意思決定の方法を学ぶ その3
?フィードバックの仕組みを作る
意思決定はなるべく正しいものになるべく慎重に行わなければなりません。
しかし、意思決定を行うのは人間です。
人間は必ず間違いを犯します。
また、一度行った意思決定がそのときには正しいものでも、時間の流れによって現実に則さなくなってくることもあります。
したがって、決定を現実に照らして継続的に検証していくために、決定そのものの中にフィードバックを講じておかなければなりません。
例えば、世の中で最も統制のとれた組織に軍があります。
軍では命令の実行を確認するためのフィードバックを組織化しています。
軍では決定を行った者が自ら出かけて確かめることが唯一の信頼できるフィードバックであるとされています。
部下からの報告を当てにせず、自らが、少なくとも副官を派遣して確認をします。
これは部下を信頼していないのではなく、コミュニケーションが当てにならないということを長年の経験から知っているからです。
現代ではITの普及により、意思決定者が現場から離れていることが多く、ますますこのフィードバックが重要になってきています。
意思決定を行った人間が自ら出かけ確認するというフィードバックの仕組みを作ることは、単純で知恵のない方法だと思うかもしれません。
しかし実際には唯一ではないにしても最善の方法なのです。
?評価測定の為の基準を見出す
意思決定というのは判断をすると同義です。
いくつかの選択肢からの選択です。
しかし、その選択肢が良いものと悪いものからの選択であることはほとんどありません。
そのほとんどは良さそうなもの同士の中からの選択です。
または悪くないもの同士の中からの選択です。
意思決定については、よく事実を探し検討するように言われます。
しかし、成果をあげる人は事実からはスタートできないことを知っています。
事実とはそれを見る者によって、またはその側面によって変わってしまいます。
同じ事象を見ても見る人によって違った見方ができます。
例えば、ある部署で仕事が滞っている原因について、人員不足だと言う人間もいれば、仕事内容がいくつかの人間に重複し行われていて、非効率なだけだと言う人間もいます。
ですからまず事実ではなく意見からスタートしなければなりません。
正しい意思決定は共通の理解と対立する意見、競合する選択肢をめぐる検討から生まれます。
したがって、まずはじめに意見を持つことを奨励しなければなりません。
そして意見を表明した後には事実による検証をしなければなりません。
そして意見からスタートした選択肢の中からどれを選択するのか、それを何故選択するのかという理由を明らかにしなければなりません。
選択肢の評価測定の基準を見出す作業です。
新たな決定を行う場合にはそれまでの評価測定の基準は捨てなくてはなりません。
評価測定の基準を見出す最善の方法は、既に述べた通り現実からフィードバックを得ることです。
例えば製品管理上の問題として、ある製品に関する不良率の問題があるとします。
その製品の不良率が最近上がってきていますが、それは三つの工場で生産されています。
調べてみると実は一つの工場でのみ格段に不良率が高く、他の二つの工場ではそれほど高くありませんでした。
しかし、不良率の基準が三つの工場での平均値となっていた場合、その基準は課題解決には意味がなく新たな基準が必要なことに気がつきます。
例えばこの場合には、製品ごとの不良率の他に、工場ごとに不良率を管理する基準を定めなければならないことに気づくでしょう。
これも報告がなかった場合、自ら工場に出かけていって確認しなければわかりません。
評価測定の為の適切な基準を見出すことは統計上の問題ではありません。
判断を行うにはいくつかの選択肢が必要であり、それらを検討することによって正しい洞察が得られるのです。
したがって評価測定の基準についてもいくつかの選択肢が必要です。
例えば、投資案件の評価基準にも回収期間や利益率、現在価値など複数の評価基準があります。
それら全ての選択肢について検討を加えなければ、正しい判断はできないでしょう。
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