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日本的経営とは

日本的経営とは

今回は日本的経営の特徴について説明していきます。

 

今回の文章を読むことによって、日本的経営を組織・人事の面から支えてきた三種の神器「企業別労働組合」「終身雇用制」「年功制」について学ぶことができ、経営環境の変化に伴ってこれらがどのように変化してきたかを学ぶことができます。

 

「日本的経営」誕生の経緯

 

組織や人材のマネジメントに関する諸施策は、いつでも経営環境に合わせて最新・最適のものを導入するということはできません。

 

組織や人には慣性があるため、新しい施策を導入したとしてもすぐに新しいやり方に順応できるわけではなく、また、導入した施策がうまく機能しているかを見るためにもある程度の時間を必要とします。

 

また、その企業組織が置かれた国や地域の社会的慣行や法規制等の影響も受けます。

 

そのため、日本企業にとっては日本国内の法規制だけでなく、過去これまでの人事慣行の流れをよく理解した上で新たな施策を立てていくことが望まれます。

 

これまでの日本での人事慣行としてよく知られる、「企業別労働組合」「終身雇用制」「年功制」に代表される「日本的経営」の誕生の経緯について見てみましょう。

 

日本的経営に関する包括的な研究は、ジェームズ・C・アベグレンが1958年に『日本の経営』を著したのが始まりとされています。

 

現代の日本的経営の基礎が成立したのが、1945年〜1952年のアメリカ軍占領下の時代だったと考えられています。

 

日本的経営とは1

 

アベグレンは『日本の経営』において、日本的経営の特徴として「企業別労働組合」「終身雇用制」「年功制」を指摘しました。

 

この3つはその後、1972年の『OECD対日労働報告書』でも取り上げられ、日本的経営の三種の神器と呼ばれるようになりました。

 

それでは、この三種の神器とは具体的にどのようなものだったのでしょうか。

 

詳しく見ていきましょう。

 

@企業別労働組合

 

企業別労働組合とは、所属企業を単位として結成された労働組合のことをいいます。

 

事務職と技術職、ホワイトカラーとブルーカラーといった職種に関係なく、生涯を通して共に働く職場の仲間として利害の一致したメンバーが労働組合を通じて組織化されていました。

 

企業別労働組合の上部組織として産業別労働組合連合がありますが、その影響力は欧米と比べて小さくなっています。

 

企業別労働組合の特徴として、労働組合自体もその企業の将来を考えるようになるということがあります。

 

実質的には、企業別労働組合が企業側の組織と表裏一体の関係なっており、経営方針を末端まで浸透させる機能を担っているということもできます。

 

企業別労働組合以外の労働組合の形態としては、職業別組合産業別組合があります。

 

最初、労働組合は同一職種の熟練工で企業の枠を越えて企業横断的に組織された職業別組合から始まりました。

 

その後、次第に未熟練工も加えて同一産業の労働者が企業の枠を超えて企業横断的に組織した産業別組合が主流となりました。

 

特に欧米ではその傾向が強く、労働者の自立意識が強く企業への帰属意識が弱いと言われています。

 

これらに対して、日本の企業別労働組合はどのように成立してきたのでしょうか。

 

日本の企業別労働組合の誕生

 

1950年代の前半に、石炭産業界や繊維産業界で行われていた産業別の賃金交渉を経営側が拒絶したり、企業別団体交渉に組合の上部団体役員が同席することを経営側が極力排除しようとしたりしたことにより、労使交渉の主体として企業別労働組合が中心となっていったという背景があります。

 

また、このような企業別労使関係の定着には、生産性運動が大きな役割を果たしました。

 

生産性運動とは、「経済の発展のためには生産性向上に関する経営と労働の協力が必要であり、それが労働者の経済的・社会的地位の向上をもたらす」という考えを基本として、政府・経営者・労働者の3者による生産性向上推進運動です。

 

1955年には日本生産性本部が設立され、雇用の安定や労働条件の維持向上は生産性向上とは対立するものではなく、労使協力によって実現されるという思想の啓蒙を進めました。

 

このような思想は、「企業と労働組合は同じ船に乗り合わせた運命共同体である」という経営者の企業観に合致し、企業経営者に受け入れられていきました。

 

このようにして企業別組合が日本企業の間で浸透していきました。

 

A終身雇用制

 

終身雇用制とは、派遣社員や契約社員ではなく正社員として採用された場合に、定年まで雇用関係を継続することをいいます。

 

しかし実は、日本企業での終身雇用制は雇用契約において明文化されたものではなく、経営上の大きな困難や社員の大きな不手際がない限り雇用を継続することを前提としており、「暗黙の契約」ということができます。

 

また、日本での終身雇用制は大企業に限ったものであり、中小企業は終身雇用制でないという意見もありますが、中小企業においても採用の際に雇用の長期的継続を暗黙の前提としており、大企業と同様に終身雇用制がとられているということができます。

 

近年では、採用された企業で定年まで働くのではなく、早い段階から関連会社へ出向・転籍する場合も増えており、長期間の単一企業勤続という意味での終身雇用は崩れつつあるということもできます。

 

しかし、グループ企業や取引先等の関連企業の中で、定年まで雇用を維持しようとしている日本企業はまだまだ多く存在しています。

 

一方、欧米諸国の雇用システムは「ジョブ型」であるということができます。

 

ジョブ型の欧米諸国では、まず「職(ジョブ)」があり、そこにふさわしいスキルを持つ人材の採用を行いますが、日本のように暗黙的に定年まで雇用を継続するわけではなく、企業組織の求めるレベルの業務をこなせない場合は、雇用は打ち切られ解雇されることになります。

 

また、欧米企業では基本的に同じ職業に対しては同じ賃金が支払われる「同一職業同一賃金」の考え方が一般的です。

 

労働組合についても前述のとおりに日本と違って職種ごとの組合が強く、企業組織というものに拘らない「職務内容」がまずあるのです。

 

それは、同一職業同一賃金であるためどの会社でやっても同じであるという発想につながります。

 

それぞれの労働者に適した「ジョブ」があり、ずっと同じ仕事をし続けることになりますが、同じ企業に勤め続ける必要があるわけではないため、職務内容は変動しなくとも所属する企業を移動することはよくあります。

 

B年功制

 

年功制とは、年齢や勤続年数などの属人要素に応じて賃金・役職が自動的に上昇する人事制度をいいます。

 

勤続年数が長くなるにつれて、組織内での地位は昇進に応じて上昇し、賃金は昇格に応じて上昇します。

 

しかし、能力評価を含まないため、年齢や勤続年数が同じなら昇給や昇格・昇進にほとんど差がつかないところに特徴があります。

 

これまでの日本企業においては、役職の昇進と資格昇格を年功的に運用することは、全社員の活用、育成、評価・処遇等すべての人的資源管理政策の中心となっていったのです。

 

一方、欧米ではA終身雇用制のところでも説明したとおり、担当する職務内容に応じて賃金が決まる職務給(仕事に値段が付く)が一般的です。

 

日本のように会社に長く勤めれば賃金や地位が上昇していくというわけではなく、担当する職務内容によって給与は決まってきます。

 

そのため人事評価としては、与えられた職務に対してどのような成果をあげたかという成果主義的な評価が中心となってきます。

 

それでは、年功制はいかにして日本企業に定着していったのでしょうか。

 

年功制が日本企業に定着した経緯

 

第2次世界大戦以前の日本企業では、企業内でも強烈な身分制度がありました。

 

鉄鋼や紡績、石炭といった当時の花形産業の一流企業に入社したエリート社員は、2〜3年目には100人単位の部下を持つ管理職に出世する一方で、現場の労働者は会社の出入り口も別で、賃金も月給制ではなく時給制であるという風に、身分による差が明確に定められていました。

 

このような前近代的な身分による差別は戦後の労働運動の要求によって撤廃され、従来の身分制度は資格制度と名前を変え、学歴や年功という客観的な基準を反映させる内容に変化していきました。

 

また、戦後の学校制度改革によって高校や大学への進学率が向上したことや、高度工業化が進展する中で若年労働者が不足したことも影響していると言えるでしょう。

 

日本の大企業では労働力不足を補うために、新規学卒者を一括採用し、独身寮や社宅の整備、福利厚生の充実等の対応を行い、採用した若手社員の定着と長期継続雇用を推進しました。

 

このような慣行を維持・発展させていくために、新規学卒採用者を社内の人的資源の中心としてとらえ、彼らの能力を長期的に育成しながら、次第に責任ある仕事につけていくという人材の活用方法を作り上げていったのです。

 

日本的経営とは2

 

このような年功的な序列による管理は日本企業のみに特徴的なものというわけではないのですが、賃金や地位の年齢的な逆転を避けようという人事方針があるところに日本企業の特徴があります。

 

これらの三種の神器のうち、最も大きな影響を与えたのは年功制です。

 

ここからは年功制についてさらに詳しく見てみましょう。

 

高度経済成長期における日本企業にとっては、長期雇用を前提としていたため年功制は合理的であり、特に規模的な成長を目標とする経営戦略に合致していました。

 

その理由は、以下の3点に集約されます。

 

@企業の人員構成に合致

 

A社員のコミットメントやモチベーションの向上

 

B企業組織内での熟練の形成や技術の蓄積

 

それぞれ詳細を見ていきましょう。

 

@企業の人員構成に合致

 

急速に進展する経済成長の下、若年労働力を大量に採用することによって、日本企業は成長・拡大を実現してきました。

 

その結果、日本企業の人口構成は下方が拡大するピラミッド型の構造となり、少数のベテラン管理職の下に多数の若手一般社員がいるという構造を維持することができました。

 

そのため、年功的秩序に基づいた指揮命令系統がスムーズに機能し、効率的な組織運営を実現することができたのです。

 

A社員のコミットメントやモチベーションの向上

 

年功制の人事システムの下では、人並みに努力すれば勤続年数を重ねるうちに昇進・昇格することができます。

 

企業組織において、昇進・昇格の機会は企業の成長発展にともなって増えていきます。

 

このような状況下で、企業組織の成長を通じて昇進・昇格していくことは、職業生活上実現可能な目標として社員の間で広く共有されました。

 

これが、社員の会社への帰属意識(コミットメント)と仕事への意欲(モチベーション)の喚起に役立ちました。

 

企業の成長と社員個人の経済的・能力的成長とが連動するとの期待から、社員は迷うことなく自分の仕事に多くの力を投入することができたのです。

 

B企業組織内での熟練の形成や技術の蓄積

 

もし雇用が不安定で社員の出入りが激しいと、社員個人が熟練や技術を確立するだけの経験を積むことができず、技術やノウハウの継承も行われません。

 

安定した長期雇用の下でのOJTやジョブ・ローテーションがあってこそ、社内でノウハウの蓄積が行われ、社員個人の中で形成された技術が組織に移転し、蓄積されていきます。

 

勤続年数や年齢が社員個人の熟練度を示す指標となり、これを基準に社員の職位や資格を定めていく年功制は、技術やノウハウの組織的蓄積を促す上でも合理的なものだったのです。

 

年功制の経済的合理性

 

さらに年功制の人事や賃金に関する面に関する経済的合理性について見ていきましょう。

 

人事や賃金に関する面での経済的合理性は以下の3点があります。

 

@独自ノウハウの蓄積と継承

 

A人材育成に対する投資の回収

 

B中堅層が若手と高年層を支える

 

それぞれについて詳細を見ていきましょう。

 

@独自ノウハウの蓄積と継承

 

勤続年数に応じて年々上昇していく年功的賃金体系は、生活給としての意味を持つだけでなく、企業内でのノウハウの蓄積や継承の仕組みとの関連にも合理的な意味を持っています。

 

社員個人の能力については、所属する企業を問わずにどのような企業に勤めても求められる一般的能力と、特定の企業内でのみ通用する企業特殊能力に分けることができます。

 

高度経済成長期までの日本企業においては、企業特殊能力である企業独自のノウハウを習得することが重要視されており、特に製造業の生産現場においては現在よりも各職務の遂行に高度の熟練が求められていました。

 

そのような企業独自のノウハウや豊富な業務経験を持った人材を企業の外部から採用することは容易ではなく、また、個人にとっても業務に必要なノウハウを外部の学校や教育訓練機関に通うこと修得することは容易なことでなありませんでした。

 

そのような状況下では、企業は基幹的業務を担う社員を自社内で育成していく必要があり、企業内研修やOJTを通じて熟練の先輩社員から若手社員へ業務遂行に必要な技術やノウハウの継承が行われてきました。

 

また、社員個人でも基幹的業務を担う人材を目指す社員は、そのような研修やOJTといった企業内教育を通して自身の能力やスキルの向上を図ろうとしてきたのです。

 

A人材育成に対する投資の回収

 

企業が企業内教育を実施するためには、人材育成のために行った教育訓練への投資が十分に回収できるだけの長い期間にわたって社員が安定的に勤務することを通じて、生産性向上という形で企業の業績への貢献を果たすという条件を満たす必要があります。

 

企業はその条件を担保しながら、長期間の雇用関係を通じて貢献と報酬が見合うように賃金を決定することになります。

 

それでは、入社後の時期を追いながら詳しく見ていきましょう。

 

入社後の数年間はまだ一人前の能力を持っていないため、初期投資期間にあたります。

 

この期間には、就業時間内に研修を受けたり、先輩からのOJTを通じて業務遂行に必要なノウハウやテクニックを教えてもらったりするなど、多くの時間を能力開発に費やします。

 

周囲の社員も社内教育のために業務の時間を割かなければならないため、仕事の生産性低下というコストが発生します。

 

教育の対象者本人の業績への貢献がほとんど期待できないにもかかわらず、ある程度の賃金を支払っており、かつコストのかかるこの時期は企業側の持ち出しの多い時期と言えます。

 

そして、研修やOJTといった教育や業務経験を重ねるに従って生産性は急勾配で向上し、賃金も上昇していきますが、生産性の上昇に比べて賃金の上昇幅は小さく、いつしか生産性が賃金を逆転します。

 

中堅社員として働き盛りのこの時期は、生産性よりも賃金を低く抑えることによって、企業
は社員の入社後に実施した教育に対する投資を回収しているということができます。

 

そして社員が中高年の時期になると、賃金と生産性は再度逆転し、賃金が貢献を上回るようになります。

 

この賃金が貢献を上回っている部分で企業は過去の借りを社員に返しているということができます。

 

しかし、社員に対して無限に借りを返し続けていくわけにはいかないため、ある時点で企業は雇用をストップする必要があるのですが、それが定年制になります。

 

B中堅層が若手と高年層を支える

 

このように日本的な年功賃金は、それぞれの時期を切り出してみると必ずしも貢献と報酬が一致してはいませんが、入社後定年までという社員生活全体を通して見てみると帳尻が合うように設定されています。

 

働き盛りの時期に生産性よりも賃金を低く抑えているということは、強制的に社内預金させることによって個人の熟練技術や企業独自のノウハウを持ち出されないようにしているという意味もあります。

 

また、社員が不正や怠慢によって解雇されるような場合があったり、企業が倒産するような場合には、預金を返してもらえなくなってしまうため、後払いにすることで企業と社員との長期的利害の一致を図り、社員の帰属意識を高める仕組みが賃金体系の中に組み込まれていたということができます。

 

このような賃金体系を企業内の人員構成と関係づけて考えると、ある時点での企業の賃金総額をどのように配分しているかを理解することができます。

 

つまり、中堅層の貢献によってもたらされる余剰分を、若年層への先行投資と高年層への後払いに配分するという世代間での所得の再分配を行っていることになります。

 

高度経済成長期においては企業の人口構成上でも中堅層が多く、高年層へ手厚く配分するための原資を十分に稼いでくれる構造になっていました。

 

しかし、高度経済成長期が終わり、人口の高齢化が進展するにつれて賃金の原資を稼ぎだす中堅層が減少し、企業への社内預金分を引き出す高年層が増大すると、上記のような世代間の所得再分配を維持していくことが難しくなります。

 

近年、日本企業の多くが年功賃金を見直す必要性に迫られている背景の一つには、このような人口構造の変化に起因する問題があるのです。

 

日本的経営とは3

 

高度経済成長期においては、規模拡大を目指す経営戦略と整合していた年功制も、オイルショック以降の経済成長の鈍化や人口の高齢化、技術革新といった経営環境の変化に伴って様々な修正が加えられていきました。

 

その修正内容について見ていきましょう。

 

オイルショック以降の年功制の修正

 

修正内容は以下の4点にまとめられます。

 

@能力主義の導入

 

A職能資格制度の導入

 

B複線型人事制度の導入

 

C専門職制度の導入

 

日本的経営とは4

 

それぞれ順に詳細を見ていきましょう。

 

@能力主義の導入

 

1970年代後半以降、市場環境が成熟し企業の成長も頭打ちになってくると、中高年の人材が付くべきポストが不足するようになり、勤続年数に伴う昇進・昇格のスピードは鈍化せざるを得なくなりました。

 

また、日本の人口の高齢化が進み、若年労働力が相対的に減少することにより、ピラミッド型の組織を維持することが難しくなり、加えて技術革新の進展により、若手労働者の方が新技術への適応能力が高いという逆転現象も見られました。

 

このような状況から年齢や勤続年数という年功原理だけで人事制度を維持していくことが難しくなり、年功原理の修正が図られていきました。

 

その代表的な取り組みの一つが能力主義の導入です。

 

能力主義を導入することによって社員間の競争を促し、選別を強化するというものです。

 

ただし、能力主義とはいえ若いうちは差が出ないようにして長期間にわたって全員を切磋琢磨していくことを重視しており、年功的な面も残した能力主義となっていました。

 

A職能資格制度の導入

 

若年社員の高学歴化や技術革新の進展に伴う業務遂行能力の年齢的逆転が起こるようになった結果、職務内容や職務の難易度、職務遂行能力が社員の階層的位置づけに反映されるような人事制度が望まれるようになりました。
そこで職能資格制度が開発され、日本企業に広く普及していきました。

 

職能資格制度とは、従来の資格制度を「職能資格等級」に再編成し、人事システム全体の中心におく制度です。

 

職能資格等級は、企業経営にとって必要な様々な職能を、職掌、職種と習熟度、難易度、責任度などで区分して、それらを資格による名称を付けたものです。

 

日本的経営とは6

 

これらの資格の中から、各社員の職務遂行能力に適した資格を付与し運用するというものです。

 

この職能資格制度は、社員の潜在的能力を反映している点で能力主義が、等級の基準に職務が考慮されていることから職務主義が取り入れられているということができます。

 

これにより、役職ポスト不足や昇進速度の鈍化といった状況に対応することができるようになりました。

 

しかし、その職能資格制度もさらなる経営環境の変化に伴い、限界が指摘されるようになりました。

 

具体的な例としては、職能資格制度の主旨である「能力に基づく処遇」が適正に行われていなかったため、結果的に年功的な運用となってしまった点が挙げられます。

 

また、管理職昇進対象となる資格に達する段階では、過度の昇格が厳しくなるという現象も発生しました。

 

管理職の手前の等級に多くの社員が長期滞留してしまい、社員の士気が低下してしまうという企業も多く見られました。

 

B複線型人事制度の導入

 

高度経済成長期を経て国民の平均的な生活水準が向上する中で、労働者の仕事に対する価値観も変化してきました。

 

かつては生活の糧を得るために「滅私奉公」するという考え方が当たり前でしたが、時代の変化に伴い、仕事を自己実現の手段として位置づけ、必ずしもより高い所得を求めるのではなく、より楽しめる仕事を求める人が増えてきました。

 

また、ある程度の所得が確保できれば、仕事よりも家庭や地域とのつながりを重視したいという価値観に基づいた働き方を志向する人も増えてきました。

 

このような価値観の多様化を受けて、新規学卒者の一括採用の社員を学歴と入社年次をベースに画一的に管理することが困難な状況となり、複線型の人事制度が導入されました。

 

それまでの人事制度では、全員が同じように昇進し、ライン管理職としてより高いポジションに上がっていくというものでした。

 

しかし複線型人事制度では、特定の専門的な仕事で自己充足や自己実現を図りたいと望む社員を専門職として処遇したり、地方への転勤を望まない社員を地域限定社員とするなど、組織内での社員の多元的な管理を可能としています。

 

C専門職制度の導入

 

専門職制度とは、社員のキャリア・パスとしてライン管理職以外の昇進の道を確立し、高度な専門能力を持った人の育成や活用を目的としたものです。

 

専門職制度が導入されるようになった背景には、経済が低成長時代に入って市場が成熟化すると、技術革新や新製品開発、新規事業創出が経営課題として取り上げられるようになったことがあげられます。

 

これらの経営課題に対応することができる高度な専門能力を持った創造的人材への需要が高まっているのです。

 

また、生産技術だけでなく販売や経営管理技術も高度化・専門化が進み、これらに対応できる人材の育成や配置も求められるようになっています。

 

また、人事処遇の面でも、人員構成の高齢化に伴うポスト不足への対応という面もあります。
ただ、ポスト不足への対応のための専門職制度の導入では、単なるポスト水増し的な制度となってしまいます。

 

専門能力の内容や任用ルール、役割や権限が曖昧なまま、本来専門職にふさわしくない人が任用されてしまうことが繰り返されると、専門職に対する否定的なイメージが出来上がってしまう恐れがあります。

 

専門職制度を有効に機能させるためには、専門職の権威と魅力を高めることが重要です。

 

日本的経営とは5

 

高度な専門能力保有者に対する経営上のニーズは高まっているのに対して、日本企業にはこのような人材を活用していくノウハウが十分には蓄積されていません。

 

専門職に相応の権限を与え、その影響力の範囲や役割を正しく理解することによって、またライン管理者やスタッフとの関係をライン管理者を含めた関係者全員が正しく認知することによって、高度な専門能力が組織的に活かされる環境が醸成されるのです。

 

 

以上のように、日本的経営の特徴について年功制を中心に説明してきました。

 

年功制に対する修正のうち、職能資格制度や専門職制度の導入は、結局は従来型制度の修正であり、根本にある年功的要素を残しながら多元的な管理を試みてきたもので、いわばマイナーチェンジによって旧来型制度の延命を図ってきたものであるということができます。

 

しかし、第3次産業革命ともいわれるような現在の経済・社会の構造的変化の時代を迎える中では、単なるマイナーチェンジでは対応しきれないことが予想されます。

 

外部経営環境の大きな変動に対しいかに柔軟に対応できるか、つまり組織の能力をいかに適合させていくことができるかが、今後の企業の命運を左右するということができます。

 

そのような中で、「人」を大事にしつつ市場の変化に柔軟に対応していくことが、今後の人事制度の大きな課題となっています。

 


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