経営を学ぶ-経営学・MBA・起業・ネットビジネス・リアルビジネスなど

経営を学ぶ~経営学・MBA・起業~

損益分岐点分析の活用法 その2

【洋服製造販売会社K社が抱える問題:消費者への認知度が低いため、赤字にならないレベルでバーゲンセールを活発に行い、認知度を高めたい】

 

洋服製造販売会社であるK社は、洋服を自社で生産し、店舗及びWEBサイトで販売を行っています。

 

価格の割に品質やデザインの優れた洋服が多く、一部の消費者からは支持されています。

 

しかし競合相手も多く、よい品質のものを低価格で販売することを重視しているために広告費などに費用をかけておらず、なかなかその認知度が高まりません。

 

また、洋服の販売は定価販売だけだと需要予測が難しいために多くの在庫が発生してしまい、中には廃棄処分しなければならないものも出てきます。

 

このため、在庫管理や廃棄などにも費用がかかってしまいます。

 

よってK社では今後はこれまでブランドイメージの構築のために行ってこなかったバーゲンセールを行い、品質やデザインだけではなく価格面でもインパクトを出して消費者の認知につなげたいと考えています。

 

K社が赤字とならずにバーゲンセールを行うには、どのようなタイミングで行うのが適切でしょうか?

 

 

≪K社が抱える問題の解決方法≫
K社の主力商品である冬物婦人用ジャケットを例に考えてみます。

 

K社の冬物婦人用ジャケットの例年の販売価格と生産量、売上高と費用は以下の通りです。

 

販売価格 2万円
生産量 2500着
売上高 5000万円
変動費 2500万円
固定費 1000万円
営業利益 1500万円

 

上記はあくまでも完売した場合です。実際は在庫管理や廃棄処分などで、純利益はこれよりも少なくなっています。

 

まずは損益分岐点売上高から計算してみましょう。

 

変動費率 = 0.5

 

損益分岐点売上高 = 1000÷(1-0.5) = 2000万円

 

ということがわかります。

 

よって、2000万円の売上を達成した段階で損益分岐点売上高はプラスに転じるため、あとはバーゲンを行っても赤字にはならないことになります。

 

よってこの場合は、例えば以下のような価格設定を行います。

 

販売量が1000着に達するまでは2万円の定価で販売する。

 

 ↓

 

その後はバーゲンセールを行い、1500着を40%OFFで販売する。

 

すると売上と費用、利益は以下のようになります。

 

・販売開始後の1000着:定価の2万円で販売

 

売上高 2000万円
変動費 1000万円
固定費 1000万円
営業利益 0万円

 

この時点では営業利益は0万円ですが、固定費はすべてカバーできました。

 

・残りの1500着:40%OFFの1万2000円で販売

 

売上高 1800万円
変動費 900万円
固定費 0万円
営業利益 900万円

 

残りを40%OFFで販売しても固定費は最初の1000着販売分でカバーされているため、これ以降の固定費は0円です。

 

よって変動費を引いた900万円がすべて営業利益となり、売れば売るほど利益は増え、赤字にはなりません。

 

そして、仮にその後どんなに価格を下げても、価格から変動費を引いた50%分は確実に利益になります。

 

定価販売のみの場合の在庫管理や廃棄処分費用、あるいはバーゲンによる認知度アップを考えると、このような意思決定も認知度アップという長期的な目標を考えると間違いではないと言えます。

 

なお、洋服の販売などは期初に生産を完了してしまっている場合があります。

 

そのような場合は費用をすべて固定費と考え、売上高が固定費を上回った段階でバーゲンを行います。

 

販売価格 2万円
生産量 2500着
固定費 2500万円+1000万円 = 3500万円

 

この場合、固定費である3500万円を回収すれば営業利益は0となりますので、バーゲンを開始できるタイミングは以下の計算で決定できます。

 

3500÷2 = 1750
(2は1着当たりの販売価格です)

 

1750着を2万円で販売すると、固定費の3500万円は回収できます。

 

そして残りが750着になった時点でバーゲンを開始すれば、バーゲン以降の利益がすべて営業利益となります。

 

例えば750着を半額の1万円で販売して完売した場合は750万円の営業利益となります。

 

百貨店などのバーゲンセールは、このような価格設定を行うことで実現できているのです

 

あくまでもすでに損益分岐点売上高を上回っている段階では、その後は販売価格に関わらず「販売=利益」となるということです。

 

 

次のページ 「損益分岐点分析の活用法 その3」

 

前のページ 「損益分岐点分析の活用法 その1」

関連ページ

損益分岐点分析とその求め方 その2
損益分岐点分析とその求め方 その1
貸借対照表(B/S) その3
貸借対照表(B/S) その2
貸借対照表(B/S) その1
財務諸表とは
損益分岐点分析から見た利益向上策 その1
損益分岐点分析の活用法 その1
損益分岐点分析の活用法 その2
損益分岐点分析の活用法 その3
損益分岐点分析から見た利益向上策 その2
キャッシュフロー計算書(C/S) その1
キャッシュフロー計算書(C/S) その2
キャッシュフロー計算書(C/S) その3
総合原価計算と個別原価計算
国際会計基準
日米の会計方針の違い
損益計算書(P/L) その1
損益計算書(P/L) その2
損益計算書(P/L) その3
ABCと価格設定
ABC(活動基準原価計算)とは
ABM(活動基準管理)とABB(活動基準予算管理)
アカウンティングとは
固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その1
固定資産の会計処理(減価償却と減損会計) その2
会計方針とは
費用の計上基準
収益の計上基準
全部原価計算と直接原価計算
引当金の計上方法
財務諸表から業界の特徴を分析 その1
財務諸表から業界の特徴を分析 その2
簿記の基本
BSC(バランスト・スコアカード)とは
予算管理の意義
予算の設定方法
予算の3つのタイプ
業務的意思決定(差額原価収益分析)
企業の総合力を分析 その1
企業の総合力を分析 その2
会計公準と企業会計原則 その1
会計公準と企業会計原則 その2
会計公準と企業会計原則 その3
株主から見た企業価値 その1
株主から見た企業価値 その2
コストセンターとプロフィットセンター
原価管理と原価計算
負債コストと株主資本コスト
組織の設計と種類
直接費と間接費
EBITDAによる株価の評価
企業の効率性を分析 その1
企業の効率性を分析 その2
EVA(経済付加価値)とは
財務会計と管理会計
財務分析とは
固定費と変動費 その1
固定費と変動費 その2
企業の成長性を分析
業界と企業の比較分析 その1
業界と企業の比較分析 その2
内部統制
たな卸資産の評価基準と評価方法 その1
たな卸資産の評価基準と評価方法 その2
管理会計の必要性
安全余裕率と損益分岐点比率
ABCの活用方法
業績評価の手法
MVA(市場付加価値)とは
比率分析の限界と注意点
組織管理と管理会計
具体的な業績評価のシステム
意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その1
意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その2
製品原価と期間原価
企業の収益性を分析 その1
企業の収益性を分析 その2
責任会計システム
企業の安全性を分析 その1
企業の安全性を分析 その2
標準原価と予算差異分析
業績評価のステップと留意点
戦略的意思決定1(フリー・キャッシュフロー) その1
戦略的意思決定1(フリー・キャッシュフロー) その2
戦略的意思決定2(運転資本の意義)
戦略的意思決定3(金銭の時間的価値)
戦略的意思決定4(リスクと割引率)
戦略的意思決定5(DCF法) その1
戦略的意思決定5(DCF法) その2
戦略的意思決定5(DCF法) その3
戦略的意思決定6(ペイバック法)
原価企画
税効果会計

HOME
HOME メルマガ登録 プロフィール お問い合わせ