事業戦略(基本戦略)と機能別戦略(個別戦略)
今回は事業戦略(基本戦略)と機能別戦略(個別戦略)について説明していきます。
今回の文章で戦略の階層構造、戦略の枠組みについて理解することが出来ます。
戦略の階層構造
企業が掲げる「経営戦略」は階層構造となっており、主に「全社戦略」、「事業戦略」、「機能別戦略」で構成されています。
企業の多くは複数の事業体で経営活動を行っていることが多く、こうした複数事業を対象として企業としての方向性や経営資源の分配を決定するのが全社戦略となっています。
そして、企業が競争環境の中で、競合企業よりも自社の製品・サービスの方が優れているということを顧客にアピールするための戦略を「事業戦略」と呼びます。
一般的に顧客に対して直接的にアピールすることが多いのは、事業部レベルになります。
一方で、例外として企業ブランドによる顧客へのアピールは全社レベルで行うべきもので、全社戦略の中で検討されるべき内容となります。
1つの事業を運営するためには、研究、技術開発、調達、生産、営業(販売)、マーケティングなどの機能が必要となります。
このような機能別に考えられる戦略を「機能別戦略」と呼ばれ、商品やサービスのターゲッティングや販売方法を対象とした「マーケティング戦略」、人・モノの調達方法を対象とした「調達戦略」、生産場所の振り分けなどを対象とした「生産戦略」などがあります。
戦略立案は資源配分を特定すること
戦略とは全社レベルであれ、事業部レベルであれ、経営資源の配分にあると言えます。
よく戦略と対比で使われる単語して「戦術」があります。
戦術とは、戦略によって配分された経営資源を運用していくことを意味します。
つまり、戦術は戦略によって配分された資源をいかに効果的に活用・運用していくかにあると言えます。
全社戦略では、本社部門(経営企画部など)が経営資源をどの事業体にどのような割合で配分するかを全体最適の視点で立案します。
これに対して事業戦略は、各事業部門が配分された経営資源をもとに個別事業体として最大限成長・改善させるための施策は何かを個別最適の視点で立案します。
<全社戦略の例>
X社はA事業とB事業を経営しています。今年度の投資予算は200億円となっています。
A事業部は非常に好調な事業部であり、100億円の投資に対して20億円の利益を見込むことができます。
一方、B事業部は衰退事業であり、100億円の投資に対して5億円の利益しか見込めません。
この場合、B事業を撤退し、予算200億円を全てA事業に投資すれば、40億円の利益が上がる可能性があります。
しかし、事業の撤退などは数字だけで単純に決定できるものではありません。
このような状況下において、予算の200億円をどのように配分するかを考えていくことが全社戦略となります。
戦略を運営するためには優れた仕組みが必要
戦略とは配分された経営資源を戦術によって活用・運用されてはじめて意味のあるものとなります。
整合性が取れて立派な戦略であったとしても、後になって機能しなかった戦略というのは多く見られます。
では、機能しない戦略となってしまう理由はどこにあるのでしょうか。
これは大きく2つあり、1つは「現実味のない戦略をつくってしまった」場合であり、2つ目は「戦略を実行する仕組みを持ち合わせていない」ことです。
戦略を有効活用するためには、「経営管理」と「組織」の仕組みが必要となります。
経営管理とは、資源を活用することのマネジメントを意味し、PDCA(Plan、Do、Check、Action)というサイクルを回していくことにあります。
Planでは戦略を動かすための日々の取り組み内容をリスト化し、日々の活動実績をチェックし、次のActionを検討しています。
そして、組織には戦略を実行する人やお金、モノ(設備など)を準備することが大切となります。
まとめ
事業戦略と機能別戦略の関係をまとめると、複数事業を推進している企業にとって、全社としての方向性を示した企業戦略があり、それを受けて事業分野ごとの”事業戦略”が策定されます。
そして、それぞれの事業戦略を各部署(各機能)に落とし込んだ戦略が機能別戦略となります。
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