事業を定義する
企業に働く者は、皆がそれぞれ自社の事業に対して漠然と定義を持っていると思います。
そしてその定義に基いて色々な部署で、あらゆる階層で意思決定が行われていると思います。
しかし、皆がそれぞれ漠然と考えている事業の定義がそれぞれ異なっていたらどうでしょうか。
それぞれが正しいと思って行っている行動に、全体として矛盾が生じてしまう可能性があります。
そこで組織において共通のものの見方、理解、方向づけ、それに対する努力を実現するには、企業全体として「我々の事業は何か」を定義する必要があります。
自社の事業の定義などは皆がわかっていると思うかもしれません。
高級自動車メーカーは道路での快適な移動手段売っていると、保険会社は金銭的リスクを引き受けていると言うかもしれません。
しかし、事業の定義とは自らが考えているものではない可能性があります。
何故ならその企業の事業は顧客によって定義されるからです。
顧客を創造すること、顧客を満足させることが企業の使命であり目的であるので、「我々の事業は何か」との問いには市場と顧客の観点から考えなければなりません。
したがって、「顧客は誰でどこにいるのか」という問いを先にしなければならないのです。
しかし、顧客は誰かというのは単純ではありません。
例えば、お菓子メーカーは一般消費者と小売店という二つの顧客を持ち、さらに一般消費者にしても子供なのか女性なのかという属性もあります。
また、顧客はどこにいるのかという問いも忘れてはなりません。
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そして次に問わなければならないのは「顧客は何を買うか」です。
先程の例で、高級自動車メーカーは道路での快適な移動手段を売っていると書きましたが、顧客の側から見ればこれは間違いである可能性があります。
例えばベンツやレクサス、ロールス・ロイスといった高級車を買う人は本当に快適な移動手段を買っているのでしょうか。
きっとこれらを買う人は宝石を買うのと同じでステータスを購入しているのです。
また、保険会社は本当に金銭的なリスクを引き受けているのでしょうか。
これは半分は正解だと思いますが、顧客の立場から見てみると安心を買っているのだと思います。
このように自社が売っていると思っているものと顧客が買っていると思っているものは異なる可能性があります。
したがって、「我々の事業は何か」という定義は、顧客の視点から考えて定義しなければ大きく間違うことになってしまいます。
そしてこの問いは常に問い続けなければなりません。
何故なら一度行った定義づけが時代の流れによって陳腐化するからです。
例えば、富士フイルムという企業は写真フィルムの製造からスタートしましたが、現在ではヘルスケア製品まで取り扱っています。
そのため、「我々の事業は何か」と同時に「我々の事業は将来何になるか」ということも一緒に考えるべきです。
時代によってその企業が行うべきことは変化していきます。
したがって今現在の事業の定義と共に将来の事業に対しても考えておくべきなのです。
また、「我々の事業は何であるべきか」という問いも必要です。
現在の事業を全く別のものに変えることによって、新しい機会を開拓し創造することができるかもしれません。
この問いを発しなければ、重要な機会を逃すことになります。
これと同時に、「我々の事業のうち何を捨てるか」も考えなければなりません。
成果をあげなくなったり、目的や使命に沿わなくなった過去のものを計画的に、体系的に廃棄していかなければ新しいことは行えません。
いくら機会を捉えられても、過去の仕事に追われていては新しいことは行えません。
より良い明日を創るためには、必要のなくなった昨日を捨てなければならないのです。
このように事業を定義することは容易ではありません。
しかし、事業の定義があって初めて目標を設定し、戦略を発展させ、資源を集中し、成果をあげるべく活動を開始することができるのです。
事業が明確に定義できれば、組織全体の意思疎通もはかりやすくなり、皆が共通の方向に向かって無駄なく努力することができるようになります。
したがって、全ての企業が自らの事業を一から定義する必要があるのです。
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