財務会計と管理会計
【財務会計と管理会計の違い】
アカウンティングは、大別すると以下の2つに分類することができます。
1.財務会計
2.管理会計
ではこれらがどのようなものなのかを具体的に考えてみましょう。
1.財務会計
財務会計は、主に株主や債権者などの外部関係者への説明材料を作成し、公表することを目的としています。
このため、外部関係者が会社のことを正確に理解できるように原則として過去の実績を基準とします。
過去の実績からこれまでの経営状態を理解してもらおうということです。
主な説明材料(作成資料)には、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書などがあります。
損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)はもともと会社法によって作成・開示が義務付けられています。
しかし大企業は開示しているものの、中小企業などは実際には開示していないケースも見受けられます。
また、これまでは損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)が主な判断材料でしたが、特に近年はキャッシュフローの重要性が高まっており、上場企業についてはキャッシュフロー計算書の開示も義務付けられるようになりました。
外部関係者は、これらの資料によって会社の経営状態を把握し、経営陣の評価を決めることになります。
また、経営者にとっては会社の「今後の方針」を外部関係者に伝えることも大切な仕事です。
しかし、今後のことは未確定で正確な情報ではありません。
よって、まずはこれらの過去の正確な情報を開示することで、経営についての理解をしてもらおうということです。
過去の実績を見て経営者のこれまでの方針が正しかったかどうかなどを確認し、それを今後の経営方針の評価につなげようということなのです。
2.管理会計
管理会計は、主に会社内部で「経営を合理的に行うため」の判断材料を作成することを目的としています。
よって管理会計で作成される資料は、基本的に社内で作成され、主に経営陣や担当者が使用することになります。
例えば新製品を開発する際にどの程度のコストがかかり、どの程度の売上があれば黒字化できるかを試算する損益分岐点分析などはその代表的なものです。
よって管理会計は過去をベースとはするものの、どちらかというと計画を立てる際の指針として使われる資料が多くなるという点で、財務会計とは異なっています。
これまでに財務会計などで蓄積された情報を元に、今後の計画を数値で評価し意思決定につなげようということです。
そして管理会計は、例えば設備投資の意思決定を行う際などにマーケティング等の戦略と結びつくことも多くなります。
マーケティングで得られた結果を意思決定の一つの根拠とする必要があるためです。
そのような意味では、管理会計はただ数字だけを理解すればよいというわけではなく、多角的な視野を必要とする分野だと言えます。
また、アカウンティングはファイナンス(資金調達)とも密接に関わっており、アカウンティングで作成された過去の資料や意思決定を受けてファイナンスで資金調達(いわゆる資金繰り)を行っていきます。
このように考えると、ただアカウンティングといっても実は様々な要素が包括されていることがわかるかと思います。
特に世界や国内環境の変化は、大企業よりも中小企業や若いスタートアップ企業、ベンチャー企業により大きな影響を与えます。
これらの中小企業や若い企業は大企業との取引も多く、大企業の業績によって自社の業績が大きく左右されることが多いためです。
よってどんな規模であれフェーズであれ、「感覚」や「経験」だけではなく、財務会計で会社の経営状態を把握し、管理会計によってより緻密に今後の意思決定を行うことが重要となっているのです。
アカウンティングは「ビジネスには関係ない」、あるいは「専門家に任せるもの」と考える人が多いと思いますが、実際は「ビジネスに最も大きく関わっているもの」なのです。
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