直接費と間接費
【直接費と間接費とは】
費用を分類する方法としては、直接費と間接費に分類する方法もあります。
直接費とは生産に直接関係している費用で、間接費とは生産に直接関係しない費用です。
固定費と変動費の分類は様々な業種で使用される概念ですが、直接費と間接費という概念は、主に製造業で使用される概念です。
製造業では通常、以下の過程を経て売上原価を算出します。
1.製造費用の算出
製造費用とは、製品を製造した際に実際にかかった費用のことです。
製造費用は、単純にその期にかかった費用を計算して算出します。
2.製造原価の算出
製造費用に期首と期末の仕掛品(作りかけの製品)を考慮したものがその期の製造原価です。
3.売上原価の算出
製造原価に期首と期末の製品の棚卸資産を考慮して計算されたものがその期の売上原価です。
この時、最初に算出する製造費用は直接費と間接費を合計することで把握することができます。
また、ここでいう直接費と間接費は、あくまでも「製品を生産する」過程で発生するものです。
基本的に生産に関わらない本部などで発生する販売費用などは含みません。
大きな分類では本部などで発生する費用も原価と呼んで直接費と間接費に分類することもありますが、一般的には製品を生産する過程の費用が分類の対象となります。
そして、直接費と間接費はさらに材料費・労務費・経費という3つに分類されます。
材料費と労務費、経費の基本的な考え方は以下です。
・材料費→製造に使用する原材料の費用
・労務費→従業員の賃金や法定福利費用
・経費 →材料費や労務費以外の費用
なお、法定福利費とは従業員の社会保険料などの法律で定められている福利厚生費用を指します。
では表の分類を使って、直接費と間接費を見ていきましょう。
【直接費】
≪直接材料費≫
直接材料費とは、製品を生産する際に直接かかる原材料費です。
製品に使うために購入した部品なども直接材料費に該当します。
≪直接労務費≫
直接労務費は直接製品を生産している従業員の作業時間の給料です。
ここでのポイントは、その費用は直接製品を生産している「時間」にかかってくるということです。
直接製品を生産している従業員でも一日中生産に従事するわけではなく、準備をする時間や会議、あるいは何らかの資料作成を行う時間なども必要となります。
しかしそのような時間の給料は、直接労務費には含まないということになります。
≪直接経費≫
直接経費は直接材料費や直接労務費以外で製品に直接かかった費用、例えば外注費などが該当します。
【間接費】
≪間接材料費≫
間接材料費とは、製品を生産する際に間接的にかかる原材料費です。
例えば様々な製品で使用できるネジや接着剤などが該当します。
≪間接労務費≫
間接労務費とは、直接製品を生産している従業員が生産以外に行った作業の作業時間の給料です。
直接労務費以外の労務費です。
製品を生産している従業員が会議に出ている時間や生産現場のマネージャの給料などがこれに該当します。
≪間接経費≫
間接経費とは、直接製品に直結させることができない経費です。
工場で生産を行っている場合は工場の減価償却費や光熱費などがこれに該当します。
【直接費と間接費に分類する意味】
費用を直接費と間接費に分類する意味は、「製品ごと」にかかった費用を計算することにあります。
製品ごとにかかった費用がわからなければ、価格決定が行えないためです。
そして製品ごとの費用を計算するためには、その製品に直接かかった直接費とそうではない間接費を分類し、その上で間接費をある一定の基準でそれぞれの製品に配分しなければなりません。
よって直接費と間接費を区別しなければ、製品ごとにかかった費用を把握できないということになります。
そして間接費は、販売数量や販売額、直接材料費や直接労務費などを基準としてそれぞれの製品に配分されます。
しかし、このような基準はあくまでも大まかな基準に基づいた配分であり、比較的容易に配分できますがあまり正確ではありません。
このことから間接費の配分は、生産を行う際の様々な活動を詳細に分類して行うABC(活動基準原価計算)という考え方が生まれています。
ABCに関しては別の記事で詳細に説明していきます。
このように間接費はどの製品にどの程度配分するかの基準によってその原価が大きく変わり、価格決定にも影響を与えることがあるので、慎重に配分することが必要になってきます。
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