組織構造を決める条件
今回は組織構造を決める条件について説明していきます。
今回の文章を読むことによって、組織構造がどのように規定されるかを学ぶことができます。
組織構造を決定する条件は、大きく分けて2つあります。
1つは、企業組織を取り巻く外部環境で、もう1つは企業組織の内部環境です。
外部環境
それでは外部環境から順に説明していきます。
外部環境はさらに細かく分けると、マクロ環境(法規制、経済状況、社会状況、技術動向)や、市場環境(顧客数、ニーズ)、競合環境などがあります。
これらの要因は、企業戦略への影響を通じて、あるいは直接的に組織へと影響を及ぼします。
これらのうち、マクロ環境は一般環境と言うこともあります。
マクロ環境は、ある特定の企業のみに特異的に働きかけるものではなく、その市場で活動しているあらゆる企業組織に対して影響を及ぼすからです。
特に、技術動向は組織構造に対して大きな影響を及ぼします。
イギリスの経営学者であるジョアン・ウッドワードは1965年に生産形態(単品生産なのか、大量生産なのか、連続生産なのか)によって、適切な組織構造には違いがあることを指摘しています。
受注生産で単品生産を行っているような場合は、専門の技術者が設計を行い、ユーザとの情報交換を通じて生産を行っていきます。
その生産の中で必要になる部品も専門の部品となり、必要に応じて内製化します。
そのため、多様で高度なスキルを持った専門家集団との協働が必要となり、それぞれが自律的に行動できるような組織構造が求められます。
現在の自動車のようにラインで流れ生産を行うような場合は、決められた作業を決められた手順で、決められた時間内に実施することが求められます。
そして、組織内には作業者が規定通りに作業を行っているかを管理監督する監督者が必要となり、組織が階層化されていくことになります。
また、企業の組織構造は、競合他社の動向にも影響を受けます。
当然ながら自社が新製品を発売すれば、競合他社も似たような新製品を開発し発売することが考えられます。
そのような時に、競合他社との差別化を図るために新たにカスタマーサポート部門を立ち上げるケースもあります。
このように、自社が行動を起こすことによって、直接的に影響を与えたり、影響を受けたりする環境のことをタスク環境ということがあります。
このタスク環境を構成する要素のうち、競合他社と顧客は重要な要素であるということができます。
内部環境
それでは、続いて内部環境について説明していきます。
内部環境とは、企業組織内部の環境や状況のことをいいます。
内部環境要因のうち、組織構造に影響を及ぼすものとしては、経営戦略や組織内の人材が挙げられます。
経営戦略
まず、経営戦略から説明します。
企業組織を取り巻く外部環境要因が同じであったとしても、各企業組織が同じ組織構造を取るとは限りません。
同じ製造業であっても、自社内で工場を持つ企業もあれば、工場を持たずに外部に製造を委託する企業もあります。
このような違いを生み出しているのが経営戦略の違いです。
外部環境の分析を行った結果は、その企業組織によって異なってきます。
同じような環境におかれていたとしても、企業組織内部のメンバーがどのような点に価値を見出すかは企業組織によって異なってきます。
例えば、新製品を開発し新規市場へ参入することに価値を置くか、既存製品で新規市場を開拓するかといった違いです。
パソコンのように市場変化の激しい業界で自社で工場を持つことは、設備や製造技術が短期間に陳腐化するリスクを伴います。
市場のニーズの変化に柔軟に対応するために、多少調整コストがかかったとしても、外部に生産を委託するという選択肢は、例外的な対応ではないのです。
この経営戦略について特に注意すべき点は、完全無欠な経営戦略というものはあり得ないという点です。
戦略の立案を行うのも人であり、一人一人の能力にも限りがあり、外部環境から得られる情報も完全なものではありません。
企業組織は、自らの組織内にある限られた能力をもって、得られる範囲からの情報を最大限に活用して戦略を練っているのです。
そのため、戦略をより実効的なものにするために、組織構造の在り方も柔軟にとらえる必要があります。
例えば、新製品を開発して新規市場へ参入する場合は、これまでの企業組織から大きく変更を加える必要があるでしょう。
その時に新規に開設する営業拠点を小規模のものとするか、最初から大きなものにするかは戦略によって変わってきます。
あくまで戦略に整合した組織構造を取ることが求められるのです。
人材
次に人材について説明していきます。
企業の経営資源は一般的に、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」と言われます。
経営戦略を実際に実行していくのは、ヒトです。
いかに企業組織内の人材が仕事をしやすいようにするかを工夫していく必要があります。
人の認知能力には限りがあるため、それを前提として協働できるシステムを作ることが求められます。
しかし、練り上げられた戦略を実行していくために、必要な人材を組織化していくことは難しいことです。
どんなに良い戦略を作り上げたとしても、それを実行に移していくための人材が自社内にそろっているとは限らないのです。
そのため、企業組織では自社内にいる既存の人材を最大限に活用できる組織構造を選択していきます。
事業部制組織が望ましいような場合であっても、事業部長を任せられるような人材がいない状況であれば、機能別組織のまま経営を進めるということがあります。
このように組織構造の設計において、人材は非常に重要な条件となっているのです。
今回は、組織構造を決定する条件について、外部環境と内部環境に分けて説明してきました。
ここで注意すべきは、これらの要因は個別に組織構造に対して影響を与えているのではなく、複合的に影響を与えているということです。
企業組織を取り巻く外部環境と自社内の状況の分析を行って経営戦略を練り上げ、自社内の人材等の状況に応じた組織構造を作り上げているのです。
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