聴き手を導く②(どのように伝えるか)
前回の「聴き手を導く?」で、プレゼンテーションにおいて「何を伝えるべきか?」を書きました。
そこで今回は、伝えるべき内容は決まった上で、それを「どのように伝えるのか?」を書いていきます。
プレゼンテーションの型
良いプレゼンをするには「プレゼンの流れ」が大切になります。
文章で書く企画書でも、書く順番(読み手が読むであろう流れ)は読み手の気持ちを考えながら書いていきます。
しかし、企画書はそのままの順番で読んでくれるとは限りません。繰り返し読んだり、途中で内容を飛ばして読んだりと、読み手が自由に順番を決めることも出来ます。
ですが、プレゼンの場合は、基本的には「プレゼンター」の話の順番どおりに聴いてもらえます。
それはメリットでもありますが、逆に導入部分で興味を引けなかったり、途中で共感できなかったりすれば、集中して聴いてもらえない状態に陥ります。
つまり、「最初から最後まで興味を持ってもらい、飽きさせずに話を続ける必要がある」のです。
よって「プレゼンの流れ」が大切になってきます。ここでは「プレゼンの流れ」を「ストーリー」として説明していきます。
プレゼンのストーリーには様々な形(型)がありますが、以下の代表的な型を説明します。
1.小論文型
2.ドラマ型
3.ビジネス提案型
それぞれ見ていきましょう。
1.小論文型
学生の時などに書いた小論文で使われる型です。ストーリーを「起・承・転・結」で書いていくものです。
「起承転結」の「起」は、ストーリーの初めの部分ですので、「興味」を持ってもらう内容にしていきます。若干の「驚き」や「なるほど」と感じさせることが必要です。
「承」は、「起」で起こした内容を受け、ストーリーを展開させて(話を広げて)いきます。
「転」は、「承」で展開した内容を一度変化させます。注意点としては、あくまで「承」からの続きであり、次の「結」に結び付く内容になることです。
「結」は、最後のまとめです。ここで「伝えたいこと」「結論」を言います。
例えば、学生が自己PRをする時に、単に「留学していました」と言っても他の学生との差が付きません。
そこで、起承転結のストーリー化をしていきます。そうすると、このような自己PRになります。
「(起)私は外国人の友達が200名います。
(承)なぜかというと、大学に入学したら留学をしたいと中学生の時から考えていたので、その頃からインターナショナルスクールに通いました。そこで、多くの外国人の友達が出来たのです。
(転)しかし、インターナショナルスクールに通って外国人の友達が出来たので、英語はすっかり上達し、わざわざ留学する必要もなくなってしまいました。
(結)それでも私は海外留学しました。英語を学ぶことが目的ではなく、海外の街での生活や、世界各国から来た留学生との交流をして異文化を学ぶことが目的でした。
その中でさらに英語も上達できたのですが、それよりも様々な文化の理解が深まり、海外とのつながりが深い貿易の仕事をしたいと思うようになったのです。」
以上のように、起承転結で伝えることによって話の幅が広がり、その内容に興味を持ってもらいやすくなります。
2.ドラマ型
ドラマ型というのは、テレビドラマや映画のようなストーリー構成の事を言います。
日常生活がそのままドラマや映画になることはありません。ですが、あえてドラマチックな驚きの出来事からスタートして説明します。
記憶に残っているドラマや映画を思い出してみるとわかると思いますが、一つ例を挙げると「今まで普通の日常を送っていた人がある日突然・・・」という話で始まり、「そこから世界を救う使命に気付き・・・」「でも、恋人とのいざこざが起きて・・・」「そこで、改めて使命を考え・・・」「最後には、世界を救う旅に出る」というような王道のストーリーです。
基本的には、「つかみ→飽きさせない本編→感動のラスト」という順番です。
起承転結の流れとも似ていますが、もう少し起伏の激しいストーリー展開としていきます。
3.ビジネス提案型
企画書や提案書などを書くときには、結論を先に書きます。なぜなら、長ければ読んでもらえないかもしれないからです。
文章に飽きる前に、まず結論から入り、その後で結論の説明(理由や提案など)をしていく、というストーリーとなります。これはプレゼンでも同様です。
これらは、事典やインターネットの用語説明のコンテンツでも同じような流れになります。
調べている人が知りたい「結論」を先に書き、その後で結論に至る理由や証明などをしていきます。
以上の3つのストーリー展開がありますが、ビジネスのプレゼンでは、結論から話す「ビジネス提案型」で作成することが多いです。先述したように、結論を伝えないと興味や共感を持ってもらいにくいからです。
しかし、プレゼンの目的や聴き手の状況によって、その他の型の方が良い場合もあります。そのため、目的や聴き手の状況は先に押さえておくべきです。
聴き手に伝わるプレゼンにするために
上記のように、プレゼンを作成する際はストーリーは検討していきますが、型だけを考えればよいわけではありません。
相手に伝わるプレゼンにするために、ストーリーの中で忘れてはいけない点を書いていきます。
?興味を持ってもらう
?信頼してもらう
?共感してもらう
それぞれ見ていきましょう。
?興味を持ってもらう
「小論文型」も「ドラマ型」も、最初に興味を持ってもらうような「変化」や「驚き」を持ってきます。
では、「結論」から話す「ビジネス提案型」なら興味を持ってもらう必要がなくても良いのでしょうか?
プレゼンを最後までしっかりと聴いてもらうには、「ビジネス提案型」でも興味を持ってもらうことは必要です。
よって、どの型にするにしても、聴き手に「興味を持ってもらおう」と言う考え方は必要なのです。
?信頼してもらう
プレゼンは聴き手の信頼を得ないと聴いてもらえないし、行動もしてもらえません。
プレゼンをする人の信頼度という意味では、「その人がプレゼンをするに値する人かどうか」という点を意識します。
例えば、「プレゼンターがその分野の専門家であり、何十年も研究に取り組んできた」だとか、「プレゼンする商品が○○賞を取った」などです。
または、プレゼンターや商品自体に権威がなくても、「○○大学の教授の推薦」や「○○研究所の研究結果」などを説明することにより信頼度が上がります。
さらに、既存の顧客の声なども信頼度につながります。
これらの信頼度が上がることによって、聴き手が持っている不安や疑問を解消していくことが出来ます。それが出来れば、良いプレゼンにつながります。
?共感してもらう
プレゼンをしていく中で、聴き手に共感をしてもらうことが大切になります。
初めの「興味を持ってもらう」にしても、プレゼンと何の関係もない分野で興味を引いても意味はありません。共感してもらい、最終的な行動までもっていくことがポイントなのです。
また、2番目の「信頼してもらう」にしても、共感されないと行動されません。
例えば、どんなに権威のある人でも、聴き手を否定して嫌な気分にさせるようなことがあれば、最終的な行動につながらない(=良いプレゼンにならない)のです。
以上のような点を忘れずにストーリーを考え、聴き手を導いていくことが良いプレゼンにつながっていくことになるのです。
<事例>
繊維メーカーに勤めるAさんは、営業部署に転属になりました。今まで生産管理を行っており、営業やプレゼンとはあまり関係のない部署でしたが、今後は多くなってきます。
そこで、Aさんの上司のBさんは、プレゼンの作り方に慣れるために、取引先のY社へのプレゼンをAさんにやってもらうことにしました。
Y社とは長い取引関係があるので、新たに関係を構築するようなプレゼンをする必要がなく、「新素材の説明」をするだけで良いからです。
その中で、上司のBさんはAさんにプレゼンのレクチャーをしていきます。プレゼンにも様々な型がありますが、今回のように「素材の良し悪し」だけを伝えたい場合は、「冒頭で結論を述べ、後からその素材の具体的な説明をするように」と伝えました。
Aさんは、プレゼンというと「感動のスピーチ」のようなものをイメージしていたので拍子抜けしてしまい、Bさんにそれを伝えました。
しかし、Bさん曰く「結論を先に出す型がいつも良いわけではない。感動のスピーチのようなドラマ型のプレゼンの方が良い場合もある。それはプレゼンの目的、聴き手の状態を見ながら必要性に応じて使い分けていく」ということでした。
これにより、Aさんは今後増えていくプレゼンに対しても「それぞれのケースによって型を使い分けよう」と思ったのです。
まとめ
・企画書の場合は読み手が自由に順番を決めることが出来るが、プレゼンの場合は基本的に「プレゼンター」の話の順番どおりに聞くしかない。
・プレゼンの導入部分で興味を引けなかったり途中で共感できなかったりすれば、集中して聴いてもらえない。
・プレゼンのストーリーには様々な型があるが、代表的な型は次の3つである。
1.小論文型
2.ドラマ型
3.ビジネス提案型
・プレゼンのストーリーを考えていく上で忘れてはいけない点は次の3つである。
?興味を持ってもらう
?信頼してもらう
?共感してもらう
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