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ベイズ均衡(ベイジアンナッシュ均衡)

ここでは「情報非対称ゲーム(不完備情報のゲーム)」で触れた不完備情報のゲームを解決するための「ベイジアンゲーム」について詳しく解説します。

 

ベイジアンゲームとは不完備情報のゲームのプレイヤー全員が、それぞれのタイプになる確率に基づいて、タイプ別にどのような意思決定をするかを考える方法です。同一のプレイヤーでもタイプが変われば別の人間であると想定して、ゲームの展開を考えます。

 

このとき全てのプレイヤーがどのタイプになったとしても互いの戦略に対して最適反応を取っている状態を「ベイズ均衡(ベイジアンナッシュ均衡)」と呼びます。以下ではこのベイジアンゲームとベイズ均衡について具体例を挙げてみていきましょう。

 

例題

 

ルームシェアをしているXとYがいます。Xは保険会社の営業マンで家を留守にしがちですが、Yはフリーライターをしていて家にいることがほとんどです。

 

基本的に2人は自分の居住スペースの掃除はそれぞれで済ませていますが、共有スペースの掃除は面倒なので気づいた時にしかしません。とはいえ2人とも「汚い部屋は嫌だ」とは感じています。

 

Xも普段は共有スペースの掃除をしますが、仕事が忙しくて余裕がない時は掃除をしなくなります。対してYは自分で仕事の量を調整できるので、忙しくて掃除をする余裕もないという状況にはなりません。

 

Xが忙しくなる確率をPとして、かつXが忙しいかそうでないかの判断はXにしかできないとします。これをもとにこのゲームのベイジアンナッシュ均衡を考えてみましょう。

 

解説

 

このゲームにおける私的情報=タイプはXにおける「忙しい」「通常」の2つです。Yは常に通常タイプとします。Xが忙しいタイプの時(図2)、ナッシュ均衡は「Yが掃除をして、Xは掃除をしない」です。

 

ベイズ均衡

 

Xが通常タイプの時の利得表は図1です。YはXが忙しいかどうかわからないため、図2で見たように「掃除をする」を選びます。これがわかっているXはどちらにせよYが掃除をするので、「掃除をしない」を選びます。

 

この時「Yが掃除をして、Xは掃除をしない」がナッシュ均衡になります。どちらのタイプにおいても「Yが掃除をして、Xは掃除をしない」がナッシュ均衡になっているので、これがベイズ均衡となります。

 

しかしこのゲームにおけるベイズ均衡はこれだけではありません。「通常タイプのXは掃除をし、忙しいタイプのXは掃除をせず、Yは常に掃除をしない」というベイズ均衡もあり得るのです。これを理解するには確率Pについて考えなくてはなりません。

 

Yにとっての最適な戦略は、このPの値に依存するからです。XがPの確率で忙しくなるので、1?Pの確率で通常タイプになります。

 

これをもとに図1と図2のYの期待利得を計算すると、Yが掃除をしない場合の期待利得が2−3P、掃除をする場合の期待利得が0となります。

 

<Yが掃除をしない場合のYの期待利得>
期待利得=(1−P)×2+P×(−1)=2−3P

 

<Yが掃除をする場合のYの期待利得>
期待利得=(1−P)×0+P×0=0

 

Yが掃除をしない場合、通常タイプのXにとっての最適反応は「掃除をする」です。すると図1のAが実現されます。したがってこのときのYの期待利得は(1−P)×2です。Xが忙しいタイプの時はCが実現されるので、Yの期待利得はP×(−1)。

 

この合計がYが掃除をしない場合のYの期待利得2−3Pです。

 

Yが掃除をする場合、通常タイプのXにとっての最適反応は「掃除をしない」です。このとき図1のBが実現され、期待利得は(1−P)×0となります。Xが忙しいタイプのときはDが実現されるので期待利得はP×0。

 

したがってYが掃除をする場合のYの期待利得は0です。Yにとって掃除をしない方が得かどうかは、2−3P≧0で求められます。

 

2−3P≧0
−3P≧−2
P≦2/3

 

つまり2/3以下の確率でXが忙しい場合に、Yは「掃除をしない」を選ぶとより多くの利得を得られます。これは「あくまでYはXが忙しいかどうかを把握できないが、いずれにせよYは掃除をしない方が得をする」という状況です。

 

逆に言えばXが忙しいタイプになる確率が2/3より高い場合は、YはXがどちらであっても掃除をする方が利得を大きくすることができます。

 

「ふり」のメリット・デメリット

 

このように考えると、Xからすれば自分が「忙しいふり」をしていればYは「しょうがないなあ」と言いながらいつでも掃除をしてくれることになります。逆にYが寂しがるからと無理をして定時で帰宅していると、Yは掃除をしてくれません。

 

ゲーム理論ではこのように「ふり」をするメリットとデメリットも理論的に説明することができます。

 

まとめ

 

・ベイジアンゲームとは「不完備情報のゲームのプレイヤー全員が、それぞれのタイプになる確率に基づいて、タイプ別にどのような意思決定をするかを考える方法」

 

・ベイズ均衡(ベイジアンナッシュ均衡)とはベイジアンゲームにおいて「全てのプレイヤーがどのタイプになったとしても互いの戦略に対して最適反応を取っている状態」

 

・ベイズ均衡は確率Pに基づいて計算される期待利得によって変わる

 

・ゲーム理論を使えば「ふり」のメリット・デメリットも理論的に説明出来る。


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