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弱者のプライシング手法 〜マーケティングを意識した価格戦略〜

弱者のプライシング手法 〜マーケティングを意識した価格戦略〜

世の中の全ての商品やサービスには、当然ながら値段がついています。私たちは買い物をする際に、当たり前のようにその価格を目にしているはずです。しかし、商品の価格がどのような根拠で設定されているのか考えることはほとんどありません。ある価格が高いと感じたり、安いと感じたりするのはなぜでしょうか。

 

実は、価格というのは、ビジネスにおいて大変重要な要素です。価格の違いが、収益を左右することがあります。

 

そのため、一部の優秀な企業では、利益を最大化するために、価格について入念に検討しています。しかし、多くの平凡な企業では、従来の慣習に従って、感覚で値付けされていることが多いのです。

 

ここでは、中小企業や個人事業主などの弱者が、利益を最大化するためのプライシング手法を解説していきます。

 

価格戦略の重要性を理解する

 

ビジネスには価格戦略が必要です。なぜなら、価格が価値と利益の両方に影響を及ぼすからです。価格戦略の重要性を理解するためには、以下の2つの事実を認識しなければなりません。

 

1. 価格には価値表示機能がある
2. 価格が利益を左右する

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

価格には価値表示機能がある

 

まず、価格の価値表示機能について考えてみましょう。例えば、あなたが果物屋だとします。今日は新鮮なメロンを仕入れたので、店頭の一番目立つ場所に陳列しました。そして、値札に価格を書き込もうとしています。

 

このとき、メロン1個の値段をいくらにするべきでしょうか。例えば、メロン1個の価格を1,000円にしたとします。すると、このメロンを購入したお客は、メロンには1,000円分の価値(安物もしくは普通の価値)があると認識するでしょう。

 

一方、メロン1個の価格を10,000円にしたとします。すると、このメロンを購入したお客は、メロンには10,000円分の価値(高級な価値)があると認識するでしょう。

 

同じ産地の同品種のメロンであっても、価格によって買い手の感じ取る価値は変わってきます。このことからわかるように、価格には商品の価値表示機能があるのです。

 

つまり、値段の安い商品は価値が低いと表示していることになり、反対に、値段の高い商品は価値が高いと表示していることになります。

 

実際に、世の中には「安かろう悪かろう」という言葉がありすが、これは値段の安いものは品質もそれ相応で、良いものはないという意味です。実際多くの人が、値段でモノの価値を計っています。

 

もちろん、品質の良いものを安く販売いている企業があるのも事実です。特に日本人はまじめなので、良いものをより安く提供しようと考えます。しかし、世間では、価格によって価値を認識する人が多いということをしっかり認識する必要があるでしょう。

 

自信のある商品には、それ相応の価値を感じてもらう必要があります。商品やサービスの価値を低く捉えられるということは、企業にとって大きな損失です。そのため、自社商品の価値を正しく伝えるための価格戦略を練ることが重要となります。

 

価格が利益を左右する

 

価格が利益に影響を与えることは、感覚的に理解できるかと思います。一般に、価格が安ければ多く売れますし、高ければ少ししか売れません。しかし、販売数量が多ければ、利益が大きくなるとは限りません。

 

例えば、メロンを2種類仕入れ、それぞれ別の値段を付けて販売するとします。メロンAの仕入れ価格は1個あたり300円、メロンBは高級品で仕入れ価格が1個あたり1,000円です。そして、メロンAの販売価格を1,000円、メロンBの販売価格を10,000円に設定したとしましょう。

 

このとき、メロンAを1個販売するごとに700円の粗利、メロンBを1個販売するごとに9,000円の粗利が得られます。

 

メロンA:1,000−300=700
メロンB:10,000−1,000=9,000

 

この場合、おそらく値段の安いメロンAの方が多く売れ、メロンBの販売数量は少ないでしょう。しかし、メロンAが多く売れたからといって、利益は増えるのでしょうか。

 

メロンBが1個売れれば、9,000円の粗利が得られます。9,000円の粗利を得ようと思ったら、メロンAを13個販売しなければなりません。つまり、メロンAを12個販売するより、メロンBを1個販売する方が利益が大きくなるのです。

 

このように考えると、メロンBだけ販売した方がいいように思えてきますが、メロンBは高額なので、1個も売れないという可能性もあります。1つも売れなければ、メロンAを12個売った方が得です。

 

そのため、利益を最大化するような最適な価格を探る必要があります。利益最大化のためにも、価格戦略を持つことは重要なのです。

 

従来の価格設定方法

 

それでは、多くの企業では従来どのように値決めがされてきたのでしょうか。企業によって用いられる価格設定の手法は異なると思いますが、戦略のない企業では、大きく分けて以下の3つの要素に従って価格が設定されてきたと考えられます。

 

1. 思いつき
2. 競合価格や業界の常識
3. コストプラス方式

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

思いつきの価格設定

 

大きな企業では、思いつきでの値決めはめったにありませんが、個人事業主や小規模事業者ではよくあります。なんとなく感覚で価格を設定してしまうのです。特にフリーランスのサービス業者などは、価格設定の基準がないので、顧客の言い値で販売してしまうこともあります。

 

思いつきの価格設定では、正しく価値を表示することも、利益を最大化することもできません。

 

業界の常識や競合価格に従った価格設定

 

これもよくある値決めの手法でしょう。業界的にだいたいこの程度の価格だから、自社もそれに合わせようといった価格設定です。他にも、「競合他社が1,000円だから、うちは50円安い950円にしよう」というように、競合価格より少し安い値段にするといった企業も多いでしょう。

 

業界の常識や競合価格に従った値決めでは、差別化を図ることができません。顧客から見ても、他のお店と一緒だと思われてしまいます。つまり、何の優位性も得ることができないのです。

 

コストプラス方式に従った価格設定

 

コストプラス方式は多くの企業で用いられているプライシング手法です。まず商品1個当たりのコストを割り出し、そこに得たい利益を上乗せするという価格設定方法を用います。

 

コスト+利益=販売価格

 

例えば、メロン1個にかかるコスト(仕入れ値+営業や管理にかかるコスト)が500円だとしましょう。このとき、1個当たり1,000円の粗利がほしいと考えた場合は、販売価格を1,500円に設定することになります。

 

しかし、この手法の欠点は、商品にかかるコストは顧客には見えないですし、購買意思決定に影響を与えないということでしょう。つまり、コストなんて顧客には関係ないということです。

 

顧客はメロンに1,500円の価値があると思えば買いますし、その価値がないと思えば買いません。購買の際に、「このメロンは1個当たりのコストが500円だから、1,500円の売価だと、1,000円も利益を抜かれてるので高すぎるな」などとは考えないのです。

 

つまり、コストプラス方式は「顧客が感じる価値」というものを無視した、独りよがりな価格設定手法といえます。

 

顧客視点で考えるバリュー・プライシング

 

ここまで、従来の価格設定手法を見てきましたが、どれも大事な視点を忘れています。それは「顧客視点」です。「業界の平均がいくらだから」「コストがいくらかかったから」というのは、顧客視点ではありません。これらは販売者側の視点です。

 

商品を購入するのは顧客なのですから、顧客がどの程度の価値を感じているかということが最も重要な要素となります。そこで、今後検討するべき価格設定手法は、顧客視点で考えた「バリュー・プライシング」です。

 

バリュー・プライシングとは、顧客が感じる価値を基準に、価格を決める手法です。この手法では、コストから考えるのではなく、販売価格から考えるという特長があります。

 

まず、顧客の価値観や支払い能力、感情を考え、この程度なら購入してくれるだろうという価格を設定するのです。そこからコストを引いた分が利益となります。

 

販売価格−コスト=利益

 

反対に、販売価格から利益を差し引いた価格がコストだとも言い換えられます。

 

販売価格−利益=コスト

 

この手法では、最初に製品コストや競合価格などは考慮されません。顧客の感じる価値(顧客視点)からスタートしています。バリュー・プライシングのメリットは、顧客の感じる価値を高めることができれば、その分利益を最大化できるということです。

 

例えば、コストが500円のメロンであっても、「高くても美味しいメロンが食べたい」「贈答用だから安物はダメだ」と考える顧客であれば、5,000円で購入してもらえる可能性もあります。反対に、安すぎる価格では価値を疑われて売れなくなるということもありえるでしょう。

 

つまり、正しいプライシングとは、顧客の価値を基準にした値決めなのです。顧客に高い価値を認識してもらえれば、高い価格で販売できます。しかし、低品質な商品を高額で販売することは倫理に反しますので行ってはなりません。高く販売するためには、商品そのものの価値を高めることが重要です。

 

現在では、インターネット上でスプリットテスト(ABテスト)というもので、簡単に価格テストを行うことができます。ぜひ、価格テストを行って、顧客の感じる本来の価値を確かめてみましょう。

 

値下げは利益を最大化するか

 

価格戦略において、最も簡単に思いつくものに「値下げ」があります。値下げをすれば売上が上がると思っている経営者は意外と多いものです。確かに値下げをすることで売上が上がることはあるかもしれませんが、利益が増えるとは限りません。

 

値下げによって利益が最大化するのか、また、どのようにすれば値下げが成功するのかを考えてみましょう。

 

値下げによって得られる利益の計算の仕方

 

まず、単純な利益の計算として以下の方程式が成り立ちます。

 

売上−費用=利益

 

しかし、この方程式では大雑把すぎます。値下げを検討する際は、費用をもう少し細かく見なくてはなりません。費用は大きく変動費と固定費に分けられます。

 

変動費とは、売上に比例して増減する費用です。例えば、原材料費や仕入れ原価などが変動費にあたります。

 

固定費とは、売上に関わらず一定にかかる費用のことです。例えば、人件費や事務所の賃借料などが固定費です。

 

そこで、利益計算の方程式を以下のように変形させます。

 

売上−(変動費+固定費)=利益

 

しかし、これでも値引きを考える際の利益計算の方程式としては不十分です。果物屋の例で考えてみましょう。ここでは理解しやすいように、メロンしか扱っていないと仮定します。

 

この果物屋では、メロンの仕入れ値が300円、販売価格が1,000円、店舗の家賃や光熱費、人件費などを合わせて年間400万円かかるとしましょう。この場合、変動費と固定費は以下のようにります。

 

変動費:1個当たり300円
固定費:400万円

 

このとき、メロンを何個販売すれば利益が出るでしょうか。考え方としては、固定費をメロン1個当たりの粗利で割ればよいのです。メロン1個あたりの粗利は以下のようになります。

 

メロン1個当たりの粗利=売価1,000円−仕入れ値(変動費)300円=700円

 

そして、利益を得られる最低限の販売数量は以下のような計算で求められます。

 

固定費400万円÷1個当たりの粗利700円=約5,715個

 

この場合、メロンを年間5,715個以上販売したときに利益が出るということになります。メロンが5,715個売れれば、粗利は約400万円です。つまり、粗利から固定費を引くと利益(営業利益)が求められます。そこで、利益計算の方程式を理解しやすいように以下のように変形させます。

 

(売上−変動費)−固定費=利益

 

例えば、メロンが1万個売れた場合を上記の方程式に当てはめると以下のようになります。

 

売上:1,000円×1万個=1,000万円
変動費:300円×1万個=300万円
固定費:400万円

 

(1,000万−300万)−400万=利益300万円

 

このときの(売上−変動費)の部分のことを限界利益といいます。限界利益は売上から変動費を引いた際に得られる利益のことです。そこで、利益計算の方程式を以下のように変形させます。

 

限界利益−固定費=利益

 

つまり、利益を得るためには、限界利益が固定費を上回る必要があるのです。これで、ようやく値下げを検討する際のツールを手に入れることができました。

 

つまり、利益を最大化するためには、限界利益を最大化すればよいのです。そして、値下げを成功させるには、値下げ後の限界利益が値下げ前の限界利益を上回わればよいのです。

 

販売数量の増加が値下げ成功の鍵

 

当然ですが、値下げ後の限界利益が値下げ前の限界利益を上回るためには、販売数量が劇的に増える必要があります。なぜなら、値下げ後も販売数量が変わらなければ、値下げした分利益が減るからです。

 

例えば、1,000円で1万個売れていたメロンを700円に値下げしたとします。その場合、利益を増やすためには、どれだけ販売数量を伸ばせばよいのでしょうか。

 

計算方法は簡単です。値下げ前の限界利益を値下げ後の1個当たりの粗利で割ればよいのです。値下げ前の限界利益は700万円(売上1,000万−変動費300万)でした。値下げ後の1個当たりの粗利は400円(700円−300円)です。そのため、以下の計算式で求められます。

 

700万円÷400円=17,500個

 

つまり、この場合300円の値下げ(30%の値下げ)を成功させるためには、販売数量を7,500個(75%)増やさなければなりません。

 

ここからわかることは、値下げ戦略を成功させるためには販売数量を劇的に増やす必要があり、大変ハードルが高いということです。また、自社のみ値下げをするのであればまだ良いのですが、競合他社が追随する可能性が高いのでしょう。そうなれば、目標値まで販売数量が伸びるのか疑問です。

 

それに、販売数量が増えるということは、単純に労働量が増えます。忙しさのあまり、自らのキャパシティをオーバーしてしまうことも考えられるでしょう。

 

このように、利益の計算式を使って計算すれば、安易に値下げはできないということが理解できると思います。

 

弱者は値下げをしてはならない

 

しかし、実際にビジネスを動かしてみると、競合他社の価格が気になってしまうことも理解できます。

 

競合が価格を下げた場合に、顧客を奪われないため、追随して値下げを行ってしまうということはよくあることでしょう。しかし、値下げ競争の行く先は泥沼です。お互いの利益を減らす消耗戦に突入します。

 

そのため、できる限り値下げ競争は避けなければなりません。特に、中小企業や個人事業主などの弱者は絶対に値下げを行ってはいけません。

 

なぜなら、値下げをしたからといって利益が増えるわけではないですし、値下げをして得をするのはマーケットリーダーの企業だけだからです。

 

値下げで得をするのはマーケットリーダーだけ

 

マーケットリーダーとは、マーケットシェアNo.1の企業のことです。

 

例えば、世の中に果物屋が5社しかないと仮定しましょう。そして、5社の市場占有率(マーケットシェア)は以下のようになっています。

 

A社:20%
B社:10%
C社:50%
D社:5%
E社:15%

 

このとき、50%のシェアを有しているC社がマーケットリーダーです。もしこの果物マーケットで値下げを行った場合に、値下げ競争に勝利するのはC社だけでしょう。

 

例えば、300円で仕入れられるメロンが平均価格1,000円で販売されているとします。そして、売上拡大を図ろうとB社がメロンの価格を700円に値下げしました。すると、他の4社も追随して700円に値下げするでしょう。

 

このとき、値下げによって市場全体の販売数量が50%拡大した(メロン全体の購入量が50%増えた)とします。しかし、シェアは大きく変わらないでしょう。なぜなら5社とも同じように値下げを行っているからです。

 

仮にB社の元々の1年間の販売数量が1万個であった場合は、単純計算で1万5千個に増えたということになります。この場合、売上は増えますが、値下げしたことにより粗利が700円から400円に減っているので、利益は減少します。

 

【B社値下げ前】
売上:1,000円×10,000個=10,000,000円
粗利: 700円×10,000個= 7,000,000円

 

【B社値下げ後】
売上:700円×15,000個=10,500,000円
粗利:400円×15,000個= 6,000,000円

 

ここからわかるように、値下げをして売上が増えても利益が増えるとは限らないのです。

 

また、B社は値下げをしたことにより粗利を600万円に減らしてしまいました。しかし、ここから店舗の家賃や従業員の給料などの固定費を払わなければなりません。仮に年間の固定費が400万円だとした場合、年間の営業利益は200万円しか残りません。値下げをする前であれば300万円の営業利益があったので大打撃です。

 

【B社の値引き前営業利益】
粗利700万円−固定費400万円=営業利益300万円

 

【B社の値引き後営業利益】
粗利600万円−固定費400万円=営業利益200万円

 

しかし、マーケットリーダーであるC社の場合はどうでしょうか。C社はB社の5倍のシェアがあるので、単純計算で年間の粗利は30,000,000万円となります。

 

ここから固定費を差し引きますが、固定費もB社の5倍だと仮定しましょう。通常は固定費はもっと少なくなりますが、わかりやすいように簡易化します。B社の固定費が400万円なので、C社は5倍の2,000万円となります。すると、営業利益は1,000万円残ります。

 

【C社の値引き前営業利益】
粗利3,500万円−固定費2,000万円=営業利益1,500万円

 

【C社の値引き後営業利益】
粗利3,000万円−固定費2,000万円=営業利益1,000万円

 

このように、マーケットリーダーであるC社は、シェアが高い分、値下げ競争による損害が相対的に低くなります。しかし、シェアの低いB社は相対的に損害が大きいのです。

 

この後、もしC社があと100円値引きしたとしても、C社は十分営業利益を残すことができますが、B社は経営が困難になるでしょう。例えば、再度100円の値引きによって、さらに市場全体の販売数量が20%増加したとします。

 

この場合にマーケットリーダーであるC社は営業利益を700万円程度確保できますが、B社は140万円程度しか営業利益が出ません。年間で140万円の利益では、経営を続けていくことは不可能でしょう。

 

このように、値下げ競争ではシェアの高い企業が有利であり、最終的にはマーケットリーダーしか勝ち残れないようになっているのです。そのため、マーケットリーダーが競合他社を排除しようと戦略的に値下げを行うメリットはありますが、それ以外の弱者から値下げ競争を仕掛けるメリットはありません。

 

弱者は高価格で勝負するべき

 

ここまでで、中小企業や個人事業主などの弱者が値下げを行ってはならない理由が理解できたかと思います。それでは、弱者はどのような価格帯に設定するのがよいのでしょうか。

 

その答えは、「弱者こそ高価格帯で勝負するべきである」ということです。

 

弱者が低価格帯で勝負を挑もうとすれば、いずれ値下げ競争に巻き込まれるでしょう。値下げ競争になったら、まず勝ち目はありません。また、中間の価格帯では、ありふれていて競合他社と差別化が図れません。

 

しかし、高価格帯であれば、多くのメリットを享受できます。高価格帯で勝負をすることにより得られるメリットは大きく以下のようなものがあります。

 

・販売数量が少なくても利益を確保できる
・他社と差別化できる
・質の良い顧客と付き合える
・相対的に労働量が減る
・ブランディングできる

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

販売数量が少なくても利益を確保できる

 

高価格帯の商品やサービスというのは、低価格帯のものに比べ販売数量が少なくなります。一般に、価格と販売数量はトレードオフの関係にあるからです。

 

しかし、販売数量が少ないからといって利益が小さくなるわけではありません。高価格帯の商品やサービスであれば、その分粗利が大きくなりますので、最終的な利益も十分確保できるようになります。

 

例えば、A店とB店の2つの飲食店があるとします。庶民的なA店は1,000円のランチを提供しており、高級店のB店は10,000円のランチを提供しているとしましょう。両店ともランチ1食あたりの原価は3割だとします。

 

この場合、A店がランチ1食売るごとに得られる粗利は700円です。1日に30食売上れば、21,000円の粗利が得られます。

 

B店の場合はどうでしょうか。B店は1食売るごとに7,000円の粗利が得られます。そのため、21,000円の粗利を得ようと思えば、3食売ればよいのです。

 

つまり、A店の10倍の価格で勝負をしているB店は、A店と比べて1/10の販売数量で同じ利益を確保できるということです。

 

このように、高価格帯の商品は、販売数量が少なくても十分な利益が確保できるというメリットがあります。実際に、10,000円の高級ランチを提供しているお店があるのです。高くてもその分美味しいので、お客の満足度はとても高いようです。

 

他社と差別化できる

 

弱者にとって、マーケティング上もっとも重要なことは「差別化」です。差別化こそ競争力の源泉であると考えます。USP(Unique Selling Proposition)といって、他社にはない自社独自の売りを打ち出すことが大切なのです。

 

価格戦略においても同じで、差別化された独自の価格帯で勝負する方が有利になります。そして、競合他社と差別化を図るのであれば、高価格帯にすべきです。顧客は高い商品でも、それ相応の価値があると判断すれば購入します。

 

先ほど、価格には価値表示機能があると述べました。そこで、価格によって自社の商品やサービスが「高品質」であるということを示します。「価格が高いのは、高い価値があるからですよ」ということをアピールするのです。

 

中間価格では差別化は図れませんし、安さで差別化を図ろうとすれば、いずれ値下げ競争に巻き込まれてしまいます。弱者が価格で差別化を図ろうと考えるなら、高価格帯にするべきなのです。

 

質の良い顧客と付き合える

 

高価格帯の商品やサービスを扱っていれば、顧客も自然と富裕層を相手にするようになってきます。一般に、高いものを買うのは、お金に余裕のある人だからです。

 

富裕層は、相対的に質の高い顧客層です。質の高い顧客というのは、商品やサービスの品質をしっかりと理解してくれて、相応の対価を払ってくれる顧客です。また、このような顧客は、少しのことですぐにクレームをつけたりしません。

 

反対に、安い価格帯の商品を購入する顧客層というのは、品質よりも安さを求める傾向にあります。つまり、商品やサービスの品質にはあまりこだわらないのです。それよりも、いかに安く買えるかということに焦点を当てています。

 

そのため、値引き交渉を持ちかけてくるのはこの顧客層が多いのです。また、この顧客層にはなぜかクレーマーが多い傾向にあります。

 

例えば、10,000円のランチを注文するお客は、食材や料理にしかっり敬意を払っている人が多いでしょう。お店の中で騒いだりというようなマナー違反をする人も少ないはずです。また、お店を気に入ってくれれば、同じ価値観の人を連れてきてくれることも多いものです。

 

このように、高価格帯で勝負するメリットの一つに、しっかり商品やサービスの価値を理解してくれる、質の高い顧客層と付き合えるということが挙げられます。

 

相対的に労働量が減る

 

高価格帯商品を扱っていれば、相対的に労働量は少なくて済みます。これは、先ほどの1,000円のランチを扱っているA店と10,000円のランチを扱っているB店の例で考えればわかりやすいでしょう。

 

A店がB店と同じだけの利益を得ようと考えた場合、B店の10倍ランチを売らなければなりません。すると単純に、料理や食器洗い、注文をとる手間なども10倍かかるということです。反対にB店は単純に考えれば1/10の手間で済みます。

 

そのように考えると、A店は従業員を雇う必要があるかもしれませんが、B店は一人でもやっていけそうです。このように、高価格帯で勝負をすれば、相対的に労働量が減るというメリットもあります。

 

「貧乏暇なし」という言葉がありますが、「安いは暇なし」とも言えるかもしれません。

 

ブランディングできる

 

価格には価値表示機能があります。つまり、「高い」ということは「高品質」であるということを示しているのです。ブランド品が高いのは、品質が高いと集団認識されているからでしょう。

 

つまり、高価格帯の商品やサービスというのは、しっかり価値を認識してもらい信頼を勝ち取ることができれば、ブランディングができるということです。もちろん、品質そのものを高めることが重要なのは言うまでもありませんが、品質が高くても価格が低ければブランディングは難しくなります。

 

例えば、あなたが恋人に誕生日プレゼントを買おうと思い、ジュエリーショップに行ったとします。そこには、見た目の同じようなジュエリーが2つあり、それぞれ3万円と3千円の値札が付いています。

 

この場合、あなたならどちらのジュエリーを買うでしょうか。多くの人は3万円の方を選ぶのではないかと思います。なぜなら、大切な恋人には「良いもの」をプレゼントしたいと考えるからです。しかし、あなたはジュエリーの本来の価値を見定める目を持っていません。その場合、価値を図るには価格に頼るしかないのです。

 

仮に、2つのジュエリーの品質が同じだとしても、3千円の方が価値が低く見られるでしょう。そのため、品質が同じものでも、価格の安いものではブランディングが難しいのです。ブランディングをしたいのであれば、価格を高く設定する必要があります。

 

このように考えると、高価格帯で勝負をするということは、ブランディングをするうえで大変有利になります。

 

以上、商品やサービスを高価格に設定することには、多くのメリットがあります。このような理由から、弱者は高価格帯で勝負するべきなのです。

 

商品やサービスを高価格で売るための手法

 

弱者は高価格帯で勝負するべきであるということは理解できたかと思いますが、それでは実際に高価格で商品やサービスを販売するためには、どのような工夫をすればよいのでしょうか。

 

ここでは、自社の商品やサービスの価格を上げるための5つの手法を解説していきます。

 

1. USPを明確にする
2. 特典を付ける
3. アフターサービス
4. 体験を売る
5. ポジションを変える

 

それぞれ詳しく解説していきます。

 

1. USPを明確にする

 

まず、最も重要なのがUSP(Unique Selling Proposition)を明確化することです。USPとは、他社にはない自社独自の売りのことでしたね。

 

USPの例で最も有名なのはドミノピザでしょう。ドミノピザは以下のUSPを打ち出すことにより急成長しました。

 

熱々でジューシーな美味しいピザをお宅まで30分以内にお届けします。間に合わなければ、代金は頂きません

 

ドミノピザが登場する以前は、宅配ピザというのは自宅に届くまで時間がかかり、冷めているのが当たり前でした。しかし、ドミノピザは熱々のピザを30分以内に届けるという業界の常識を覆すオファーを打ち出したのです。しかも「間に合わなければ、代金は頂きません」というユニークなものでした。

 

このような強烈なUSPを作ることができれば、価格が高くても顧客から選んでもらうことができるのです。

 

そして、USPの肝は差別化にあります。他社にはない独自のメリットがあるということが重要なのです。つまり、差別化することによって、競合他社と比較されなくなります。比較されないということは、価格の比較もされにくいということです。

 

例えば、とにかくお腹が減っていて、すぐに何か食べたいと思っている状況で、宅配ピザを注文しようと考えたとします。そして、次の2つの選択肢があります。

 

A. 30分以内に届く熱々のピザ
B. 何時に届くかわからない冷めたピザ

 

この2つから選択する際に、価格の比較をするでしょうか。おそらく、多くの人が価格を見ずにAを選択するはずです。実際に、ドミノピザが急成長した背景には、このような顧客心理があったと考えられます。

 

つまり、似たような商品同士だから価格で比較されてしまうのです。USPを明確化し差別化できていれば、異なる価値を見出されるので、価格で比較されなくなります。そのような状況になれば、高価格であっても自然と顧客は受け入れてくれるようになるのです。

 

2. 特典を付ける

 

高価格で販売する手法の一つに、特典をつけるというものがあります。特典は、テレビショッピングを見ていると、必ずと言っていいほど使われる手法です。

 

例えば、包丁販売のテレビショッピングで考えてみましょう。商品である包丁を使った実演が一通り行われた後に、最後に価格の発表があります。しかし、価格発表後にさらに「まな板」と「包丁研ぎ」が特典として付いてくるというのです。

 

これらの特典をつけることによって「お得感」を演出できるので、平均よりも高い値段の包丁であっても飛ぶように売れていくのです。実際は、特典を含めても十分に利益を確保できる価格に設定されているのですが、後から特典をつけることによって心理的に値打ち感を醸し出すことができます。

 

このように、商品とは別に特典を付けることにより、高価格でも受け入れられやすくなるのです。特典を付ける場合は、特典にかかる費用も初めからコストに換算しておく必要があります。しかし、金銭的コストをほとんどかけずに特典を付ける方法も存在するのです。

 

それは、「情報特典」です。情報特典とは、紙媒体やデジタルテキスト、動画といったものに有益な情報をまとめて特典としたもをいいます。情報特典は商品に関係があり、購入者の役に立つものでなければなりません。

 

例えば、包丁を販売するのであれば、「プロ直伝の包丁の研ぎ方」「時短料理のレシピ」などを文字媒体や動画にまとめれば、購入者にとって有益な情報特典となるでしょう。情報特典は作成するのに金銭的なコストがほとんどかからないので、費用対効果が高いといえます。

 

いずれにせよ、特典をつけることで顧客は高い値段を受け入れやすくなります。

 

3. アフターサービス

 

アフターサービスも特典の一種ですが、購入後のフォローを無料で行ってあげることにより、高価格でも納得してもらえるようになります。

 

例えば、商店街で個人経営の電気屋を見かけることがあるでしょう。一度そういった街の電気屋に入って家電商品の値段を確認してもらえればわかりますが、大手の家電量販店で販売されている同じ商品よりも価格が高いのです。

 

家電量販店は大量仕入れによって仕入れコストを抑えているので低価格で商品の提供が可能ですが、町の電気屋のような小さなお店ではそのようなことはできません。そのため、相対的に高価格になってしまうのは仕方がないのです。

 

同じ商品で価格が安いのであれば、家電量販店で購入した方が得ですよね。しかし、町の電気屋が昔から変わらず営業をしているということは、商品が売れているということになります。相場より高くても街の電気屋から購入するお客がいるのです。

 

それでは、なぜわざわざ高い商品を購入する顧客がいるのでしょうか。それは、町の電気屋はアフターサービスが充実しているからです。

 

全ての人が家電に詳しいわけではありません。特に高齢者などのシルバー層は、家電に苦手意識を持っている人が多いのです。例えば、家電を購入したいけれど設置の仕方がわからないといった悩みを持っている人がいます。そのようなお客に対して、自宅まで赴いて家電を設置するというサービスを行っていれば、多少価格が高くても、このお店で買いたいという人がいるはずです。

 

家電量販店全盛のこの時代に街の電気屋がなくならないのは、このようなアフターサービスによって価格競争を避けることができているからでしょう。特に、自分で設定などを行うのが面倒な商品や、専門知識が必要な商品では、アフターサービスは強力な武器となります。

 

アフターサービスを無償で行うことで、高価格帯を維持できるということを覚えておきましょう。

 

4. 体験を売る

 

商品をただ販売するのではなく、「体験」とともに売ることができれば、高い値段で販売することができます。

 

例えば、ぶどう農家が収穫したマスカットをただ農協に卸すだけでは、マスカットそのものの価格でしか売れません。しかし、ブドウ狩りというイベントを企画して、参加者から参加料というかたちで課金すれば、ただ出荷するよりも1房あたりの価格を高めることができます。

 

このように、「体験を売る」という考え方を取り入れることにより、価格を高く設定することができるようになります。

 

5. ポジションを変える

 

商品を高価格で売りたい場合、ポジションを変えるというのは非常に有効な手段です。

 

例えば、ある果物屋でマスカットが1房1,000円で販売されていたとします。その果物屋の前を高級レストランのシェフが通りかかり、マスカットを購入しました。そして、シェフはそのマスカットをおしゃれな器に盛り付けて、デザートとしてレストランで提供したのです。

 

器に盛りつけただけのマスカットの値段は1,200円です。しかし、1房で2皿提供できるので、実質1房あたり2,400円で売られていることになります。まったく同じものが、販売する場所が変わっただけで倍以上の値段になってしまったのです。

 

これは架空の話ですが、実際にこのようなことはよくあります。例えば、コンビニエンスストアで100円で売られているミネラルウォーターが、高級ホテルでは300円で販売されていたりするのです。また、同じものが高級レストランでは1杯700円で提供されていたりします。

 

これは品質が変わっているのではなく、販売する場所が変わっているだけです。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。それは、顧客からみた商品の位置づけが変わるからです。

 

果物屋で販売されているマスカットはただのブドウです。しかし、高級レストランで提供されるマスカットは、高級デザートと認識されます。このように、顧客から見れば、全く異なる価値へと変わってしまうのです。

 

このようなことを意図的に行うことを、商品のポジションを変えるといいます。

 

例えば、酒屋で売られているウィスキーを高級なバーで飲むとしたら、10倍以上の値段を請求されることがあります。酒屋に置かれているか、高級バーに置かれているかの違いだけですが、お客から見た価値が変わっているのです。つまり、商品のポジションが変わったのだといえます。

 

高価格帯で勝負をするために、ポジションを変えることは大変効果的です。アイディアひとつで数倍の価格で販売することができるので、是非、より良いポジションに変えられないか検討してみてください。

 

以上、商品やサービスを高価格で販売するための手法を解説してきました。このうちのいくつかを組み合わせることにより相乗効果が生まれますので、1つだけでなく、より多くの手法を取り入れてみましょう。

 

心理学を利用したプライシングテクニック

 

価格が安い、または高いというのは、全て相対的な評価です。つまり、人は何かと比べて、その価格が安いか高いかを判断しています。そのため、比較対象を意図的に設けてあげれば、お客の心理を誘導することができるかもしれません。

 

ここからは、心理学を利用したプライシングテクニックを解説していきます。ここで紹介するテクニックは、上で解説した高価格で売るための手法よりも即効性のある心理技術です。そのため、明日からでもあなたのビジネスに応用することができます。

 

ここでは以下の5つのテクニックを解説していきます。

 

1. アンカリング
2. 不利なおとり
3. 松竹梅の法則
4. 価格に端数を取り入れる
5. 値引きの代わりに無料にする

 

それぞれ詳しく解説していきます。

 

1. アンカリング

 

アンカリングとは「錨を下す」という意味で、価値判断のための基準を事前に設定し、その後の購買判断に影響を与えるテクニックです。

 

例えば、フレンチレストランでワインを頼もうと思い、ワインリスト(ワインのメニュー)を見たとします。すると、1ページ目には1〜3万円代のワインが並んでいて、高いものでは5万円もするものがあります。

 

2ページ目を見てみると3千円〜1万円未満の比較的リーズナブルなワインが並んでいました。そして、8千円のワインに「当店おすすめ」と書かれています。ワインに詳しくない人であれば、「お店のおすすめだし値段もお手頃だから、この8千円のワインにしよう」と思うのではないでしょうか。

 

しかし、よく考えてみると、スーパーやコンビニでボトルワインを購入しようと思えば、1,000円程度で手に入るものがあります。確かにフレンチレストランという場所なので、相場が上がるのは仕方がありませんが、普段であれば8千円もするワインを購入するでしょうか。

 

実は、ワインリストを最初に見たときに、1万円以上の高額な価格を見ていたので、8千円という価格が相対的に安く感じてしまったのです。このように、最初に見せる価格によって判断基準を設定(操作)するのが、アンカリングです。

 

レストラン側も1万円以上のワインを注文してもらおうなんて考えていません。初めに高価なワインを見せることによって、8千円のワインを安く感じさせるよう、お客の心理を巧みに誘導しているのです。

 

この場合、お客が一番安い3千円のワインを頼むことは、心理的に難しくなります。なぜなら、「価値をわからない人に見られたくない」「馬鹿にされたくない」「恥をかきたくない」などという感情が芽生えるからです。

 

このように、最初に見せる数字により、顧客の価値判断に影響を与える心理テクニックがアンカリングです。特に、初めに高い価格を見せておいて、相対的に安い価格の商品を売り込むという手法は効果的です。

 

2. 不利なおとり

 

不利なおとりとはアンカリングの一種で、買わせたい商品よりも見劣りのする、おとり商品を同価格帯で提示するというテクニックです。

 

例えば、洋食屋でランチを注文するとします。ランチメニューは以下の2つです。

 

A. 特製ハンバーグランチ(ドリンク付き):1,000円
B. カレーライス(ドリンク付き):600円

 

売上のことを考えると、Aのハンバーグランチをたくさん注文してもらった方が得です。しかし、この2つの並びだけですと、安い方のカレーライスの注文が多くなってしまうかもしれません。

 

そこで、以下のように「不利なおとり」をメニューに追加します。

 

A. 特製ハンバーグランチ:1,000円
B. 特製ハンバーグランチ(ドリンク付き):1,000円
C. カレーライス(ドリンク付き):600円

 

いかがでしょうか。ドリンクなしの特製ハンバーグランチを同じ価格で並べることにより、ドリンク付きの特製ハンバーグランチがとてもお得に感じないでしょうか。この場合、Aの不利なおとりが売れることはありませんが、Bの本命メニューの注文数が伸びます。

 

このように、見劣りする商品を一緒に並べることにより、本命の商品の販売量を増やす心理テクニックが不利なおとりです。

 

3. 松竹梅の法則

 

松竹梅の法則もアンカリングの一種で、ハイエンド(松)商品を追加することにより、2番手の商品(竹)を売り込むという心理テクニックです。

 

例えば、うなぎ屋でうな重を食べようと思いメニューを見たとします。メニューは以下のような並びです。

 

・うな重:1,800円
・上うな重:2,400円

 

元々、うなぎは高価な食事ですので、普通のうな重(1,800円)でも結構な値段です。この2つだけ提示された場合は、多くの人が1,800円の方を注文するのではないでしょうか。しかし、ここで上うな重より高価格な豪華版を追加し、松竹梅としてメニューに並べたとします。

 

・うな重(梅):1,800円
・うな重(竹):2,400円
・うな重(松):3,600円

 

すると、竹の2,400円のうな重(元、上うな重)の注文数が劇的に増えます。なぜなら、人は心理的に中間のものを選びたくなるからです。

 

2つしかメニューがなかったときは、1,800円のうな重が普通で、2,400円の上うな重が高級品という認識でした。しかし、さらに高級な3,600円の(松)が登場したことにより、2,400円の(竹)が普通に成り代わったのです。人は無意識のうちに普通であること(周りの人と同じであること)に安心します。

 

「(松)は高すぎて手が出ないけど、(梅)だとケチだと思われるかもしれない。ここは中間の(竹)にしておくのが無難だな」という思いが、多くの人の頭によぎるのです。そのため、(竹)の注文数が他の2つより多くなります。

 

このように、よりハイエンドな商品を追加することにより、本来高価格であった上位商品が売りやすくなるのです。

 

4. 価格に端数を取り入れる

 

テレビショッピングなどの通販商品を見てみると、価格が中途半端な端数になっていることに気がつくと思います。例えば、「10,000円」というキリのいい価格よりも、「9,997円」といった端数で提示されることが多いのです。

 

その理由は、世界中のマーケッターによる長年の経験とテストにより、キリのいい数字よりも端数の方が成約率が上がるという結論が導き出されているからです。根拠としては、キリのいい数字よりも、それを少し下回る端数の方が、顧客の心理として安く感じるからだというマーケッターがいます。

 

しかし、それだけが本当の理由ではないようです。ある研究によれば、キリのいい数字は正確さに欠けると顧客が感じるのだといいます。つまり、「10,000円」という価格は、適当につけたのではないかという疑いがかけられるということです。反対に「9,997円」は、より正確に値付けがされていると感じるようなのです。

 

つまり、価格に端数を取り入れることにより、顧客は無意識に「この価格は信憑性がある」と感じます。価格を端数にするというテクニックは、マーケッターの長年の経験によって見出された手法なので、利用しない手はないでしょう。

 

5. 値引きの代わりに無料にする

 

無料」というワードは魔法の言葉です。人は無料というワードを聞くと反応せずにはいられません。そのため、もし「無料」を訴えることができれば、マーケティング上とても有利となります。

 

同じく「値引き」も効果のある言葉ですが、「無料」には敵いません。そこで、もし商品の値引きを考えているのであれば、代わりに無料で提供してみてはいかがでしょうか。

 

例えば、1,800円で仕入れたTシャツを定価3,000円で販売しているとしましょう。このTシャツを「20%値引き」と「2着買うと1着無料」というそれぞれの手法で販売した場合、どちらの方が儲かるでしょうか。

 

20%値引きで3着販売した場合、3,000円の20%は600円です。つまり、3着で合計1800円分の売上が失われます。そして、値引き後の1着分の粗利は600円(2,400−1,800=600)となりますので、粗利の合計は1,800円(3着分)です。

 

一方、2着買うと1着無料の場合は、1着分の仕入れ1,800円分が丸々なくなるので、20%値引きの場合と同じ損失です。しかし、1着分の粗利は1,200円(3,000−1,800=1,200)なので、粗利の合計は2,400円(2着分)となり、20%値引きのときより利益が大きくなります。

 

顧客側の心理としても「20%引き」よりも「1着無料」の方がインパクトがありますので、宣伝効果も高いでしょう。値引きを考えているなら、ぜひ「○○個買うと1個無料」を試してみてください。

 

以上、心理学を利用したプライシングテクニックを解説してきました。すぐにでも使える戦術ですので、あなたのビジネスにも取り入れてみてください。

 

マーケティング効果の高いさまざまな価格設定法

 

脳科学の研究によると、1回1回の消費を目にする販売方法が、顧客の脳に最大の痛みを引き起こすといわれています。例えば、お寿司を1貫食べるごとにいくら、タクシーで数百メートル走るごとにいくらというように、目に見えて課金されると消費者はストレスを感じるのです。

 

そこで、このような顧客の心理的ストレスを最小限に抑えるための、さまざまな価格設定法をいくつかご紹介します。ここでは以下の5つの価格設定法を解説していきます。

 

・定額料金
・パッケージ販売
・成果報酬
・安価と高価の組み合わせ
・無料と有料の組み合わせ

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

定額料金

 

定額料金には多くの人が馴染みがあると思います。例えば、10年前は映画を借りようと思えば、ビデオレンタルショップで1作あたり100〜500円程度支払ってDVDをレンタルしていました。しかし、現在では、インターネット上で「定額見放題」のサービスがあります。サービスによっては月額1,000円程度で動画見放題というものもあるでしょう。

 

映画はデジタル商品ですので極端に安価な価格設定が可能ですが、それでも月に何十本も映画を見る人は少ないでしょう。月額契約していても、月に3〜5本程度しか映画を見ないという人も多いと思います。

 

このように、定額の料金設定は、人によっては高くつくものあるでしょう。しかし、それでも定額料金は顧客から好まれます。なぜなら、毎回購入するごとにお金を払わずに済むので、脳が痛みを感じないからです。

 

もし、あなたが原価の安い商材やサービスを扱っているのであれば、価格を定額料金にできないか検討してみましょう。

 

パッケージ販売

 

パッケージ販売も顧客の脳の痛みを回避する効果的な手法でしょう。パッケージ販売とは、個々の商品をバラ売りするのではなく、セットにして販売するというものです。

 

例えば、他人への贈り物やお見舞いとして、果物の詰め合わせを購入するとします。その際に、メロンと梨とりんごとブドウと…というように1個1個選ぶとなると、個々の価格が気になってしまうでしょう。すると、値段を計算しながら購入することになるので、高くなりすぎないよう心理的にブレーキをかけます。

 

しかし、初めからセットになっている商品があればどうでしょうか。「果物の詰め合わせ:5,000円」というようになっていれば、中身の個々の果物の金額がわかりにくいので、脳の痛みが軽減されます。また、1つ1つ選ぶ手間も省けますので、顧客に余計な面倒をかけさせないというメリットもあるのです。

 

さまざまな商品をセットにして売り出すパッケージ販売はとても効果的ですので、ぜひ取り入れてみましょう。

 

成果報酬

 

成果報酬は、コンサルティング業や弁護士などが用いる価格設定手法ですが、最もクリーンな価格設定方法だと思います。なぜなら、顧客に成果が出なければ、収益が生まれないからです。

 

例えば、会計系のコンサルティングでは、顧客が節約できた経費の数パーセントを課金するという企業があります。また、弁護士の例でいえば、例えば裁判で勝利した際に依頼人が得る慰謝料の一部を、成果報酬として受け取るという契約をするとこが多いです。

 

このように、自らの知識や技術により、顧客に成果を出させる自信がある場合は、成果報酬が最適でしょう。顧客からしてみても、成果がでなければ一銭も支払わなくていいので、安心して依頼できます。

 

成果報酬は、最も公平で顧客から信頼される価格設定手法です。

 

安価と高価の組み合わせ

 

安い商品と高い商品を組み合わせて販売するのも効果的な価格戦略です。例えば、ジレットモデルというビジネスモデルがあります。ジレットモデルとは、本来高価な本体を格安で提供し、その後利益率の高い消耗品で利益を上げていくというビジネスモデルです。

 

カミソリを扱うジレット社が、カミソリの持ち手部分を格安で提供し、その後、消耗品の替え刃を継続的に販売することによって大きな成功を収めたことから、一般にジレットモデルと呼ばれています。

 

カミソリの他にも、「プリンターとインク」「コーヒーマシーンとコーヒーカプセル」などの組み合わせがあります。

 

初めは安売りするので損をするかもしれませんが、その後に利益率の高い商品を売り続けていくことで、中長期のスパンで利益を上げていくのです。本体の商品が上手く市場に浸透すれば、付属品によって莫大な利益を得られる可能性があります。

 

無料と有料の組み合わせ

 

無料の商品と有料の商品の組み合わせも、強力な価格戦略の一つです。この組み合わせによるマーケテイング戦略はフリー戦略とも呼ばれます。

 

例えば、モバイル端末でプレイされるゲームアプリはフリー戦略の典型です。ゲームアプリ自体は無料でダウンロードできて、無料でプレイできます。しかし、ゲーム内でのレベルアップのためやアイテムを購入するために、課金できるシステムを用意しておくのです。

 

すると、ゲームプレイヤーの中には、課金をして遊ぶ人が一定数必ずいます。つまり、有料でプレイするユーザーが無料で遊ぶユーザーを支えているのです。

 

このような、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能については料金を課金する仕組みのビジネスモデルを「フリーミアム」と呼びます。無料にするには原価が極端に低くないと難しいですが、デジタル商材などの原価のほとんどかからない商品を扱っているのであれば、取り入れてみる価値があるでしょう。

 

また、フリーミアム以外でも無料と有料を組み合わせる方法があります。それがツーステップマーケティングです。

 

ツーステップマーケティングとは、まず初めに無料の商品(フロントエンド)を提供することにより、見込み客リスト(見込み客の名前や住所、電話番号、メールアドレスなど)を入手します。その後に、見込み客に向けて有料商品(バックエンド)を販売するのです。

 

最初は無料なので利益を得られなくても、後にバックエンドとして有料商品を販売することにより、トータルで利益をあげていく手法です。ツーステップマーケティングでは、見込み客と信頼関係を築いた後にセールスを行うので、高額な商品を扱っている場合に適した販売手法となります。

 

以上、マーケティング効果の高いさまざまな価格設定法を解説してきました。自社の商品やサービスとの相性を確認し、効果が期待できそうな手法を新たな価格戦略として取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

 

・価格戦略が重要なのは、以下の2つの理由からである。
 1. 価格には価値表示機能がある
 2. 価格が利益を左右する

 

・価格戦略を持たない企業は、以下のような手法で値決めをしている
 1. 思いつき
 2. 競合価格や業界の常識
 3. コストプラス方式

 

・バリュー・プライシングとは、顧客視点で考える値決め手法である。コストから価格を導き出すのではなく、顧客の感じる価値から価格を導き出すという特長がある。

 

・「値下げ」は販売数量の増加につながっても、利益の増加につながるとは限らない

 

・値下げ競争で得をするのは体力のあるマーケットリーダーだけなので、弱者は値下げをしてはならない

 

・以下の5つの理由により、弱者が高価格帯で勝負するべきである。
 1. 販売数量が少なくても利益を確保できる
 2. 他社と差別化できる
 3. 質の良い顧客と付き合える
 4. 相対的に労働量が減る
 5. ブランディングできる

 

・商品やサービスを高価格で売るための手法は、以下の5つである
 1. USPを明確にする
 2. 特典を付ける
 3. アフターサービス
 4. 体験を売る
 5. ポジションを変える

 

・今すぐ取り入れるべき心理学を利用したプライシングテクニックは、以下の5つである
 1. アンカリング
 2. 不利なおとり
 3. 松竹梅の法則
 4. 価格に端数を取り入れる
 5. 値引きの代わりに無料にする

 

・筆者が推奨するマーケティング効果の高い価格設定法は、以下の5つである
 1. 定額料金
 2. パッケージ販売
 3. 成果報酬
 4. 安価と高価の組み合わせ
 5. 無料と有料の組み合わせ

 

おすすめ教材

 

価格戦略についてもっと詳しく学びたければ、億万長者メーカーであるダン・ケネディとマーケティングスペシャリストであるジェイソン・マーズの共著である、以下の著書を読んでみることをおすすめします。

 

世界一ずる賢い価格戦略 (著者:ダン・ケネディ、ジェイソン・マーズ)

 

世界一ずる賢い価格戦略

 

より詳細な価格戦略を学ぶことができます。


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