会計方針とは
【会計方針とは】
会社の会計には、その根本原則といえる会計公準と企業会計原則があります。
よって会計は、これらの原則に即しているものでなくてはなりません。
しかし会計には様々な構成要素があり、それらを「すべての会社」が同じように処理することは現実的に不可能です。
そこで財務諸表を見る際は、その会社がどのような会計方針でそれらを作成しているかを知ることが必要となります。
会社によって違いが現れる会計方針
会社によって異なる可能性のある会計方針には、以下のようなものがあります。
・棚卸資産の評価基準と評価方法
・固定資産の会計処理
・引当金の計上方法
・収益の計上基準
・費用の計上基準
つまり、上記のようないくつかの要素については会社ごとに違いがあるため、単に最終的な数字を見るだけだと、間違った判断をしてしまう可能性があるということです。
一見すると財務諸表はどの会社も同じ体裁で数値だけが違うように見えますが、実際は図にあるような内容についてはその会社の独自の判断によって決定されているのです。
もちろん会計には「真実性の原則」があるため、事実ではないことは記載できません。
そして長い目で見るとどんな方針を採用したとしても、原則として結果的には同じになります。
しかし、「その期」に関しては、どのような会計方針を採用するかによって、収益と費用がまったく同じように発生した会社だったとしても、財務諸表が違うものになる可能性があるのです。
【会計方針の継続性】
そして上記のような会計方針は、企業会計原則の一般原則によりその「継続性」が求められています。
正当な理由がない限りは会計方針を変更してはならないということです。
よって、一つの会社の会計だけを見た場合は、原則として常に同じ方針で財務諸表が作成されています。
しかし、「絶対に変更してはいけない」というわけではありません。
「正当な理由がある場合」は認められることになっています。
その際の正当な理由となるのは、以下のような場合です。
・会計ルールに即しており、より適切な情報開示となる場合
・利益を増やしたり減らしたりすること(利益操作)が目的でない場合
・短期間で過度な変更をしておらず、経営者の都合ではない場合
まずは変更理由が「ルールに則している」ことです。
当たり前ですが、会計ルールに沿っていない変更は行ってはいけません。
また、実質的に最も大きな理由と言われているのが、「利益操作が目的ではない」ことです。
利益操作とは、例えば利益が大きい年にあえて費用を多くできる会計方針に変更して利益を減らす、あるいは赤字の年に費用が少なくなるようにして利益を多く見せるなどです。
このような利益操作は、以下のような目的で行われます。
利益を減らす → 税金の支払いを少なくする。
利益を増やす → 銀行からの融資を受けやすくする、あるいは株主を納得させる。
利益操作のための会計方針の変更は、本来の会社の財務状況を変更するという真実性に欠ける行為です。
よって利益操作が目的と認められる場合は、会計方針の変更はできないことになっているのです。
(ただし、会計方針を変更することがなく、かつ法令及びルールの範囲内での「節税」は一般的に行われています。)
そして利益操作と認められなくても、短期間に何度も変更されれば、それは「経営者の都合」であると判断されるため、過度な変更も禁止されています。
会計方針の変更はあくまでも会社の財務をより正確にし、より慎重かつ保守的にし、法律や規則に即したものでなくてはならないということです。
現在は変化の時代です。
このため、機械などは年々その性能が高くなって、かつてよりも早く陳腐化し、これまでよりも早く新しい機械に交換しなければ競争に勝てない時代になっています。
よって最初から交換を見据え、機械を早めに減価償却できる方法に変更するなどの対応は、会社の財務を正しく伝えるための方法と言えます。
そして、このような会社の会計方針の変更を見逃さずに見ておくと、その会社の財務に対する姿勢が自然と見えてきます。
財務諸表にある数値だけではなく、そのような会計方針がどのように変化しているかを見ていくことで、財務に対する理解、あるいはその会社や経営者に対する理解が深まると言えます。
会計方針を学ぶことで、経営に関する理解をより深めていきましょう。
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