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財務諸表から業界の特徴を分析 その2

【小売業の特徴】
小売業は顧客が主に個人であるため、比較的サービス業と似た特徴を持っています。

 

最も似ている点は、支払いが売上債権としてではなく現金で回収されることが多い点です。

 

そしてサービス業と異なる点は、サービス業が主に固定資産を活用することによって顧客にサービスを提供しているのに対して、小売業は「商品を仕入れて販売している」ということです。

 

当然店舗の確保などで固定資産を必要とはしますが、あくまでも本業の収益の源泉は「仕入れ→販売」の流れにあります。

 

このため、仕入れにかかる流動負債が増える傾向にあり、どちらかというと流動比率は低くなります。

 

しかし、これを現金の回収の速さでカバーできるため、販売が順調な小売業の流動比率の低さはあまり問題視されない傾向にあります。

 

 

【情報通信(IT)業の特徴】
情報通信業には、通信インフラ会社や情報サービス会社、インターネットサービス会社などがありますが、ここでは情報サービス会社やインターネットサービス会社を考えてみたいと思います。

 

近年情報サービス会社やインターネットサービス会社が乱立状態となっていることからもわかる通り、このような会社の大きな特徴は大きな初期投資が不要であり、比較的市場に参入しやすいことにあります。

 

このような会社は主に情報やアプリケーションなどのソフトを開発、販売するので、例えばものづくりを行う場合に必須となる高額な固定資産が必ずしも必要であるとは言えないためです。

 

しかしソフト開発のための開発費や人件費などは売上に先行して発生することとなります。

 

よって特に設立して間もない会社などは黒字化までに時間がかかるのが普通です。

 

そしてこのような会社はソフト販売が軌道に乗れば生産のための原価などはかからないために、大きな利益を生むことができるようになります。

 

また時代の流れもありますが、売れるソフト開発ができると期待された会社はベンチャーキャピタルなどの出資を受けることが可能となる場合があり、そのような場合は赤字でも自己資本比率を比較的高く保つことができます。

 

しかし、販売を開始したソフトが売れるまでの間、もしくは販売が低調だった場合はそれまでの投資が回収できず、非常に経営が困難な状態に陥る可能性もはらんでいます。

 

 

【製造業の特徴】
最後に製造業を考えてみましょう。

 

製造業は、上記の業種と比較するとその財務諸表に大きな特徴は見られません。

 

製造業は「ある程度」の設備投資を必要とし、「ある程度」の原材料費がかかり、そこに付加価値を与えることで「ある程度」の利益を確保できるためです。

 

日本では、最も標準的な財務諸表になるのが製造業です。

 

ただ、一つ言えることは、製造業は原材料に付加価値を与えて製品を生産しているため、「本業による安定した営業利益を確保しやすい」ということです。

 

逆に言うと、製造業で本業の儲けが少ない場合は、経営状態が悪化している可能性があると判断できるということになります。

 

 

【各業種の特徴のまとめ】
これまで、各業種の財務諸表の特徴を見てきました。

 

これまで出てきた各業種の特徴をまとめてみると、以下のようになります。

 

≪サービス業(娯楽関係)≫
・固定資産額が大きく、総資産額も大きい。
・長期の借入割合が高く、自己資本比率が低い。
・売上債権の割合が低い。

 

≪不動産業(デベロッパー)≫
・棚卸資産額が大きい。
・長期資金の割合が高い。
・売上債権の割合が低い。

 

≪小売業≫
・売上債権の割合が低い。
・支払債務が大きく、流動比率が低い。

 

≪情報通信(IT)業(情報・インターネットサービス)≫
・固定資産が少ない。
・販売が好調な会社は営業利益率が圧倒的に高い。
・自己資本比率が高い。

 

≪製造業≫
・本業の営業利益率が比較的高い。

 

 

やはり財務諸表は業種によって異なることが理解できるかと思います。

 

財務諸表を比較、検討する際はこのような各業種の特徴をおさえたうえで、慎重に行っていきましょう。

 

 

前のページ 「財務諸表から業界の特徴を分析 その1」

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