ABM(活動基準管理)とABB(活動基準予算管理)
【ABMとABB】
ABC(活動基準原価計算)では、原価の中の間接費を直接費に合わせるのではなく、その活動によって決めるということを学びました。
そしてABCで正確な間接費を把握するには非常に手間がかかりますが、近年の激しい競争に打ち勝つためには有用な考え方であることも学びました。
次に、ABCの延長にある考え方としてABM(活動基準管理)とABB(活動基準予算管理)があります。
ともにABCの考え方を応用してさらに経営を効率化しようという考え方です。
ここではABMとABBについて考えてみましょう。
【ABMとは】
ABM(活動基準管理)とは、ABCの考え方を単に原価計算にとどめるのではなく、活動を会社にとって付加価値を生み出すと認められる「付加価値活動」と付加価値を生み出すと認められない「非付加価値活動」に分類し、非付加価値活動を可能な限り排除していこうという考え方です。
例えば「ABCの活用方法」で、自動車部品製造会社であるS社は以下のことを行いました。
1.製品Aと製品BについてABCで正確な原価を計算し、実際の原価とそれまで考えられていた原価とに誤りがあったことを突き止めることに成功した。
2.そして製品Bでは「取扱説明書添付」と「製品の箱詰め作業」の無駄を省き、価格を維持することができた。
この一連の作業は、広い意味で言うとABCから始まったABMであると言えます。
製品Bの作業には「取扱説明書添付」と「製品の箱詰め作業」という非付加価値作業が発生しており、この無駄を省くことに成功したのです。
1.の正確な原価計算がABC、そして2.のその原価を分類することで無駄を省いたことがABMというわけです。
また、ABMでは一つの製品にとどめるのではなく、企業活動全般につなげようというのも重要な考え方の1つです。
生産に関することだけではなく、例えば配送などについても全社的に無駄(非付加価値活動)がないかどうかを見直そうということです。
しかしこの「全社的なABM」は、ABC以上に手間がかかり、かつ部門ごとの意見の食い違いなどが発生する場合もあることから、ABC以上にそのハードルは高くなります。
しかしながら現在の競争社会では、常に競争に勝ち抜く経営を目指すためには、ABMを全社的に考えることはもはや避けられなくなっている状況であると言えます。
【ABBとは】
ABB(活動基準予算管理)とは、今度は予算の策定段階からABCやABMの考え方を取り入れようとするものです。
ABMで行った分析を一過性にとどめるのではなく、それを予算の計画時に盛り込むことで継続、発展させていこうということです。
いわば、ABMをもとにPDCAを回そうという考え方がABBということです。
ABBでは、当初からその活動に着目したABMの考え方がすでに考慮されているため、予算策定当初からそのコストが効率化されたものとなります。
よってABCやABM活動が継続されていない場合はその予算を達成できないこととなり、その後どこに問題があるかを検証しやすくなります。
対象となる「活動」の内容にもよりますが、予算の策定段階でABBの考え方を導入することで、現場の技術力の低下や気の緩みなどがあった際に「どの活動に問題点があるか」を見つけやすくし、次につなげていくことが可能になるのです。
ABCをABMに広げた考え方を維持・持続させるための手法がABBという手法です。
ABCとABM、ABBはいずれも間接費というコストの「活動」にスポットを当て、徐々に会社全体にその考え方を浸透させていこうとするものです。
いずれも時間と労力を要する内容ですが、浸透すれば会社を挙げた継続した経営の効率化が可能となります。
まずはこれらの考え方を常に意識してみることから始めてみるとよいでしょう。
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