モチベーションとは何か その2
[過程理論]
一方の過程理論の代表的な理論としては、ブルームやポーター&ローラーの期待理論や、アダムスらの公平理論があります。
・ブルームの期待理論
それでは、ブルームの期待理論について説明していきます。
ブルームは、仕事に対するモチベーションを発動する要因として次の3つを考えました。
?期待
?誘意性
?道具性
「期待」とは、ある特定の行為が特定の結果をもたらし、努力でよい結果がもたらされる見込みのことです。
「誘意性」とは、目標とする対象の魅力の度合いを意味します。
「道具性」とは、良い結果を出すことが周囲から認知される手段であることをいいます。
周囲から認知される可能性が高い場合、道具性が高いということができます。
ある対象の誘意性は、その対象の持つ道具性によって決まると言われています。
そして、ブルームの期待理論においては、モチベーションの強さは「期待」「誘意性」「道具性」の各要因の積で表されるとしています。
例えば、Aさんがチョコレートの製造工場で働いているとします。
この工場において、1人の工員が製造するチョコレートは1日あたり平均100個です。
この工場でAさんが他の誰よりも働いた時に、1日でチョコレートを150個作ることができるならば、それは「期待がある」ということです。
そして、Aさんが1日150個のチョコレートを作った時に、ボーナスや昇進の可能性があるならば、それは「道具性がある」ということです。
また、Aさんがボーナスや昇進を心底望んでいたのであれば、それは「誘意性がある」ということになります。
モチベーションの強さは、これら3つの要因の積で表されるので、どれかひとつがゼロならば、モチベーションの強さもゼロになります。
ブルームの考えた期待理論には、結果がどのように誘意性を獲得するに至るのかというメカニズムが説明されていない点や、それが努力して得られる結果であるのか、何らかの結果につながると期待される行為であるのか必ずしも明確でないとの指摘がありました。
これらの指摘を受けて新しいモデルを考えた、ポーター&ローラーによって修正が加えられました。
・ポーター&ローラーの期待理論
それでは、ポーター&ローラーによって修正の加えられた期待理論について説明していきます。
ポーター&ローラーの考えた期待理論では、モチベーションの強さは、「期待(可能性)」と「誘意性(欲求の強さ)」で表されます。
例えば、「海外の大学院でMBAを取りたい」「将来は国際的な弁護士になりたい」という強い欲求(誘意性が高い)があったとしても、「挑戦しても絶対に無理だ」と思い込んでいたら期待(可能性)はゼロなので、モチベーションの強さもゼロとなり、そのような行動は起こさないということになります。
逆に、「確実に大学に入学できる」ことや「確実に資格が取れる」ことが分かっていたとしても(期待(可能性)は高い)、希望している対象でなければ誘意性はかなり小さくなるため、そのような行動のモチベーションも低くなります。
実際の企業組織内では、役割・昇進・休暇・友人・自己実現など従業員が高い誘意性を感じているものと、役割遂行能力を結びつけることによってやる気を喚起しています。
最後に、モチベーションの維持が企業組織の質やサービスに対して与える影響について見ていきましょう。
企業組織においては、前述したようなモチベーション理論を活用して、メンバーのモチベーションの向上・維持に努めています。
組織メンバーのモチベーションが高まれば、仕事の質やサービスが高まり、その結果として職務の「生産性向上」や「効率化」につながります。
個々のメンバーの生産性向上が組織全体のパフォーマンス向上につながり、最終的には「従業員満足」や「顧客満足」の向上につながると考えられています。
「従業員満足」や「顧客満足」の向上がメンバーのさらなるモチベーション向上につながり、「好循環のサイクル」が生まれることになります。
言うまでもなく、個々のメンバーのモチベーションが低ければ職務の「質」「サービス」は低く、生産性も向上しないため、組織としてのパフォーマンスも低いままとなり、組織全体のパフォーマンス低下は、顧客満足にも影響を及ぼします。
つまり、企業組織全体でのパフォーマンス向上を実現するためには、個々におけるモチベーションを高めなければならないということです。
一方で、同じ職場内の「顧客」(上司・同僚・隣の部署等)を満足させることも、組織全体の「質」「サービス」を向上させ、結果的に顧客へのサービスの質を高めることにつながり、顧客満足向上につながることも忘れてはいけません。
・アダムスの公平理論
最後に、アダムスの公平理論について説明していきます。
人は、誰でも自己の仕事量や投入量に見合う報酬や結果を得たいと願うものです。
公平理論とは、この投入と結果の比が他のメンバーと等しい場合を公平、等しくない場合を不公平とよび、不公平の程度が大きいほど人はより不快となり、その解消へと動機づけられるとするものです。
不公平には不足(過小報酬)ともらいすぎ(過大報酬)の2つがあり、不公平の解消には以下のような対応策があります。
?自己の投入を変える(努力量の増大/低下)
?自己の結果を変える(報酬のカットや返却、昇給の要請)
?自己の投入や結果を認知的に歪曲する
?不快な比較を避け、その場を去る
?比較他者の投入と結果の比を変える
公平理論は、報酬の分配にとどまらずに投入と結果にさまざまな要因をあてはめることによって、援助行動や親密な他者との魅力関係など多様な人間行動を説明できます。
以上、見てきたように企業組織を構成するメンバーのモチベーションの度合いが、企業組織全体のパフォーマンスに大きな影響を及ぼし、最終的には顧客満足にも影響を与えます。
メンバーのモチベーションをどのような要因で高めていくか、また、どのようにして引き出していくかは、組織のリーダーやマネージャにとって重要な課題となってきます。
そのためにも、欲求5段階説や動機付け-衛生理論、期待理論などのモチベーションに関する理論の理解に努めましょう。
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