リーダーシップ理論
今回はリーダーシップについて説明していきます。
今回の文章を読むことによって、リーダーシップとは何かを学び、リーダーシップに関する様々な理論を理解することができます。
リーダーシップとは
企業組織においてどの階層の人であっても他人を巻き込み、あるいは率いて、結果を出すことが求められます。
ではそんな場合に求められるリーダーシップとはどのようなものでしょうか。
それは、社員に与えられた権限の有無にかかわらず、ある目標の達成に向けて社員の能力や行動を引き出していく能力を指します。
つまり、肩書や地位に基づく形式的な権限だけでなく、知識や情報、その他目標の実現のために必要な資源を集めることができる非公式的なネットワークや対人関係構築能力が求められるのです。
また、リーダーシップについては唯一最適なリーダーシップのスタイルというものは存在せず、その時々のおかれた状況に応じて最適なリーダーシップのスタイルは変化すると言われています。
そのため、組織内でのリーダーシップについて考えるときには、リーダーである人物にとって何が求められるのか、どのようなスキルや資質が必要であるかについてのみ考えるのではなく、組織のメンバー構成を検討して、「組織全体」としてのリーダーシップについて考えることが求められるのです。
リーダーに求められる役割
では、リーダーに求められる具体的な役割とはどのようなものでしょうか。
リーダーに求められる重要な役割は次の2点であると言われています。
?メンバーに目標を与え、仕事を割り振り、必要な情報を提供する
?職場における人間関係等の調整
?は業務の調整を行い、その仕事において目標とする成果を達成するための仕事そのものに関する調整であるということができます。
?は、企業組織には様々な人が集まっていることから意見や見解の相違が発生したり、部門間で利害の対立が発生したりすることもあるため、そのような状況を避けるための調整作業であるということができます。
リーダーシップに関する研究においては、?の人間関係の調整を中心としているリーダーは、?の仕事そのものに関する調整を中心としているリーダーに比べて、メンバーからの苦情や不満が少なくなる傾向があるとの調査結果も出ています。
このことから、企業組織のメンバーが抱く苦情や不満の多くは、人間関係の調整に関するリーダーの対応の不足に起因していると考えられます。
リーダーシップの形態
リーダーシップの形態については、ホワイトとリピットによって示された「専制型」「民主型」「自由放任型」の3つの分類わけがよく知られています。
それぞれについて特徴を見てみましょう。
専制型のリーダーシップは、短期的には他の形態よりも仕事量が多く、高い生産性を得る事ができますが、長期的にはメンバーが相互に反感や不信感を抱くようになってしまい、効果的ではないと考えられます。
次に、民主型のリーダーシップは、短期的には専制型リーダーシップに比べて生産性は低いのですが、長期的にはメンバー間に友好的な雰囲気が生まれて集団の団結度が高くなり、生産性が向上します。
自由放任型のリーダーシップの場合は、組織のまとまりもなく、メンバーの士気も低いため、仕事の量・質とも最も低いものとなります。
しかし、前述したようにリーダーシップには唯一最適なスタイルというものは存在しないため、組織の立ち上げ当初は「専制型」のリーダーシップをとり、組織が安定してきたら「民主型」のリーダシップに移行するといったように、組織の形態や成長度合いに応じてリーダーシップの形態を使い分ける方がより効果的であると考えられます。
リーダーシップに関する理論
リーダーシップに関する理論については、アプローチの仕方によって次の3つの理論に大別することができます。
?リーダーシップ特性論アプローチ
?リーダーシップ行動論アプローチ
?リーダーシップ状況論アプローチ
それぞれについて詳細に見ていきましょう。
?リーダーシップ特性論アプローチ
リーダーシップ特性論アプローチとは、優秀なリーダーとは一般の人々とは異なる優れた個人的特性を持つという考え方と、リーダーシップの有効性はリーダーの個人的特性によって規定されるという仮説に基づくものです。
このアプローチについては、1930年〜1940年ごろにかけて多くの研究が行われました。
その結果、優れたリーダーの持つ個人的特性として以下のようなものがリストアップされました。
a) 知性:学識、判断力、創造性
b) 行動力:判断力、協調性、社交性、適応力、達成志向、根気、忍耐力
c) 信頼感:自信、責任感、地位
しかし、これらの研究において優れたリーダーの持つ個人的特性を特定化するまでには至りませんでした。
それは、優れたリーダーに求められる個人的特性は、集団や組織のタイプやその時々の状況によって異なっているためであると考えられ、?リーダーシップ行動論アプローチへと研究は進んでいきました。
?リーダーシップ行動論アプローチ
リーダーシップ行動論アプローチとは、優れたリーダーシップを発揮する人とそうでない人との間で行動のパターンが異なっているのではないかという仮説に基づくものです。
このリーダーシップ行動論アプローチにおける代表的な理論は、次の2つの理論です。
a) マネジアルグリッド理論
b) PM理論
マネジアルグリッド理論では、「構造づくり」「配慮」という2つの軸に基づいてリーダーシップに関する行動の分析を行います。
構造づくりとは、メンバーに対して仕事を割り振り、業績水準を明確に示し、社内規則や手続きに従うことを求めるような「生産志向」の行動を指します。
一方の配慮とは、メンバーに対して関心を示し、意見を求めたりメンバーの相談に乗ったりして、メンバーの行動を支援するような「従業員志向」の行動を指します。
行動の分析にあたっては、縦軸に従業員志向に関する関心の度合いが、横軸に生産志向に関する関心の度合いが、それぞれ9段階に分けて示され、両方に対して最も関心の高い「9・9型」が最も有効なリーダーシップであるとされています。
PM理論では、「課題遂行(Performance)」と「集団維持(Maintenance)」の2軸に対して高低の2段階を組み合わせて4つのタイプを定義し、このうち2軸が両方とも高い水準にある「PM型」のリーダーシップの下では、組織の生産性や満足度が最も高くなるということが実証的に明らかにされています。
?リーダーシップ状況論アプローチ
リーダーシップ状況論アプローチとは、メンバーのそれぞれの状況に応じてスタイルを変更していくものです。
状況論アプローチで代表的なものがフィードラーのコンティンジェンシーモデルです。
フィードラーのコンティンジェンシーモデルでは、リーダーシップの特性を「一緒に働くのが一番嫌な人(LPC:Least Prefferd Coworker)」の概念を用いて分類します。
リーダーにLPCに該当する人を評価してもらうことで「LPCスコア」を入手します。
このLPCスコアが高いリーダーは、嫌いな同僚であっても好意的な評価を行っていることから、「人間関係志向」が高いリーダーであるということができ、逆にLPCスコアが低いリーダーはいやな同僚を否定的に評価し仕事に感情を持ち込まないことから、仕事への志向の強いリーダーであるということができます。
状況に関する要因としては、「リーダーとメンバーの間の信頼関係」「仕事の構造化」「リーダーの職以上のパワー」という3つの要因から規定される「状況の好意性」の概念が用いられます。
リーダーとメンバーの間の信頼関係が強く、高度に仕事が構造化され、リーダーの職以上のパワーも強いという「状況の好意性の非常に強い」状況と、逆に「状況の好意性の非常に弱い」状況においては、「仕事思考」のリーダーが高い成果をあげ、「状況の好意性が中程度」の状況では「人間関係志向」のリーダーが高い成果をあげると言われています。
以上、リーダーシップについての各理論の説明を行ってきました。
リーダーシップの研究については、個人的特性に着目したものから状況への適応に着目したものへと変化してきました。
リーダーが組織においてリーダーとして機能するためには、リーダーにつき従うフォロワーの存在が必要不可欠です。
個人としてどんなに仕事で高い業績を挙げることができたとしても、リーダーとしての存在を認めて従ってくれるフォロワーがいなければリーダーとなることはできません。
そのためにもメンバーとの間の信頼関係を強化し、状況に応じて適切なリーダーシップのスタイルを取ることができるようにしていく必要があります。
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