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組織文化を考える その4

【トップマネジメントの役割】
このような良き組織文化を守っていくことは、トップ・マネジメントをはじめとするリーダーたちの重要な役割です。

 

組織文化の維持に力を注いでいる代表的な企業として、GE(ゼネラル・エレクトリック)があります。

 

GEでは常にトップ・マネジメントがGEバリューと呼ばれる価値観を浸透させる機会を持ち、GEバリューがいかに優れているかをメンバーに対して説いています。

 

そして何より、トップ・マネジメントが行動規範となり、全社員の行動モデルとなるように心がけています。

 

そのようにして歴代のトップが良き組織文化を継承してきたことにより、GEという企業はその強さを維持してきたのです。

 

良き組織文化が醸成されている企業組織であれば維持していくことが大切ですが、悪しき組織文化になっている企業組織では、そのような組織文化を追い出したり変革していくことが求められます。

 

組織文化を変えていくことは大変難しいことですが、一定の条件がそろえば十分に可能なものです。

 

その条件とは次のようなものです。

 

 

?属する文化を変えようと先導するメンバーや、文化を強制的に変えようとする外部の人間がいること

 

?別の文化に好ましい感情を抱き、積極的に受容する人間がいること(今の組織文化のままではだめだと危機感を持つ人間がいること)

 

 

企業組織の経営状態が悪化し、外部から新しくトップ・マネジメントを招いた結果、それまでの組織文化から変わってしまうことがあります。

 

家族主義的な経営を行ってきた企業組織が大胆な人員整理によるリストラを行い、成果主義的な評価制度を導入した結果、組織メンバーの目の前にあるのはノルマであり、組織内の雰囲気はぎすぎすしたものとなってしまいます。

 

そのような状態となってしまっては、組織メンバーのモチベーションも低下し、企業組織全体としてのパフォーマンスも悪化してしまいます。

 

このようなケースにおいては、以前の家族主義的な経営に戻すことによって、メンバーは心理的に落ち着きを取り戻し、企業組織として復活することがあります。

 

成果主義的な経営に基づく組織文化よりも家族主義的な経営に基づく組織文化が好ましいとするメンバーが多く存在する場合、トップ・マネジメントが家族主義的な経営に回帰することによって、改めて家族主義的な組織文化が受け入れられるのです。

 

組織文化が揺らいでしまうと組織内に混乱が生じてしまいます。

 

しかし、混乱の中で再び良き組織文化を定着させていくことがトップ・マネジメントにとって重要な仕事なのです。

 

 

【例:トヨタ自動車】
それでは、最後に組織文化の事例を見てみましょう。

 

ここではトヨタ自動車の組織文化について取り上げます。

 

トヨタ自動車の組織文化を表すものとして、「豊田綱領」「トヨタ基本理念」「トヨタウェイ2001」が作成されています。

 

組織文化(トヨタ)

 

これらに記載されている内容をまとめると、トヨタ自動車の組織文化の根底には「車づくりを通じた社会貢献(地域・社会の豊かな生活と発展)」「人間性尊重(お互いの信頼と尊重及び一人一人の成長)」という2つの考えがあると言えます。

 

トヨタ自動車の組織文化の基盤となる「社会貢献のための付加価値の創造」は人の手によるモノづくりを通じて行われます。

 

そのモノづくりのための方法や機会を作り出していくのは、人の研究と創造や知恵と工夫にあると考えられています。

 

どんなに立派な建物や設備があり、充分な材料がそろっていたとしても、人がそれらを使いこなしてより良い製品を作ることができなければ意味がないのです。

 

このように付加価値を想像し高めていくのは人の働きによるものです。

 

また人はこうした付加価値の創造による社会貢献のプロセスを行うことによって、自分の能力を高めて成長するとともに、生きがいや喜びを高め豊かな生活を獲得することにつながります。

 

「人づくり」こそが企業の競争力そのものであり、それを継続的に高めることが企業の成長となり社会の発展につながると考えられているのです。

 

そのため、原則的にいったん採用した社員は定年になるまでの雇用が維持されるため、社員は失業の不安から解放されて、会社への強い信頼感と長期的視野の下にほかのメンバーとともに腰を据えて仕事に取り組むことができるのです。

 

このようなトヨタの組織文化は、GMとの合弁でアメリカに作られたNUMMIの工場でも受け入れられることになりました。

 

現場のアメリカ人社員もトヨタ生産方式を学び、それを実践していったことにより、日本の工場と変わらない生産性を実現することができ、「NUMMIの奇跡」と呼ばれています。

 

アメリカでの生産現場では、マニュアル通りの作業が求められ、それができない人材であれば代替はいくらでもいるといった考え方が通常でした。

 

それに対して、トヨタでは生産現場の人間も一人の人間であり、かけがえのない存在であると考えられ、熱心な社員教育が行われます。

 

そしてトヨタの長期雇用の維持の原則は、不安定な雇用の下で働いてきた工場作業員たちにとって大変な朗報であり、会社に対する深い信頼感の基礎となりました。

 

その結果として、アメリカ人作業員たちも熱心に仕事に取組み、生産性を向上させることに成功したのです。

 

しかし、このトヨタの組織文化は合弁先であるGM本体には受け入れられませんでした。

 

アメリカでは、生産現場のブルーカラーの工場作業員と、本社で働くホワイトカラーの従業員の間では、仕事のしかたや処遇内容で明確な格差があり、ホワイトカラーの従業員は優遇されていました。

 

そのため、トヨタの組織文化にある人間性尊重による平等主義を受け入れることができなかったのです。

 

その後、GM本体は経営不振となり、経営破綻に至ったのは皮肉なものと言えるでしょう。

 

 

以上、組織文化について見てきました。

 

組織文化は創業者の意志や想いをベースとしてスタートし、トップ・マネジメントの行動や採用・評価といった社内制度などによって強化され、組織メンバー内での共通の価値観や判断基準となっていきます。

 

良き組織文化として組織メンバーへ浸透すれば、企業組織を良い方向へ導くことが可能となりますが、環境の変化に適応できずに悪しき文化となってしまい、企業の存亡を危うくしてしまうこともあり得ます。

 

そのような観点から、現在所属している組織内で共有されている価値観とはどのようなものか、その価値観がメンバーに対してどのような影響を与えているかを一度見直してみるのもよいでしょう。

 

 

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