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人事部の業務

人事部の業務

今回の文章では人事部の業務内容について説明していきます。

 

今回の文章を読むことによって、日本企業の人事部が伝統的に担ってきた主な業務内容と、人事関連の業務を行うにあたって遵守すべき労働関連の法令について学ぶことができます。

 

日本企業の人事部が担ってきた業務

 

それではまず、日本企業の人事部が担ってきた業務内容について見ていきましょう。

 

人事部の主な業務内容は、次の2つに分類することができます。

 

人事部の業務1

 

(1)人事施策の企画立案〜実施

 

 ・採用活動(特に新卒採用)の企画立案〜実施

 

 ・昇格、昇給や人事異動の提案

 

 ・社員研修の企画立案〜実施

 

 ・人事考課に関する情報のとりまとめ

 

 ・従業員に対するキャリア・カウンセリング 

 

 ・人員整理  等

 

(2)職場環境の維持

 

 ・労務管理、就業管理

 

 ・労働組合との調整

 

 ・給与や福利厚生に関する事務

 

 ・社員の健康維持支援  等

 

欧米の企業に比べて日本企業では人事部の機能が強いと言われています。

 

日本企業の人事部は、労務管理や給与・福利厚生等の事務といった職場環境の維持業務に加えて、社内人材のデータベース(入社年次、出身校、履歴、考課等)としての機能を持っており、昇格・昇給・異動といった社員の処遇について積極的に提案するという点に大きな特徴がありました。

 

また、社員の採用活動や研修についても人事部で一括して実施することも大きな特徴です。

 

一方の欧米企業では、社員の採用や人事考課、昇進・昇格等は各業務担当部門に任されており、人事部は社内の制度設計や従業員へのインフラ提供を主な業務内容としています。

 

人事部の業務内容の変化

 

上記のような業務を行っている人事部ですが、近年ではどのような変化が発生しているでしょうか。

 

人事部の業務内容の変化について見ていきましょう。

 

近年では、「よい人材が企業の力の源泉」との認識が広まり、人事部に対してもより中長期的な組織力向上への寄与が期待されています。

 

企業によっては、「人材」を重要視していることを対外的にアピールするために、「人財」という表現を行っているところもあります。

 

このような変化に伴って、業務内容も「人事施策の企画立案〜実行」の方に比重が置かれるようになってきています。

 

しかも、トップマネジメントの指示を受けてから対応を開始するのではなく、経営戦略に従って能動的に提案や行動を求められているのです。

 

このような流れの中、社員採用については画一的に実施される新卒採用にくらべて、よりピンポイントで欲しい人材を採用できる中途採用の比重が高まってきています。

 

社員に対する研修については、かつては対象者全員に対して一律に実施されていた「昇格者研修」は減少し、より戦略的に人材育成を行うために対象者を絞り込んで実施する「選抜型研修」が増えてきています。

 

そして人事異動の面については、かつては総合職社員を必ずしも明確な意図がなくても様々な部署へ異動させるジョブ・ローテーションが行われていましたが、近年ではさらなる経営力強化を意識した人材配置を提案することが人事部には期待されるようになっています。

 

また、企業の経営理念や企業文化の浸透についても、以前に比べて積極的に取り組む人事部が増えてきています。

 

社史の編纂や社内報の発行等を通じて、これまで暗黙的に社員間で引き継がれてきた事項を明示化し、その伝達のためのコミュニケーション・ツールの提供を行っているのです。

 

以上のように近年では戦略的な人事施策の立案や実行が業務の中でも特に重要視されていますが、その一方で、社内インフラとして従業員が安心して働ける職場を提供することも人事部にとっての重要な業務の一部です。

 

そのような観点から近年の動向をいくつか取り上げていきます。

 

@労使関連業務(労働組合関連業務)

 

この労使関連業務(労働組合関連業務)とは、賃金や労働時間をはじめとする労働条件に関する社員への状況確認や労働組合との交渉に関する業務のことです。

 

かつて、この労使関連の業務は人事部や総務部の重要な業務でしたが、近年では労働組合の活動の低下や労働組合への加入率の低迷をうけて、重要度は低下してきています。

 

労働組合の活動が低下した背景としては、日本経済が成長し、成熟化していくのに伴って労働組合を構成する社員の生活水準が向上し、労働組合での活動の意義が薄れてしまったことや、労働運動の精神的な背景にある特定のイデオロギーが衰退傾向にあることが挙げられます。

 

しかし、労働組合には経営者の行き過ぎた行動を抑制するガバナンス機能としての役割も担っており、企業組織と労働組合との健全な関係づくりは今後新しい段階へ進むことが予想されます。

 

A労務管理・就業管理

 

この労務管理や就業管理については、労働時間に関する取り決めを行ったり、在宅勤務制度の導入を検討することが含まれます。

 

なお、労働基準法の規定では企業と社員の間で雇用契約を結び、その中に雇用条件が含まれるのですが、日本では、雇用契約書を作成することはあまり多くはなく、統一の就業規則によって就業条件を定めることが一般的となっています。

 

この就業管理に関して特に問題になるのが、時間外労働に関する問題です。

 

日本において時間外労働が認められる場合とは、労働基準法第33条第1項に定められた「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合において、使用者が行政官庁の許可を受けた場合」以外では、36協定が結ばれた場合のみです。

 

36(さぶろく)協定とは、労働基準法第36条に基づいて使用者と労働者の過半数以上で構成する労働組合の代表者又は労働組合が存在しない場合は過半数以上の労働者の代表者との間で、時間外労働や休日労働について協定を書面にて締結し、所轄労働基準監督署に届出を行ったものです。

 

36協定を結んでいない場合、法定労働時間を超えて社員を労働させることは労働基準法違反となりますが、中小企業では必ずしも遵守されていないこともあり、より一層の状況改善が望まれています。

 

労働基準法第41条では、業務の管理・監督の立場にある者については労働時間等に関する事項の適用対象外とされていますが、だからと言って管理職を無制限に働かせたり長時間労働を放置してはいけません。

 

近年では、ファーストフード店や居酒屋を運営する企業において、社員である店長が長時間のサービス残業を強いられた上に自殺するという事例が発生し、社会的にも大きな問題となっています。

 

そのような企業は「ブラック企業」とのレッテルを張られ、社会的にも批判が高まっています。

 

人事部にとっては、管理職も含めて社員の勤務実態を正確に把握し、経営陣に対して改善提案を行い、現場の生産性を高めていくことも重要な役割の1つなのです。

B社員の健康管理

 

ここでの健康管理には、肉体的な健康管理と精神的な健康管理の2つがあります。

 

時間外労働に関する取り決めも元々は社員の病気やけがを避けることが理由の1つでした。

 

また、業務上の事由や通勤途上での疾病や負傷等の事故は労働災害(労災)と呼ばれ、その発生状況によっては、管理者に業務上過失致傷罪等が科せられることもあります。

 

人事部門は、各部門と協調しながら職場環境の改善や労災防止のための啓蒙活動に努めることが必要です。

 

また、近年では精神的な健康(メンタル・ヘルス)の問題がクローズアップされるようになってきています。

 

経営環境の厳しさから経営にスピードが求められ、現場の社員に対するストレスが強まっていることがその背景にあります。

 

長時間のサービス残業を強いられたり、上司からパワハラ的な言動を受けた結果、精神的に追い詰められてしまい、うつ病を発症して退職せざるを得なくなったという事例も増加しています。

 

多くの企業では、人事部が中心となってメンタル・ヘルスに関する管理職研修を開いたり、社員を対象に調査を行ったりして、メンタル・ヘルスの維持に努めています。

 

また、一定の規模以上の事業所に設置が義務付けられている産業医を活用したり、専門のカウンセラーを職場に配置したりする企業も増えています。

 

C福利厚生

 

福利厚生については、報酬システムのところでも触れた通り、欧米の企業と比較して日本企業では住宅関連の費用が多く含まれています。

 

この住宅関連費用の中身としては、社宅や独身寮の運営費等が含まれています。

 

また、アメリカの企業と比べると医療費関連の費用が少なくなっており、これは、日本が国民皆保険性を採用していることが関連しています。

 

また、日本企業では有給休暇や育児休暇の取得率が低い点も特徴として挙げられます。

 

前述の社員の健康管理に関する問題とも関連して、今後より一層の改善が望まれる分野ということができるでしょう。

 

労働・人事関連の法律

 

最後に、人事部として最低限押さえておくべき労働関連の法規について取り上げます。

 

より詳しく理解を深めたい方は下記に挙げた法律を学習してみるとよいでしょう。

 

人事部担当者としては、労働・人事関連の法律の動向を把握し、必要に応じて経営陣に対して適切な助言を行うことも重要な役割の一つです。

 

労働・人事関連の法律のうち、特に「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」は労働三法とも呼ばれ、かつては、これらを理解しておくことが人事担当者として必須の条件とも言われていました。

 

1)雇用条件に関するもの

 

 ・労働基準法:労働時間や労働契約等、労働全般に関する基準となる法律

 

 ・最低賃金法:地域別の最低賃金に関する法律

 

 ・労働安全法:労働者の安全と健康維持に関する法律

 

 ・男女雇用機会均等法:労働上の男女間(特に女性に対する)の差別をなくすための法律

 

 ・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律:育児休業や介護休業に関する法律

 

 ・短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律:パートタイム労働に関する法律

 

 ・高年齢者雇用安定法:高齢者の雇用に関する法律

 

2)労使関係に関するもの

 

 ・労働組合法:労働組合に関する法律

 

 ・労働関係調整法:ストライキやロックアウトに際しての労働委員会による裁定に関する法律

 

3)労働市場に関するもの

 

 ・職業安定法:職業紹介事業等に関する法律

 

 ・職業能力開発促進法:職業訓練や職業能力検定に関する法律

 

 

以上のように、人事システムの設計や運用以外に人事部門に求められる業務内容について説明してきました。

 

人事部門の担当者には、企業の経営戦略を実現するための仕組みを作り、人を動かしていくこと以外にも、組織メンバーがその能力を発揮しやすい職場環境作りも求められています。

 

人事部の業務2

 

特に近年では、メンタル・ヘルスに関する問題が大きく取り上げられるようになってきています。

 

メンタル・ヘルスの管理については、その分野に関する公的資格も出てきており、これらの資格の勉強に取り組むことも、人事担当者の能力向上に役立つことが考えられ、有効活用していくことが望ましいと言えるでしょう。


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