貸借対照表(B/S) その3
・短期借入金
短期借入金は文字通り短期(1年以内)の借入金を指します。
運転資金などを銀行から融資してもらう場合は、短期の借り入れが中心となります。
運転資金にはいくつかの意味がありますが、一般には流動資産で出てきた受取手形・売掛金の代金回収までの間に必要となる資金のことを言います。
短期借入金は、代金回収までの運転資金を「つなぐ」ために借り入れる場合が大半です。
・賞与引当金
賞与引当金は、従業員に支払う予定の賞与を積み立てておくものです。
例えば3月末決算の会社で6月と12月に賞与の支払いがあるとします。
そして6月の賞与の対象期間が10月から3月、12月の賞与の対象期間が4月から9月だった場合は、6月に支給する賞与は前年10月から3月までの会社の利益から支払うべきものとなります。
よってその年度に次年度の6月に支払う予定の賞与を負債として計上しておくということです。
≪固定負債≫
次は固定負債です。
・長期借入金
長期借入金は、1年以上の期間で借り入れを行う際の負債です。
長期の借り入れは、例えば設備投資を行う際などに行われます。
特に中小企業などにとっては、利息の支払いは大きくなるものの資金繰りが安定するという意味では短期の借り入れよりも長期のほうがメリットがあると言えます。
しかし融資する側の金融機関などにとっては返済してもらえないリスクが高まるために、長期融資は信用度の高い会社に限る場合もあるようです。
・退職給付引当金
退職給付引当金は従業員の退職時に退職金を支給する場合に備え、引き当てておくものです。
退職金は対象となる勤続期間全体に渡って発生する費用であるという認識の下で、その年ごとに費用として計上します。
退職時に一括して費用としてしまうと、退職金によって企業の業績が変わるということになり、その会計の真実性が失われるためです。
また、退職金の積み立ては賞与の引き当てとは異なり、長期性を有していると言えますので固定負債となります。
なお、例えば確定拠出年金を採用している企業の場合は、毎年確定した掛け金として支出しているのでこの引当金はありません。
確定拠出年金とは将来の年金支給額を現時点で確定させて支給し、支給された対象者が自身で運用して老後に備えるという制度です。
このため、従業員の退職時に新たに費用がかかることはなくなります。
≪純資産≫
純資産は、株主が出資した資金とそれまでの利益の蓄積の合計である株主資本と評価・換算差額等によって構成されています。
評価・換算差額等は自動車部品製造会社では発生していないため、表では省略しています。
なお、評価・換算差額等とは、取得価格で記載している投資有価証券などを時価評価してその差額を純資産の増減として表示したものです。
ここでは株主資本について、主なものを挙げてみます。
・資本金
資本金は設立当初あるいは増資などで株主から出資された資金です。
いわば、「返済する必要がない資金」です。
よってこの資本金が増えることは財務の安定にもつながり、信頼度も向上します。
しかし、出資する株主は大きなリスクを負うことになるため、会社の成長や配当などによるリターンを求めることとなります。
また、出資比率などを計画的に考えておかなければM&Aなどで買収されたり、経営権を奪われてしまう可能性もあります。
・資本剰余金
資本剰余金とは、増資などの資本取引から生じたものです。
資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に分類されます。
資本準備金とは、債権者(会社に資金を融資している金融機関など)保護の観点から会社が積み立てておかなければならない準備金です。
積み立てておかなければいけないものなので、資本準備金を配当原資にすることはできません。
その他資本剰余金とは、資本準備金以外のもので、資本金や資本準備金を取り崩したときに発生する剰余金です。
・利益剰余金
利益剰余金とは、会社の毎年の利益のうち、会社内に留保しているものです。
利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に分類されます。
利益準備金とは資本準備金同様会社が積み立てておかなければならない準備金で、その他利益剰余金は会社が自由に使える剰余金です。
一般に、配当にあてられるのはその他利益剰余金です。
そしてこの利益剰余金が多いことは、会社がこれまでに利益を蓄積してきたことを意味します。
しかし赤字続きの場合は、「利益の蓄積がマイナス→利益剰余金もマイナス」になっている場合もあります。
以上が貸借対照表の内容です。
貸借対照表はその会社の「ストック」を知る大切な財務諸表です。
まずは慣れることから始めていきましょう。
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