戦略的意思決定1(フリー・キャッシュフロー) その2
≪NOPATとは≫
「NOPAT」とは、「Net Operating Profit After Tax」の略で、税引後利益という意味です。
非常にわかりにくい考え方ですが、NOPATには主に以下の2つの考え方があります。
1.営業利益×(1−税率)
2.EBIT(経常利益+支払利息−受取利息)×(1−税率)
いずれも本業であるビジネスで稼いだ収入から税金を引くという考え方です。
そして1と2で異なるのは、1は営業利益がビジネスで稼いだ収入と考えるのに対して、2ではEBIT(Earnings Before Interest and Tax)をビジネスで稼いだ収入と考えている点です。
EBITとは経常利益という概念がないアメリカに近い考え方で、経常利益から利息の支払いや受け取りなどの財務活動要素を引いたものです。
EBITでは、財務活動要素以外の営業外収支はビジネスで稼いだ収入と考えるということです。
どちらを使っても問題はありませんが、ここでは日本で比較的多く使われている1の例を使って考えることとします。
【フリーキャッシュフローを計算してみよう】
では実際にフリーキャッシュフローを計算してみましょう。
≪「営業活動によるキャッシュフロー」+「投資活動によるキャッシュフロー」≫
まずは、「営業活動によるキャッシュフロー」+「投資活動によるキャッシュフロー」で計算してみます。
ここでは自動車部品製造会社であるS社のキャッシュフロー計算書から計算してみましょう。
Iで書かれているS社の営業活動によるキャッシュフローは2000万円です。
そして?で書かれている投資活動によるキャッシュフローは900万円です。
よって、S社のフリーキャッシュフローは以下になります。
S社のフリーキャッシュフロー = 2,000万円+900万円 = 2900万円
S社の場合は、建物や投資有価証券の売却によって投資活動によるキャッシュフローが「+」であるため、営業活動によるキャッシュフローにさらに加算されていることが特徴となっています。
≪「NOPAT(税引後営業利益)+減価償却費+運転資本増減(増加はマイナス、減少はプラス)」−「初期投資費用」≫
NOPATを使ったフリーキャッシュフローは今後の予測をして最終的な戦略的意思決定の根拠として使用されることが多いため、ここでは「事業を拡大するために設備投資を行う」というケースで考えます。
設備投資を行った年のフリーキャッシュフローとその翌年度のフリーキャッシュフローを考えてみましょう。
(ここでは実効法人税率を35%と考えます。なお、計算を簡略化するために現在価値(NPV)への割引は行っておりません。)
・初期投資を行った年のフリーキャッシュフローの予測値
(200−(200×0.35))+200−50−1000 = −720万円
・翌年度のフリーキャッシュフローの予測値
(400−(400×0.35))+200−50 = 410万円
初期投資を行った年のフリーキャッシュフローは−720万円、翌年度のフリーキャッシュフローは410万円です。
そしてこの計算を事業の継続年数分(今回は設備の耐用年数である5年間など)続けます。
このような場合のフリーキャッシュフローは単年度だけで考えるのではなく、事業の継続年数のフリーキャッシュフローを全体として考えることが必要です。
なぜなら、特に単体の事業などにフォーカスしてフリーキャッシュフローを確認する場合は、初期投資した年度は大きくキャッシュフローがマイナスとなり、その翌年度以降プラスになる傾向が見られるためです。
このため、あくまでも事業全体としてフリーキャッシュフローがプラスになるかマイナスになるかを考えなければいけないということです。
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