせている企業もあります。

 

社内公募制度

 

CDP以外に、社員自身にキャリア開発に取り組ませるための仕組みとしては、社内公募制度があります。

 

社内公募制度では、特定の業務遂行にあたって必要な人材を社内から募集するシステムであり、社員自身が自分の仕事を選択することを保証するものです。

 

自ら希望した業務に取り組むということには自己責任を伴うこととなり、社内公募で自ら手を挙げた仕事で失敗した場合には、自らで決着をつけなければならないのです。
社内公募制度は、社員自身に自らの将来のキャリアをを考えさせる機会であると同時に、人事部門が保有しているデータだけでは社員の適性や将来性を考慮して配置することが難しくなっていることを意味しています。

 

つまり、どの部署で、どのプロジェクトで、どの職務でどのようなスキルを持った人材が必要であるのかを人事部門が把握しきれなくなっているのです。

 

その理由としては、企業組織の規模が大きくなり人事データが膨大になったことや、その分析に時間をかけることができなくなっていること、業務が高度化・複雑化してきており、人事部門ではその詳細な内容が理解できなくなってきていることが挙げられます。

 

いずれにせよ、企業組織がメンバーのキャリアを完全にコントロールするという時代はすでに終了しており、むしろ自らのキャリアをいかに形成するかという意欲を持った人材が必要となってきています。

 

中高年の能力の活用

 

最後に、中高年の能力の活用について見ていきましょう。

 

これまでの日本企業の多くでは、新入社員やミドル・マネジメントをはじめとするマネージャ教育を作成・運営する一方で、中高年世代の能力開発には注力してきませんでした。

 

しかし、日本企業を取り巻く経営環境は大きく変化してきており、その1つに少子高齢化の進展があります。

 

少子化が進むということは、今後日本国内での労働力が確実に減るということを意味しています。

 

また、2007年問題として団塊世代の退職により、技術の伝承が途切れる恐れがあるとして大きな問題となったのは記憶に新しいところです。

 

このような状況から、中高年世代の人材の再活用も検討されるようになっています。

 

現在でも日本企業の多くでは65歳で定年退職するような社内制度となっていますが、その暗黙の前提として、加齢のためそれ以上の能力開発が難しく、新しい技術を身につけることが難しいと思われてきました。

 

例えば、社内での連絡ツールとして電子メールやイントラネットの掲示板が利用されるようになり、それらを使用しなければならない職場環境に拒絶反応を示してしまうようなケースがあります。

 

しかし、近年の心理学の研究では、新しいことを学習したり覚えたりする力(流動性知能)は60代の人でも30代の人と変わらないと言われています。

 

人材育成6

 

つまり、60代の人であっても、新しい知識を身につけることができ、優れた判断力を維持しているのです。

 

これまでの日本企業では、そのような能力を持った中高年世代を活用できないままでいました。

 

その証拠として、中高年世代向けの能力開発プログラムは存在していません。

 

今後予想される少子高齢化社会という環境変化へ対応するという意味でも、中高年世代に活躍の場を提供するという意味でも、新たな視点での能力開発プログラムの開発・展開が求められているということができるでしょう。

 

 

以上、人材育成に関して、今後求められる人材像や人材育成のための社内文化や社内制度、ミドル・マネジメントや中高年の人材育成について説明してきました。

 

企業組織を動かしていく原動力は人材です。

 

その人材をいかに育成し、活躍のための場を提供していくのか、マネジメント層にはそのための仕組み作りが求められているといっても過言ではないでしょう。


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