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意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その2

【労働生産性の分析】
労働生産性は、以下のように計算します。

 

労働生産性 = 付加価値÷平均従業員数

 

そして分子の付加価値が高い、あるいは分母の従業員数が少ない場合に、労働生産性は高くなります。

 

労働生産性は従業員数を基準に考えるため、例えば飲食業などの「人手」が必要な業種は低くなり、製造業のように機械化が進んでいる業種は高くなる傾向にあります。

 

また、労働生産性はその式に会社全体の人件費をからませて展開することで、より詳細な分析が可能となります。

 

労働生産性 = 付加価値÷平均従業員数
        = (1÷従業員)×付加価値
        = (1÷従業員)÷(1÷付加価値)
        = (人件費÷平均従業員数)÷(人件費÷付加価値)(分母と分子に人件費をかける)
 = 一人当たりの人件費÷労働分配率

 

労働生産性は分子の一人当たりの人件費を上げる、もしくは分母の労働分配率を下げれば高まるということです。

 

労働分配率とは、式にある通り、付加価値に対する人件費の割合です。

 

そして、こうして式を展開してみると、労働生産性を高める難しさがよくわかります。

 

分子である一人当たりの人件費を上げれば、当然のことながら人件費全体が上がります。

 

そうすると付加価値に対する人件費の割合は高まり、分母の労働分配率も上がります。

 

逆に分母の労働分配率を下げると人件費自体が減少し、一人当たりの人件費も当然下がります。

 

一人当たりの人件費と労働分配率が連動すると、付加価値は高まらないということです。

 

つまり、労働生産性を高めるには、従業員の数を流動的にしなければいけないということになります。

 

欧米諸国に比べて日本の労働生産性が低いのは、この従業員の流動性が比較的少ないためということが一つの要因として考えられます。

 

 

【資本生産性の分析】
次に資本生産性を考えてみましょう。

 

資本生産性は、以下のように計算します。

 

資本生産性 = 付加価値÷有形固定資産

 

分子の付加価値が高い、あるいは分母の有形固定資産が少ない場合に、資本生産性は高くなります。

 

この資本生産性は、例えば固定資産をさほど必要としないサービス業などは高くなり、大規模な設備投資が必要な業種や新しい技術開発などを行うために頻繁に設備投資を行っている会社などは低くなると言えます。

 

そして近年資本生産性を高くすることで大きく成長している産業があります。

 

それはIT産業です。

 

特にソフトウェアやゲームなどを開発する企業は、その開発には大きな設備を必要としません。

 

また、販売も店舗販売だけではなく、むしろ現在主流なのはダウンロード販売やWEB上での販売など、店舗を必要としないものです。

 

このようなIT企業は資本生産性が非常に高く、今後このような企業が増えると、全体としての資本生産性は高まると考えることができます。

 

 

【付加価値と生産性の関係】
付加価値を生み出すことは会社として不可欠と考えられ、それは生産性と大きな関わりがあります。

 

付加価値は意思決定によって決まり、その効率は生産性に左右されるということです。

 

そして労働生産性と資本生産性には、いわゆる「トレードオフ」の関係があります。

 

機械化などを行って固定資産を増やす場合は資本生産性が低くなり、機械化した分の労働力が減少して労働生産性は高くなります。

 

逆に多品種少量生産や受注生産などの場合は機械化できる範囲は限定されて手作業が増えるため、労働生産性が低下して資本生産性が高まることになります。

 

また、生産性は労働生産性や資本生産性だけではなく、様々な分野で活用できます。

 

例えば事務所や店舗の面積と売上の関係を考える、あるいは月次での在庫と売上の推移を考えるなどです。

 

そして付加価値と生産性の分析が効果的である理由は、比較的外部環境に左右されないためであると言えます。

 

生産性は基本的には社内の取り組みによって改善、あるいは悪化したりします。

 

原材料のようにその価格に振り回されるというわけではなく、あくまでも会社内部での方針が素直に反映されるということです。

 

意思決定を考える前にまずは付加価値、そして生産性という概念を理解しておきましょう。

 

 

前のページ 「意思決定の前提(付加価値と生産性分析) その1」

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