スライド作成ノウハウ
今回はスライド作成のノウハウについて説明していきます。
この文章を読むことで、スライド作成時の注意点について学ぶことができます。
スライド作成時の注意点
プレゼンテーションをする際に、「スライド(プレゼン用ソフトのパワーポイントなど)を絶対に使いなさい」という決まりはありません。
しかし、口頭だけの方法よりも伝わりやすいので、多くの場合スライドを活用してのプレゼンを行います。
しかし、このことは「良いプレゼン」をする準備では間違いを起こすこともあります。「良いプレゼン」をするために、「スライド作成に力を入れさえすればよい」と勘違いしてしまう人も多いからです。
前回までをみてきたように、「聴き手の事を知り、目的を明確にし、伝えやすい方法を選ぶ」ことが前提です。これが出来ていない状態でいくらスライドに力を入れても、内容が伝わらないプレゼンになってしまいます。
よって、聴き手のことを知ったり、目的を明確にしたりするという前提があることは忘れないでください。
この前提がある状態で、さらに気を付けるべき点はいくつかあります。
1.ワンシート、ワンメッセージ
2.余分な情報を入れない
3.見やすさを追求する
それぞれ具体的に見ていきましょう。
1.ワンシート、ワンメッセージ
スライドは「ワンシート、ワンメッセージ」が基本となります。つまり、一つのシートに一つの情報しか入れないということです。
スライドを作成していると、「これも入れたほうが良い、あれも入れたほうが良い」と情報を増やしてしまいがちです。
しかし、聴き手からすると、一つのシートに多くの情報がある場合、頭の中で処理しきれず理解しづらくなるのです。
また、前回までの全体のストーリー展開をしっかりと立てていないと、スライドを作成していく中で迷いが生じることもあります。
そうすると、「ワンシート、ワンメッセージ」は守っていても、そのシートのタイトルと結論が違うということにもなりかねません。
よって、「ワンシート、ワンメッセージ」を守るため、シート内での整合性を保つためには、タイトルとは別の「そのソートの要約を一行程度で書くこと」が大切です。
これによって、メッセージが複数になったり整合性を失ったりすることを防ぐことが出来るのです。
2.余分な情報を入れない
上記の「ワンシート、ワンメッセージ」にもつながるのですが、余分な情報をスライドの中に入れないようにします。
これも、スライドを作成している中で、「もうちょっと情報を与えた方が良いのでは?」という考えが生まれ、余分な情報を入れてしまう場合があります。
例えば、スライド内に余白が出来てしまい、その部分を埋めるために「伝えたいメッセージとは関連性のない図式や画像を無理やり入れたりすること」です。
もちろん、必要に応じて図式や画像を使えば強力なメッセージになります。
逆に言えば、あまり関連性がない場合に入れると、その図式や画像の方に注意が引かれ、本来の伝えたいメッセージが伝わらなくなってしまうのです。
3.見やすさを追求する
スライドはパソコン上で作成するので、文字が多少小さくても十分に読むことが出来ます。しかし、いざプレゼン本番でスライドをスクリーンに映し出すと、文字が小さすぎて読めない状態になる場合があります。
タイトルは大きく目立たせるのと同時に、スムーズに読めることを前提とすれば、本文の文字でも24ポイント以上はあったほうが良いです。「ギリギリ読めればよい」という場面でも、18ポイント以上は必要です。
また、図式(図形、グラフ、チャートなど)を入れる場合も、単純に図式を入れればよいわけではありません。聴き手にとって、より分かりやすい図式にしていく必要があります。
そのためには客観的に見やすさを追求していきます。
例えば、図式を複雑にし過ぎても余計に分かりにくくなります。
一方、グラフなどは、「そのグラフが何を示しているか」についてグラフに注釈を付けたほうが分かりやすくなる場合もあります。(注釈も絶対につけるというわけではなく、「分かりやすくなるのであれば追加する」という意味です。)
以上のように、スライド作成時には、聴き手の立場に立って作成することが大切になります。
そのためには、客観的な立場で見るようにするだけでなく、他の人にも見てもらって分かりやすさを追求して作成するべきなのです。
<事例>
経理部の責任者のAさんは、マイナンバー法に対応するために、社内の業務フローを変更するプロジェクトを立ち上げました。
マイナンバー法に対応するには、経理部門だけでなく総務部門や情報システム部など、複数の部署に渡って業務フローを変更していく必要があるからです。
業務フローの変更に伴って費用も掛かるので、プロジェクトで検討した内容を役員会でプレゼンを行い、承認を受ける必要が出てきました。そこで、そのプレゼンをAさんが行うことになり、パワーポイントを使用してプレゼン資料を作成することにしました。
しかし、Aさんは入社以来経理部門一筋ですので、あまりプレゼンの経験はありません。そのため、プレゼン資料をどのように作成するべきか迷ってしまいました。
そこで、Aさんだけでプレゼン資料を作成するのではなく、総務部や情報システム部の方々に助けてもらいながら作成していこうということになりました。
一旦、プロジェクトとしての意見をAさんがまとめてスライドを作成します。そして、プレゼンの練習も兼ねてプロジェクトメンバーに向けてプレゼンをしていきます。そのプレゼンをプロジェクトメンバーが見て、スライドの改善点を伝え修正していくという流れにしました。
プロジェクトメンバーが改善点を伝える視点としては、客観的に「聴き手として分かりやすいかどうか」という点です。この視点で改善点を伝えないと、プロジェクトの内容を知っているメンバーの視点では、分かりやすいスライドにならないからです。
こうしてAさんは、実際に資料を作成した後、プロジェクトメンバーの前でプレゼンを行いました。そこで、プロジェクトメンバーから様々な改善点が指摘されます。
Aさんは伝えたいことが多くあるので、一つのシートに情報を詰め込み過ぎてしまっていました。また、聴き手が「経理の業務フローを知らない役員もいる」ということを忘れ、説明が不足していました。
そうして、他の人からの指摘を受けて修正していきます。多くの情報を詰め込むことで文字が小さくなっていましたが、それを別々のシートに分けることによって分かりやすくなったのと同時に、文字も大きくすることができ、見やすさもアップしました。
また、文字ばかりになっているシートがある一方、図式を入れたシートは図式が複雑すぎて理解しづらいものが多かったのです。
それに関しても文字ばかりのシートには補足する図式を入れ、理解を促すシートに修正しました。また、複雑な図式のシートでは図式を思い切って簡素化し、強調したい部分のみを書くようにしたのです。
こうしてAさんは、複数の部署にまたがる複雑なプロジェクトを「聴き手にとって分かりやすいプレゼン」にすることが出来たのです。
まとめ
・プレゼンをする時に、スライドを使わなければいけないという決まりはない。しかし、口頭だけの方法よりも伝わりやすくなるので、多くの場合スライドを活用してのプレゼンをする。
・「良いプレゼン」にするには、「スライド作成だけに力を入れればよい」と勘違いしてはいけない。前提として、「聴き手の事を知り、目的を明確にし、伝えやすい方法を選ぶ」ことが出来ていなければ、いくらスライドに力を入れても伝わらないプレゼンになってしまう。
・スライドを作成する時に、気を付けるべき点
1.ワンシート、ワンメッセージ
2.余分な情報を入れない
3.見やすさを追求する
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