組織の分化と統合
【分化と統合】
今回は組織の分化と統合について説明していきます。
今回の記事を読むことによって、組織構造の分化や統合の種類を学ぶことができます。
組織での分業のところでも見てきたように、組織構造の設計にあたっては分業しつつもどのように協働すべきかが重要なポイントとなります。
【組織の分化】
まず、分化について見ていきます。
企業組織の分化とは、外部環境の変化に適応していくために組織内の機能を独立させることをいいます。
例えば、創業時点では研究開発をひとつの組織内で担当していても、その後の環境の変化に合わせて、基礎研究部門と生産技術部門を別組織に分けたりします。
組織の分化については、大きく分けて次の3つのパターンがあります。
?専門化型
?プロセス分割型
?スピンオフ型
それでは専門化型から順に見ていきましょう。
?専門化型
専門化型とは、組織の専門性や生産性を向上させるために、担当する業務を限定し、その分野でのプロフェッショナルとして業務を遂行していくために分化するパターンです。
専門化の例としては、企業組織の創業時からバックオフィス機能全般を担当してきた総務部門が、人事部門、経理部門など担当する業務分野ごとに別組織に分かれるパターンが該当します。
?プロセス分割型
プロセス分割型とは、業務プロセス全体を効率化するとの観点から、一連の業務プロセスから特定のプロセスだけを担当する部門を切り出して、一組織として分化するパターンです。
具体例としては、新製品の企画から販売促進、営業活動、売掛金回収までを担当していた販売部門から、新製品企画機能と販売促進機能を切り出して、マーケティング部門として独立した組織とするパターンがあります。
?スピンオフ型
スピンオフ型とは、特定の機能を担う部署自体を企業組織から分離するパターンです。
このスピンオフ型の分化には、社内ベンチャーによる新規事業部門の独立などが該当します。
全社的な企業価値の向上や事業戦略との整合性といった観点から、同じ企業組織内におくことによりかえってビジネスリスクが高くなってしまう場合や、組織外に出したほうがより高い企業価値を実現できる場合にスピンオフを検討することになります。
【組織の統合】
次に組織の統合について説明していきます。
組織の統合とは、環境の変化に対応するために分化した機能に対して、全社的な視点から統一性と整合性を与えることをいいます。
組織の統合も大きく分けて次の3パターンに分類されます。
?合同型
?連鎖型
?相互型
では、合同型から順に説明していきます。
?合同型
合同型は、核となる機能をもつ部門を中心として、その下位にある複数の部門を統合するパターンです。
例えば、地域ごとに配置されている販売拠点の管理を本社の営業本部を統括して行う場合や、各地に分散して配置されている製造拠点の生産計画を、市場の動向を見ながら本社が管理する場合まどが該当します。
?連鎖型
連鎖型は、一連の業務プロセスを構成している複数の部門を統合するパターンです。
組織の分化の「プロセス分割型」の逆のパターンにあたります。
連鎖型の例としては、在庫管理部門と出荷業務部門を連携させて、物流管理機能全般を担当する部門をつくる場合などが該当します。
?相互型
相互型の統合では、タスクの関連性が強い部門同士を統合します。
事業部門ごとに新製品開発部門がある場合に、試験研究データを互いに交換したり、研究部材を融通しあったりする場合などが該当します。
また、最近では組織の分化と統合をダイナミックかつ迅速に行っていくための新しい方法として、「パッチング」という考え方が出てきています。
パッチングとは環境変化に適応して事業構成を見直すために、小規模な組織の分化や統合を頻繁に実施することです。
パッチングの例としては、新製品の開発や普及を効率的に推進するために新たな企業組織を作って対応させ、一定の成果が挙げられた後で、母体となった企業本体の強化のために母体の組織に統合させるというケースがあります。
パッチングという概念が出てきた背景としては、市場環境の変化が激しい中で成果を挙げていくために、経営戦略に適した組織構造を迅速かつ的確にデザインしていかなければならないという課題があります。
組織構造を素早く改編することができれば、その分だけ企業の競争力強化につながるということです。
企業組織は、経営を取り巻く環境が常に変化する中で、自らの経営戦略を実行していくために最適な組織構造を模索しています。
企業組織は、適切な組織構造を構築・維持していくために、組織の分化や統合を行っているのです。
その対応のスピードは、パッチングの概念の登場が表すように以前よりもスピードアップしていると言うことができるでしょう。
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