貢献に焦点を合わせる
成果をあげる為には、常に貢献に焦点を合わせなければなりません。
実際、努力に焦点を合わせる人は多いのですが、貢献に焦点を合わせている人は少ないように思います。
例えば「毎日遅くまで残業しているのに評価してもらえない」や「あんなに時間をかけてプレゼンの準備をしたのに、コンペで負けてしまった」などと言っている人は貢献ではなく努力に焦点を合わせている人です。
自分がどれほど努力したとしても相手に対する貢献を意識しなければ、それに見合った成果をあげることはできないのです。
また、貢献ではなく肩書や権限に焦点を合わせている人も多いです。
例えば、「あなたの仕事はなんですか」と尋ねられて、「企業のマーケティング部門で働いています」や「人事部長をしています」と言う人は多いと思います。
しかし「市場のニーズをつかみ、新製品の開発に必要な情報を提供しています」や「企業の成長の為に将来の経営を担う優秀な人材の育成と発掘をしています」などと言う人は圧倒的に少ないと思います。
自分の肩書や権限に焦点を合わせているうちは、自らにとっても組織にとっても成果のあがる仕事はできません。
貢献に焦点を合わせることによって、組織全体の成果に注意を向けるようになり、外の世界に注意を向けるようになり、顧客の観点から物事を考えるようになります。
その結果、与えられる仕事や仕事への取り組み方が大きく変わってくるのです。
したがって、常に「どのような貢献ができるか」を自問しなければなりません。
そして、あらゆる組織が三つの領域の成果に対する貢献を必要としています。
それは、「直接の成果」と「価値への取り組み」と「人材の育成」の三つです。
まず、直接の成果とは最も単純で、企業でいえば売上や利益などの経営上の業績です。
当然ですが、直接の成果をあげられなければ組織は生き残っていくことはできません。
次に、価値への取り組みとは、世界一の技術力を獲得することであったり、一般家庭に最も安く良質な財やサービスを提供することであったりと、その組織の理念によって違うものです。
例えば、米国のフォード社は創業当時、一部の富裕層にしか手に入らなかった自動車を一般家庭に普及させることを価値への取り組みとしました。
また、日本マクドナルドの創業者である藤田田は、日本人の体格向上の為に新しい食文化を創造するという価値観を持っていました。
組織は単に直接の成果だけではなく、こういった価値への取り組みへの成果も必要とします。
最後に人材の育成ですが、組織は明日のマネジメントにあたるべき人間を準備しなければどんどん衰退していき、存続自体がままならなくなってしまいます。
それも現在の世代が築いた成果を維持するだけでなく、それを超える新たな価値を生み出せる人材を育成しなければなりません。
成長を続ける組織とは継続的に優秀な人材の育成に取り組む組織です。
組織に働くのであれば、これら三つの成果に対する貢献を意識しなければなりません。
そもそも知識労働者とは自らの知識領域における専門家です。
例えば、経理部で働く人は経理の専門家であり人事部で働く人は人事の専門家です。
そして専門家であるが故に自分一人では成果をあげることができません。
経理部の人間はトップマネジメントの経営判断に必要な情報を提供しています。
しかし、その情報を生み出すだけでは何の成果も生まれないのです。
自らのアウトプットは他の専門家に活用されて初めて成果に結びつくのです。
したがって、我々は組織に対して、もしくは一緒に働く人に対して、自分はどのような貢献ができるかを意識しなければならないことがわかると思います。
それは他の人がどのようなものを求めているのかを考えることから始まります。
貢献に責任を持つ人は自らの専門分野を全体に関係づけることができる人です。
また仕事における良い人間関係とは、貢献に焦点を合わせた人間関係です。
成果をあげるために、お互いがどのような貢献ができるかを常に考えていれば、仕事において良好な人間関係を長く保てるはずです。
一緒に飲みに行くことが悪いことだとは思いませんが、仲が良いだけで仕事で成果をあげられなければただの友達です。
例えば医療機関では、患者の病気からの回復という共通の目的に向けて、医師や看護師、X線技師、薬剤師などの多くの専門家が共に働いています。
彼らは患者の為に自らの専門情報を、他の専門家に必要な情報を、当然のように共有しています。
彼らは意識せずに貢献に焦点を合わせた人間関係を構築しているのです。
例えお互いの仲が良くなかったとしても、仕事においては良い人間関係であると言えます。
また他の人に対して、組織に対して、どのような貢献ができるかを考えることは、どのような自己開発が必要かということを浮き彫りにします。
自分が貢献する為にはどのような知識や能力を身につけるべきかを考えることになります。
そしてそれを身につけることによって成果をあげられる人間になりますし、組織が成果をあげることにもつながってくるのです。
成果をあげる為には常に貢献に焦点を合わせることが必要不可欠なのです。
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