聴き手を導く①(何を伝えるか)
今回は「プレゼンテーションの聴き手に何を伝えるか」について説明していきます。
この文章を読むことで、プレゼンテーション聴き手の不安や疑問を明確化し、それを解消する方法について学ぶことができます。
聴き手の不安や疑問を明確化する
良いプレゼンをするには、「目的を明確」にして、「聴き手の事を知り」、「聴き手の行動を促す」ようなプレゼンにする必要があります。
プレゼンを聴いても聴き手が何も行動に移さないような内容では、良いプレゼンとは言えません。プレゼンにより聴き手を行動させなければいけないのです。
そのためには、聴き手に「何を伝えるか?」がポイントになります。
「伝える」には、プレゼンをする相手の事を理解する必要があります。自分の主張だけをプレゼンをしても、相手に共感されなければ相手は行動をしないのです。
では、聴き手に共感されるプレゼンとはどんなものなのでしょうか?
前回までで、「聴き手の現状」と「聴き手の目的(なりたい将来像)」は明確に出来ています。そこで、「現状と将来像とのギャップを埋める提案」がプレゼンとなります。
しかし、そのプレゼンを聴く際も、聴き手は以下の点について不安や疑問に思っているものです。
1.現状と将来像のギャップが正しいか?
2.ギャップを埋めるプレゼン内容なのか?
3.それをプレゼンする人を信頼できるのか?
4.自分が実際に行動に移せるのか?
それらの不安、疑問を一つ一つクリアしてあげることによって、良いプレゼン(聴き手が行動できる)になるのです。
では、聴き手はどんな事を不安や疑問に思っているのでしょうか?それは前回の「相手の事を理解する」が大切になってきます。
相手の事を理解したら、相手がどのようなことに不安や疑問を持っているのかが分かってきます。
さらに、それをクリアするためには、漠然とした不安や疑問を具体的にしていく必要があります。具体的にしていくためには、次のようなことを明確にしていくほうが良いのです。
1.メリット、デメリットをはっきりさせる
2.時間の流れの中での思考の変化をはっきりさせる
3.全体と個々のバランスをはっきりさせる
それぞれ細かく見ていきましょう。
1.メリット、デメリットをはっきりさせる
プレゼンの聴き手は漠然とメリット・デメリットを感じ、判断しています。
よって、それらをはっきりと明確にすると、プレゼンの中に織り込むことが出来るようになります。
それによって、不安や疑問の解消につながっていきます。
2.時間の流れの中で思考の変化をはっきりさせる
不安や疑問が「過去の出来事」に原因があるのか、「現状の状態」に原因があるのか、または「将来への漠然とした不安」に原因があるのかをはっきりさせることによって、それに答えるプレゼンにすることが出来ます。
そのために、時間の流れとそのときの思考をはっきりさせます。
3.全体と個々のバランスをはっきりさせる
「総論賛成、各論反対」という言葉があるように、「プレゼン内容については理解でき、世間一般的にはやるべきだ」と賛成だけど、「自分の業務では嫌だな」という場合もあります。
逆に、「個人的には良いと思うけど、業界全体では反発が大きいのでダメ」と言う場合もあります。
このように、全体と個々のバランスの中で不安や疑問がどこにあるのかを考えていくと、それらを解消できるプレゼンになっていきます。
以上のように、プレゼンの聴き手が不安や疑問に思っているであろうことを想定していきます。
しかし、それら全部に答えていてはプレゼンの時間がいくらあっても足りません。基本的にプレゼンの時間は限られているので、不安や疑問に答えていくにも取捨選択をすることになります。
つまり、どの不安や疑問が強いのか(優先順位が高いのか)を見極めて、プレゼンを作成していくことになります。
そのためには、やはり前回の「プレゼン相手の事を理解する」ということが大切になるのです。
聴き手の不安や疑問を解消する
聴き手の不安や疑問がはっきりしたら、それに答えていく内容を検討していきます。
これまでの流れで不安や疑問ははっきりしており、優先順位の高いものが分かっていますので、それに適切に答えていくことになります。
不安や疑問に適切に答えていくためには、次の事を意識していきましょう。
1.難しい言葉は使わない
2.思考面と感情面の両方に答える
3.曖昧な表現は使わない
それぞれ具体的に見ていきます。
1.難しい言葉は使わない
難しい言葉を使うとその言葉自体に疑問が生まれます。
不安や疑問の解消をしていく流れの中で、別の新たな疑問が浮かんでしまっては、聴き手を導くプレゼンにはなりにくいのです。
難しい言葉というのは、難易度が高い言葉と言うだけでなく、聴き手の馴染みのない言葉や専門用語も難しい言葉となります。
つまり、「この言葉はどのような意味だろう」と思われてしまうような言葉は避けるべきです。
2.思考面と感情面、両方に答える
不安や疑問にも感情面と思考面があります。
よって、不安や疑問の解消をプレゼンする時にも、補足資料などを付けてロジカル(論理的)に説明すると同時に、感情面の不安や疑問にも答えるような表現を入れることによって共感されやすくなります。
3.曖昧な表現は使わない
不安や疑問をはっきりさせていますので、それらの解消方法も具体的に示した方が良いのです。
ケースによっては曖昧にしなければいけない場面も出てくるかもしれませんが、通常は曖昧な表現を避け、具体的に解消方法をプレゼンしていくべきです。
<事例>
新入社員のAさんは、自分の会社に社員旅行がないことに疑問を持ち、「役員会の社員旅行を開催して欲しい」という提案のためのプレゼンを行うことになりました。
Aさんの主張は「社員旅行は社内のコミュニケーションを活発にして業務にも良い影響がある」というものでした。
しかし、役員会での反応はあまり芳しくないものでした。実は、十数年前までは社員旅行が行われていたのですが、そのときに社員の一部が問題行動を起こし、それ以来廃止になっていたからです。
若い社員が多く、その当時のことを知る人は少ないのですが、役員の面々は十数年前の出来事を覚えており、「確かにコミュニケーションを図るという目的は良いが、実際に復活させる名目としては弱い」と考えていたのです。
つまり、Aさんが「プレゼンの聴き手(役員)の人が不安や疑問に思うこと」を調査しておらず、自らの主張だけを全面に押し出したので良いプレゼンにはならなかったのです。
Aさんが事前に調査し、相手が「時間の流れ」や「全体と個々のバランス」の中で考えていることに答えるようなプレゼンになっていれば、採用された可能性はあるでしょう。
このように、Aさんは社内のことを知っているようで知らなかったのです。
そして、「相手の事を理解するということは、深い部分まで調査する必要があり、その中で起きる不安や疑問に答えていくことだ」とAさんは気付くことが出来たのです。
まとめ
・プレゼンを聴いても、聴き手が行動に移さないような内容では良いプレゼンとは言えない。
・聴き手の漠然とした不安や疑問を具体的にしていく必要がある。
・不安や疑問を具体的にしていくには、次のようなことを明確にしていく。
1.メリット、デメリットをはっきりさせる
2.時間の流れの中での思考の変化をはっきりさせる
3.全体と個々のバランスをはっきりさせる
・聴き手の不安や疑問に適切に答えていくためには、次の事を意識する。
1.難しい言葉は使わない
2.思考面と感情面、両方に答える
3.曖昧な表現は使わない
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