「資金計画」の作成
今回は資金計画の作成について説明していきます。
この文章を読むことで、「資金計画の必要性」「資金計画作成の概要」について学ぶことができます。
資金計画の必要性
まずは資金計画の必要性について説明していきます。
事業計画書においては、利益が出ているかどうかを予想する利益計画があるので、「資金計画までいらないのではないか?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、「利益が出ていること」と「資金があること」はイコールではありません。
例えば、利益計画で3年後に利益が出るようになるとしても、1年目や2年目に資金が不足してしまえば、3年目まで事業を継続することができないからです。
また、3年という長いスパンの話だけでなく、短期的にも重要となります。
例えば、黒字経営をしていたとしても、今月の支払いのための資金が不足すれば倒産してしまう可能性があるのです。
なぜこんなことが起きるのでしょうか。
利益計画は、損益計算書の計算方法に合わせて発生主義で計算されているからです。
発生主義とは、資金の動きではなく、その事象の発生に合わせて計算をする方法です。
例えば、11月1日に30円分仕入を行い、その商品を100円で販売します。その取引を掛取引にして、支払いも入金も翌月の12月末日だとします。
利益計画では、11月に売上高100円、原価30円なので、利益70円となります。
しかし、11月末の時点で利益が70円あっても、手元に現金があるわけではないので、それを使って他の支払いに充てることができません。
このように、利益(損益計算書)の動きと資金の動きは違うので、資金計画が必要となってくるのです。
資金計画作成の概要
では、どのように資金計画を作るかというと、売上計画と利益計画で出てきた数値を、資金の増減に合わせて表を作り直したものが資金計画となります。
例えば、売上が100万円の取引があったとしても、取引先によって入金のペース(入金サイト)が違えば、資金計画も大きく変わります。
売上100万円の入金のペースが「A社50万円分は即入金,、B社50万円分は1か月後入金」の場合と、「A社30万円分は即入金、B社30万円分は1か月後、C社40万分は3か月後」の資金計画では、資金計画はまったく異なるものになります。
これは支払いの場合も同様です。
仕入を30万円分したとして、すべてが同じ条件での支払いペースでないのであれば、それぞれの取引を反映した資金計画になるようにします。
このように、販売先や仕入れ先毎の取引を加味して計算することになるので、売上計画、利益計画も詳細に作成しておかないと、資金計画の精度が低くなってしまうのです。
上記のように、資金計画では「いつ、いくら資金が不足するのか」ということが分かります。
これが分かることによって、「銀行からの借入の資金調達や返済をどのようにしていくのか」という、さらに精度の高い資金計画が立てられるようになります。
<事例>
Xさんは食品の卸売業の経理担当者です。新事業立ち上げのため、銀行から借入をすることになり、事業計画書を作成することになりました。
その中で、「借入の金額が適正か」「返済が可能か」などを銀行が判断するために、資金計画を求められたので、作成することになりました。
Xさんは経理担当であるため、決算書の損益計算書を作成しており、売上計画や利益計画は簡単に作ることができました。
しかし、資金計画は全く作ったことがなく、作成方法に戸惑ってしまいました。
それでも売上計画や利益計画ができているので、それらを「資金の動きに置き換えていく作業」をしていけば、資金計画ができると気付いてコツコツとやり始めました。
仕入先も販売先も複数あり、それぞれ支払サイトと入金サイトが違うので、それらを資金計画に反映させるという大変な作業でした。
しかし、Xさんはなんとかその作業をやり遂げました。
そうして、資金調達の適正金額が分かり、その返済を行うことができる事業計画書にしていくことができました。
<解説>
資金計画作成の作業は大変ですが、売上計画や利益計画がしっかりとできていれば、それらを資金の動きに合わせて変更するだけです。
見方を変えれば、売上計画や利益計画が曖昧だと「資金計画の作成」が難しくなります。
また、Xさんの会社のように、銀行との交渉や資金繰りにも資金計画は活用することができます。
まとめ
・「利益が出ていること」と「資金があること」はイコールではない。よって資金計画は必要となる。
・「売上計画、利益計画で出してきた数値を資金の増減に合わせて表を作り直したもの」が資金計画となる。
・銀行からの借入の際に、「借入の金額が適正か?」「返済が可能か?」などの判断を適切に行うためにも、資金計画を作成する。
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