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戦略的意思決定6(ペイバック法)

戦略的意思決定6(ペイバック法)

【ペイバック法とは】
戦略的意思決定の代表的なものはDCF法です。

 

しかしDCF法は計算が複雑で外部への説明が難しいなどの理由から、わかりやすく説明するための手法としては適さない場合があります。

 

そんなときに使われる意思決定の方法が、ペイバック法と呼ばれる方法です。

 

ペイバック法は回収期間法とも呼ばれ、営業活動によるキャッシュフローが何年で投資金額を上回るかを計算することによってその意思決定を行おうというものです。

 

よく新聞などで、大規模な投資決定をした会社の経営者が「この投資は3年で元が取れる」などと説明をしていることがあります。

 

これはペイバック法で計算された結果について述べているものと思われます。

 

そしてペイバック法はキャッシュフローではなく会計上の利益で計算される場合もあり、かつ通常はキャッシュフローを現在価値に割り引かずに計算します。

 

また、このペイバック法の考え方は、私たちの日常生活でもよく使われます。

 

例えばあるコーヒー店で、通常1杯300円のコーヒーの回数券が1,500円で売られているとします。

 

そしてこの回数券を購入すると、コーヒーを6杯飲むことができます。

 

この場合、そのコーヒーをよく飲む人は回数券を購入したほうがお得です。

 

この回数券を買って5杯コーヒーを飲んだ段階で投資資金はペイバックされ、6杯目は無料となって潜在的な利益となるからです。

 

「5杯以上コーヒーを飲めば元が取れる」、これがペイバック法の考え方です。

 

なお、この場合店側としてはただ1杯分が無料になってしまうため、メリットがないように思えますが、先に5回分の支払いを済ませてもらうことでキャッシュフローが改善するという利点があります。

 

 

【ペイバック法で意思決定を行う】
では実際にペイバック法で意思決定を行ってみましょう。

 

例えば以下のようなケースを考えてみます。

 

・初期投資を行った年の期初
初期投資費用 1,000万円(耐用年数5年、残存価額0、定額法で減価償却)

 

・初期投資を行った年の期末
営業利益 200万円
キャッシュフロー 280万円

 

・翌年度の期末
営業利益 400万円
キャッシュフロー 410万円

 

・3年目〜5年目の期末
営業利益 600万円
キャッシュフロー 540万円

 

上記は前の記事のDCF法で計算した時と同じ投資額、営業利益、キャッシュフローです。

 

この場合、ペイバック法で計算すると結果は以下のようになります。

 

≪営業利益で計算した場合≫
1年目 −1000+200 = −800
2年目 −800+400 = −400
3年目 −400+600 = 200

 

この場合は3年で元が取れる(投資資金を回収できる)ことになります。

 

≪キャッシュフローで計算した場合≫
1年目 −1000+280 = −720
2年目 −720+410 = −310
3年目 −310+540 = 230

 

この場合も3年で元が取れる(投資資金を回収できる)ことになります。

 

そしていずれもペイバックされた時点(ここでは3年目)で計算は終了しており、何年間で投資資金が回収できるかだけを考えています。

 

これがペイバック法の計算方法なのです。

 

 

【ペイバック法のメリットとデメリット】
次にペイバック法のメリットとデメリットを考えてみましょう。

 

ペイバック法のメリットとデメリットには以下のようなことが挙げられます。

 

 

≪メリット≫
・計算が容易である。

 

・外部関係者でもその意思決定のイメージをとらえやすい。

 

 

≪デメリット≫
・現在価値に割り引かない場合、正確性に乏しくなる。

 

・回収後の利益(あるいはキャッシュフロー)が無視されるため、複数の選択肢がある場合は回収後に利益が大きくなる投資よりも回収までの期間が短い投資が優先されてしまう。

 

・会計上の利益で判断した場合、本当の意味での利益ではない可能性がある。

 

 

ペイバック法はさほど時間をかけることなく資金の回収期間を把握できるため、便利な方法と言えますが、その一方で投資の本当の利益を把握することが難しい方法です。

 

よって、これらのメリットとデメリットを理解した上で、DCF法などと併用することが最も望ましいと言えるでしょう。

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