小売業の事業計画書例
今回は、小売業の事業計画書について説明していきます。
この文章を読むことで、小売業の事業計画書作成のポイントや注意事項について学ぶことができます。
小売業の事業計画書作成のポイント
小売業の場合は「店舗を構えて商品を販売すること」が基本になります。
よって、「商品の仕入⇒商品の在庫⇒商品の販売」が基本的な流れです。
もちろん、小売業といっても様々な形態がありますが、上記の基本的な流れは多くの小売業に当てはまります。
しかし、その中でも注意点があります。以下のような点に注意してください
?店舗コンセプト
?店舗立地
?仕入れルート
?在庫管理
?販売促進
それでは、それぞれの詳細をみていきましょう。
?店舗コンセプトはどのようなものなのか
小売業においては、自社で商品を作る場合もありますが、多くの場合は商品を仕入れて販売を行います。
よって、競合他社でも扱っている商品を販売する可能性が高いので、何らかの店舗コンセプトがないと魅力のない店舗になってしまいます。
魅力のない店舗になってしまうということは、「顧客が来店しない」、もしくは「来店しても他店との価格差しか見ないので価格競争になる」ということです。
例えば、雑貨屋を経営にするにしても、「ヨーロッパで生まれ育った店長が選ぶ、こだわりのセレクト雑貨店」のようなコンセプトがあったほうが、他店との差別化が図りやすいのです。
差別化ができているということは「魅力がある店舗(=来店したい店舗)」になっていくことになります。
?店舗(立地)はどのような場所か
小売業は、店舗にて販売を行うことが基本となります。よって、店舗の場所(立地)がどこかという点が重要です。
立地というと「人通りの多いところがよい」というイメージがあるかもしれません。しかし、単純に人通りだけが大切なのではありません。
例えば、ターゲット顧客が「ファミリー向け」である場合には、単身者が多い地域では立地がよいとは言えません。
よって、店舗コンセプトに合った(ターゲットとなる顧客層が多くいる)立地を選ぶ必要があるのです。
?商品の仕入れルートは確立できているか
小売業は、商品を仕入れて販売するので、「商品の仕入れルート」が確立されていないと運営ができません。
しかも、「仕入れられればどこでも良い」というわけではなく、「店舗コンセプトに沿った仕入ルート」を確立する必要があります。
特に、仕入れが難しい商品は顧客にとっては魅力が増す場合が多いので、いかに付加価値の高い商品を仕入れていくかもポイントとなります。
?在庫管理はどうするのか、できているか
小売業というと「販売する業種」というイメージが強いかもしれませんが、「在庫管理」によって店舗の存続が左右されることも多いのです。
せっかく良い商品を仕入れることができたとしても、在庫管理がしっかりできていないと、在庫品が壊れたり紛失したりして販売できない可能性があります。
大量に商品を仕入れたとしても、販売することができなければ余剰在庫となってしまい、経営を圧迫します。
反対に、在庫量を減らし過ぎても「販売できるはずの時に商品がない」ということが起きかねません。
これは「機会損失」といって、目には見えにくいですが大きな痛手となります。
店舗の大きさや取り扱うアイテム数などにもよりますが、在庫管理も注意するポイントです。
?販売促進の方法をどうするのか?
「商品の販売ができるかどうか」は最も重要なポイントです。
店舗コンセプトや立地がよく、良い商品を仕入れたとしても、販売ができなければ意味がありません。
販売をするためには、店頭の陳列を工夫したり、来店数を増やすためにチラシを配ったりすることも大切になります。
また、口コミが起きるような仕組みづくりや、リピート客が増えるような施策も必要です。
その他にも、店員の接客技術の向上やPOP広告やノベルティグッズの活用など、購買意欲をかきたてるための工夫が必要となります。
販売で必要なことは、店舗作りや商品の陳列、広告、接客など幅広いですが、店舗の売上をあげるためには重要なポイントになります。
以上、小売業での注意する5つのポイントを見ていきましたが、それらを事業計画書に反映させながら作成していってください。
<事例>
Hさんはドイツ雑貨のセレクトショップをオープンさせようと考えています。創業の仲間を集めるため、また銀行での資金調達のためにも、事業計画書を作成しようと考えています。
Hさんは学生時代にドイツへの留学経験があります。社会人になってからもドイツと関係のある仕事をしていたこともあり、その後も仕事や友人に会うために何度もドイツを訪問しています。
そこで出会ったドイツの雑貨が好きになり、「これは日本でも好かれるのではないか」と考えたのです。そして、「ドイツの雑貨を日本に広めよう」というのが、今回の事業を思いついたきっかけでした。
当初は、Hさん自らドイツに足を運び、自分で選んで購入したものだけを販売するつもりでした。しかし、それでは仕入れ量に限界がきてしまうことが課題でした。趣味で販売するレベルならよいのですが、店舗を構えて販売するには一定以上の仕入量が必要だからです。
また、誰でも仕入れることができる商品では「ドイツ雑貨のセレクトショップ」という優位性がなくなってしまいます。
そこで、ドイツの友人たちに依頼して、「実際にドイツで暮らしている人がセレクトした商品」というコンセプトで仕入れを行うことにしたのです。
これにより、さらにコンセプトが明確になり、仕入れルート・仕入量の課題も解決していったのです。
また、店舗の立地については「人通りが多いところで、かつターゲットとしている顧客に合う場所」を検討していきました。
そこで、駅前などではなく、郊外の住宅密集地に店舗を構えることにしました。なぜなら、主要顧客層が主婦であることを想定し、買い物ついでや散歩ついでに寄れる場所が良いと考えたからです。
そして、倉庫のスペースが広くない店舗ですので、過剰の在庫は置かずに「仕入れたら即店舗で販売する」という流れにしました。
さらに、同じものをいくつも販売するわけではなく、「その商品が売れたら終わり」という「一点もの」だけを扱うショップとしていくことにしました。
これにより在庫管理という部分での煩雑さが緩和されました。
これにより、顧客は常に新しいものを求めて来店するようになり、リピーターを増やしていく仕組みにしたのです。
【小売業の事業計画書例】
(※PCからダウンロードをお願いします)
<解説>
店舗は「コンセプト」「仕入れ」「立地」「在庫」「販促」などが上手くかみ合うことによって売上を伸ばしていきます。
この中で一つでも弱い部分があると売上にも悪い影響を与えてしまいます。
コンセプトが良く、仕入れや在庫管理が上手く仕組化されていても、「立地」が良くなければ全体がダメになる可能性があります。
よって、小売業の事業計画書を作成する場合には、「全体を見通して事業として成り立つかどうか」という点を押さえていく必要があります。
まとめ
・小売業の場合は「店舗を構えて商品を販売すること」が基本になる。よって「商品の仕入⇒商品の在庫⇒商品の販売」が基本の流れである。
・以下の5点に注意する。
?店舗コンセプトはどのようなものなのか
?店舗(立地)はどのような場所か
?商品の仕入れルートは確立できているか
?在庫管理はどうするのか、できているか
?販売促進の方法をどうするのか
・小売業は「コンセプト」「仕入れ」「立地」「在庫」「販売促進」などの各要素が上手くかみ合うことで売上を伸ばすことができる。
・一つでも弱い要素があると、事業全体に悪い影響を与えるため、全体を見通して事業計画書を作成する必要がある。
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