損益計算書(P/L) その2
≪営業外収益・営業外費用・経常利益≫
次は営業外収益と営業外費用から経常利益を算出するまでの流れです。
営業外収益とは、主となるビジネス以外で発生した収入です。
例えば保有している株式の配当、貸付金などの利息、短期売買を目的として保有している有価証券の売却益などです。
営業外収益は、主に金融関連の収益となるものが多く、営業外収益が多いということは、主となるビジネスで得た利益(営業利益)を効率よく運用していると考えることができます。
営業外費用は営業外収益の逆で、借入金の支払利息や有価証券の売却損などがあります。
この費用がかさんでいるということは、営業利益をうまく運用できず、逆に食いつぶしていることになります。
このように考えると、経常利益は会社としての年間を通した経営力であるとい言うことができます。
これを式にすると以下のようになります。
会社としての年間を通した経営力(経常利益)=営業利益+主となるビジネス以外で発生した収益(営業外収益)−主となるビジネス以外で発生した費用(営業外費用)
今回の自動車部品製造会社の場合は、以下のようになります。
経常利益9000=営業利益10000+営業外収益5000−営業外費用6000
営業利益が1000万円、営業外収益が500万円、営業外費用が600万円なので、経常利益は900万円です。
自動車部品製造会社は、今期については営業利益をうまく運用できていなかったと判断することができます。
そして経営力を高めるための何らかの方策が求められることになります。
なお、経常利益は「経常」という言葉からもわかるように、会社が常に出していくことのできる利益と考えられ、本当の会社の実力を示すものとして投資家や融資を行う金融機関などが重要視する利益です。
本業でいくら利益を挙げても、会社がそれを帳消しにしてしまうような行動を取ってしまうと、それは経常利益に反映されるためです。
≪特別利益・特別損失・税引前当期純利益≫
次に特別利益・特別損失から税引前当期純利益を算出する流れです。
特別利益とは、貸倒引当金戻入益や投資有価証券売却益、固定資産売却益などのその年に限って発生した利益を言います。
あまり聞かない言葉なので、主なものを一つずつ確認していきましょう。
・貸倒引当金戻入益
会社は掛け(売上を期日を決めて後日回収する販売方法)で販売している場合、相手先が支払いできなくなったときのことを考えて、それを補てんするために貸倒引当金という予備費を積み立てています(流動資産の控除項目として計上されています。)。
そして掛けが予定通りに全額支払われた場合は、その引当金は不要だったということになり、その負債が利益となって戻ってきます。
これが貸倒引当金戻入益です。
・投資有価証券売却益
投資有価証券とは、先ほど出てきた売買を目的とした有価証券とは異なり、会社が長期的に保有している有価証券です。
例えば市場では簡単には売買できない未公開株などがこれに当たります。
このような有価証券を売却した際に発生する利益が投資有価証券売却益です。
・固定資産売却益
固定資産とは、長期にわたって使用することが前提となる資産です。
建物や設備などがこれに当たります。
そしてこれらの建物や設備などがその役割を終えて、簿価よりも高い価格で売却できた場合の利益が固定資産売却益です。
そして特別損失とは、投資有価証券売却損、固定資産売却損、特別退職割増金などの、その年に限って発生した損失を言います。
投資有価証券売却損、固定資産売却損などは、特別利益の逆で損失が出た場合に計上されます。
特別退職割増金とは、リストラなどで早期退職の優遇として退職金を割り増しした場合の割り増し分です。
通常の退職金は固定負債として引き当てられていますが、割り増した場合はそれを一時的な特別損失として計上します。
そしてその期は損失が膨らみますが、その期以降は売上原価や販売費及び一般管理費の人件費が圧縮されることで、恒常的なコストダウンにつながります。
そしてそれらの利益と損失が加味されて出る利益が税引前当期純利益です。
よって、税引前当期純利益はその期の会社の全活動による利益であるということができます。
これを式にすると、以下のようになります。
会社の全活動による利益(税引前当期純利益)=会社としての年間を通した経営力(経常利益)+その年に限って発生した利益(特別利益)−その年に限って発生した損失(特別損失)
今回の自動車部品製造会社の場合は、以下の式になります。
税引前当期純利益8000=経常利益9000+特別利益3000−特別損失4000
経常利益が900万円、特別利益が300万円、特別損失が400万円なので、税引前当期純利益は800万円です。
関連ページ
- 損益分岐点分析とその求め方 その2
- 損益分岐点分析とその求め方 その1
- 貸借対照表(B/S) その3
- 貸借対照表(B/S) その2
- 貸借対照表(B/S) その1
- 財務諸表とは
- 損益分岐点分析から見た利益向上策 その1
- 損益分岐点分析の活用法 その1
- 損益分岐点分析の活用法 その2
- 損益分岐点分析の活用法 その3
- 損益分岐点分析から見た利益向上策 その2
- キャッシュフロー計算書(C/S) その1
- キャッシュフロー計算書(C/S) その2
- キャッシュフロー計算書(C/S) その3
- 総合原価計算と個別原価計算
- 国際会計基準
- 日米の会計方針の違い
- 損益計算書(P/L) その1
- 損益計算書(P/L) その2
- 損益計算書(P/L) その3
- ABCと価格設定
- ABC(活動基準原価計算)とは
- ABM(活動基準管理)とABB(活動基準予算管理)
- アカウンティングとは
- 固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その1
- 固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その2
- 会計方針とは
- 費用の計上基準
- 収益の計上基準
- 全部原価計算と直接原価計算
- 引当金の計上方法
- 財務諸表から業界の特徴を分析 その1
- 財務諸表から業界の特徴を分析 その2
- 簿記の基本
- BSC(バランスト・スコアカード)とは
- 予算管理の意義
- 予算の設定方法
- 予算の3つのタイプ
- 業務的意思決定(差額原価収益分析)
- 企業の総合力を分析 その1
- 企業の総合力を分析 その2
- 会計公準と企業会計原則 その1
- 会計公準と企業会計原則 その2
- 会計公準と企業会計原則 その3
- 株主から見た企業価値 その1
- 株主から見た企業価値 その2
- コストセンターとプロフィットセンター
- 原価管理と原価計算
- 負債コストと株主資本コスト
- 組織の設計と種類
- 直接費と間接費
- EBITDAによる株価の評価
- 企業の効率性を分析 その1
- 企業の効率性を分析 その2
- EVA(経済付加価値)とは
- 財務会計と管理会計
- 財務分析とは
- 固定費と変動費 その1
- 固定費と変動費 その2
- 企業の成長性を分析
- 業界と企業の比較分析 その1
- 業界と企業の比較分析 その2
- 内部統制
- たな卸資産の評価基準と評価方法 その1
- たな卸資産の評価基準と評価方法 その2
- 管理会計の必要性
- 安全余裕率と損益分岐点比率
- ABCの活用方法
- 業績評価の手法
- MVA(市場付加価値)とは
- 比率分析の限界と注意点
- 組織管理と管理会計
- 具体的な業績評価のシステム
- 意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その1
- 意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その2
- 製品原価と期間原価
- 企業の収益性を分析 その1
- 企業の収益性を分析 その2
- 責任会計システム
- 企業の安全性を分析 その1
- 企業の安全性を分析 その2
- 標準原価と予算差異分析
- 業績評価のステップと留意点
- 戦略的意思決定1(フリー・キャッシュフロー) その1
- 戦略的意思決定1(フリー・キャッシュフロー) その2
- 戦略的意思決定2(運転資本の意義)
- 戦略的意思決定3(金銭の時間的価値)
- 戦略的意思決定4(リスクと割引率)
- 戦略的意思決定5(DCF法) その1
- 戦略的意思決定5(DCF法) その2
- 戦略的意思決定5(DCF法) その3
- 戦略的意思決定6(ペイバック法)
- 原価企画
- 税効果会計