貸借対照表(B/S) その2
・貸倒引当金
貸倒引当金は、万が一受取手形や売掛金が現金化できなかった場合に備え、資産から控除しておく積立金です。
資産から控除するので、マイナス表示になります。
例えば手形や掛けで販売していた顧客が倒産するなど、実際に売上が回収できなくなった場合は、この引当金を充当することになります。
・棚卸資産
棚卸資産とは、いわゆる在庫のことです。
「商品」と表記する場合もあります。
棚卸資産が増えているということは、仕入れや原材料費だけがかかっていて、販売されていない(売り上げが計上されていない)状態ということを意味します。
会社から、在庫を持つための費用だけが出ていっている状態です。
棚卸資産は受取手形や売掛金が増えるのと同様、増加しすぎると販売までの期間のキャッシュが不足することとなり資金繰りの悪化につながることになります。
この棚卸資産を適正な範囲に抑えることが非常に大切です。
≪固定資産≫
固定資産は、1年以上換金する予定のない資産です。
固定資産には、有形固定資産と無形固定資産、投資その他の資産があります。
無形固定資産には、ソフトウェアやM&Aを行った際に買収した会社の時価総額との差額である「のれん」などがあります。
ここでは有形固定資産と投資その他の資産について見ていきます。
まずは有形固定資産です。
・建物
建物は、その名の通りその会社で購入した事務所や工場などの建物です。
自動車部品製造会社の貸借対照表には入っていませんが、土地を購入している場合は土地も固定資産になります。
そして建物は劣化していくため減価償却されますが、土地は劣化していくものではないため、減価償却はされません。
・機械装置
機械装置とは、これもその名の通り製品を製造するための機械のことです。
自動車部品製造会社の場合、製造作業は機械を使って行っているため、固定資産として取得、計上しています。
・器具備品
器具備品とは、パソコンなどの業務で使用する器具あるいは備品のことです。
少額の場合は費用として一括計上されますが、一定の価格以上の場合は固定資産となります。
・減価償却費累計額
それぞれの項目に出てくる減価償却費累計額とは、資産の劣化分を「費用として計上した総計」という意味です。
長期に渡って使用するものは、購入時に一括で費用としてしまうと購入年度だけにそのインパクトが集中し、会計の正確性に欠くことになります。
このため購入時には固定資産として計上し、使用年度に合わせて徐々に費用計上して資産の簿価を減らしていきます。
そしてその費用計上された分は、損益計算書の売上原価や販売費及び一般管理費などの一部となります。
その累計額とはそれまでの減価償却費用の合計額で、資産の目減り分なのでマイナスで記載されます。
一般に、資産の耐用年数は決められており、それに合わせて定額法あるいは定率法などという方法を用いて減価償却費用を計上していきます。
次は投資その他の資産です。
投資その他の資産とは、1年以上現金化する予定のない投資などを目的として取得した資産のことです。
・投資有価証券
投資有価証券は、売買目的ではなく長期保有目的で取得した有価証券です。
上場されていない会社の株式や、上場していても1年以内に換金する予定のない有価証券がこれに当たります。
以上が「資産」に関するものです。
会社や業種によっては、これ以外にも様々な資産があります。
次は貸方の「負債の部」と「純資産の部」です。
これらの主なものの意味も1つずつ見ていきましょう。
≪流動負債≫
・支払手形・買掛金
これらは流動資産で出てきた受取手形・売掛金とは逆に自社が手形を振り出す、あるいは支払いを掛けで行った場合の負債です。
いずれも後日現金で支払わなければならないものなので、一時的な負債として流動負債に記載されます。
なおこれらの支払方法は現金払いを先延ばしできるため、資金繰りを楽にするためには非常に有効な手段です。
しかし支払いが滞った場合、特に支払手形は不渡り(支払期日に現金が支払えない状態)になると場合によっては銀行融資を受けることができなくなり、最悪倒産する危険性がありますので、計画的に支払いに対応していくことが必要です。
関連ページ
- 損益分岐点分析とその求め方 その2
- 損益分岐点分析とその求め方 その1
- 貸借対照表(B/S) その3
- 貸借対照表(B/S) その2
- 貸借対照表(B/S) その1
- 財務諸表とは
- 損益分岐点分析から見た利益向上策 その1
- 損益分岐点分析の活用法 その1
- 損益分岐点分析の活用法 その2
- 損益分岐点分析の活用法 その3
- 損益分岐点分析から見た利益向上策 その2
- キャッシュフロー計算書(C/S) その1
- キャッシュフロー計算書(C/S) その2
- キャッシュフロー計算書(C/S) その3
- 総合原価計算と個別原価計算
- 国際会計基準
- 日米の会計方針の違い
- 損益計算書(P/L) その1
- 損益計算書(P/L) その2
- 損益計算書(P/L) その3
- ABCと価格設定
- ABC(活動基準原価計算)とは
- ABM(活動基準管理)とABB(活動基準予算管理)
- アカウンティングとは
- 固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その1
- 固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その2
- 会計方針とは
- 費用の計上基準
- 収益の計上基準
- 全部原価計算と直接原価計算
- 引当金の計上方法
- 財務諸表から業界の特徴を分析 その1
- 財務諸表から業界の特徴を分析 その2
- 簿記の基本
- BSC(バランスト・スコアカード)とは
- 予算管理の意義
- 予算の設定方法
- 予算の3つのタイプ
- 業務的意思決定(差額原価収益分析)
- 企業の総合力を分析 その1
- 企業の総合力を分析 その2
- 会計公準と企業会計原則 その1
- 会計公準と企業会計原則 その2
- 会計公準と企業会計原則 その3
- 株主から見た企業価値 その1
- 株主から見た企業価値 その2
- コストセンターとプロフィットセンター
- 原価管理と原価計算
- 負債コストと株主資本コスト
- 組織の設計と種類
- 直接費と間接費
- EBITDAによる株価の評価
- 企業の効率性を分析 その1
- 企業の効率性を分析 その2
- EVA(経済付加価値)とは
- 財務会計と管理会計
- 財務分析とは
- 固定費と変動費 その1
- 固定費と変動費 その2
- 企業の成長性を分析
- 業界と企業の比較分析 その1
- 業界と企業の比較分析 その2
- 内部統制
- たな卸資産の評価基準と評価方法 その1
- たな卸資産の評価基準と評価方法 その2
- 管理会計の必要性
- 安全余裕率と損益分岐点比率
- ABCの活用方法
- 業績評価の手法
- MVA(市場付加価値)とは
- 比率分析の限界と注意点
- 組織管理と管理会計
- 具体的な業績評価のシステム
- 意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その1
- 意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その2
- 製品原価と期間原価
- 企業の収益性を分析 その1
- 企業の収益性を分析 その2
- 責任会計システム
- 企業の安全性を分析 その1
- 企業の安全性を分析 その2
- 標準原価と予算差異分析
- 業績評価のステップと留意点
- 戦略的意思決定1(フリー・キャッシュフロー) その1
- 戦略的意思決定1(フリー・キャッシュフロー) その2
- 戦略的意思決定2(運転資本の意義)
- 戦略的意思決定3(金銭の時間的価値)
- 戦略的意思決定4(リスクと割引率)
- 戦略的意思決定5(DCF法) その1
- 戦略的意思決定5(DCF法) その2
- 戦略的意思決定5(DCF法) その3
- 戦略的意思決定6(ペイバック法)
- 原価企画
- 税効果会計