戦略的意思決定5(DCF法) その2
≪それぞれの年度のキャッシュフローを考える≫
まずは未来に発生するキャッシュフローを考えます。
・初期投資を行った年の期初に発生する投資活動によるキャッシュフロー
初期投資が行われるのは、現在(初期投資を行う年度の期初)です。
そして初期投資は1000万円です。
・初期投資を行った年の期末に発生する営業活動によるキャッシュフロー
初期投資を行った年の期末に発生する営業活動によるキャッシュフローは、以下のように計算できます。
営業活動によるキャッシュフロー = NOPAT(税引後営業利益)+減価償却費+運転資本増減
よって、計算式は以下になります。
営業活動によるキャッシュフロー=(200−(200×0.35))+200−50 = 280
なお、法人税(法定実効税率)は35%で計算しています。
・翌年度の期末に発生する営業活動によるキャッシュフロー
初期投資を行った翌年の期末に発生する営業活動によるキャッシュフローは、以下のように計算できます。
営業活動によるキャッシュフロー=(400−(400×0.35))+200−50 = 410
・3〜5年目の期末に発生する営業活動によるキャッシュフロー
3〜5年目に発生する営業活動によるキャッシュフローは、以下のように計算できます。
営業活動によるキャッシュフロー=(600−(600×0.35))+200−50 = 540
≪現在価値に割り引く際の資本コストを決定する≫
次に、現在価値に割り引く際の資本コストを決定します。
資本コストは会社でいうところの「金利」です。
そして会社でいうところの金利には、「負債の金利」と「自己資本コスト」の2種類がありました。
この2種類の金利の平均値が最終的な資本コストとなり、WACC(加重平均資本コスト)と呼ばれます。
WACCの求め方についてはここでは省略し、計算結果だけを記載します。
今回のケースの資本内訳と金利は以下です。
総資本 1億円
負債 8,000万円(金利5%)
自己資本 5,000万円(自己資本コスト13%)
実行法人税率 35%
WACC = (5×(1-0.35)×(8,000÷(8,000+5,000)))+(13×(5,000÷(8,000+5,000))) = 7
ここではWACCは7%となります。
≪現在価値に割り引く際の資本コストを決定する≫
次に、未来のキャッシュフローを、今計算したWACCを使って現在価値に割り引きます。
まず、先ほど計算した未来の営業活動によるキャッシュフローは以下の通りです。
・設備投資を行った年の期末(1年後) 280
・初期投資を行った翌年の期末(2年後) 410
・3〜5年目(3〜5年後) 540
現在価値に割り引く方法も様々ですが、ここでは以下の方法で計算したいと思います。
1) 3〜5年後のキャッシュフローを2年後の価値に割り引く。
2)1.と2年後のキャッシュフローの合計を1年後の価値に割り引く。
3)2.と1年後のキャッシュフローとの合計を最終的に現在価値に割り引く。
まず3〜5年後のキャッシュフローを2年後の価値に戻します。
3〜5年後のキャッシュフローはすべて同じなので、ここでは年金現価係数を使用します。
年金現価係数とは、計算対象となる期間のキャッシュフローが毎期同じである場合に使用される割引係数です。
年金係数を使う際のイメージは、以下のような場合です。
まず、現在の金銭価値は、「n年後の金銭価値÷(1+r)n」で表されます。
(rは金利で、「r=資本コスト=WACC」となります。)
そしてここでは「金銭価値=キャッシュフロー」となり、例えば1年後から3年後のキャッシュフローの現在価値は以下のようになります。
キャッシュフロー(CF)の現在価値
= CF×(1÷(1+r))+CF×(1÷(1+r2))+CF×(1÷(1+r3))
= CF×((1÷(1+r))+(1÷(1+r2))+(1÷(1+r3)))
この「(1÷(1+r))+(1÷(1+r2))+(1÷(1+r3))」が年金現価係数です。
なお、年金現価係数の一例は以下の通りです。
また、キャッシュフローが異なる場合には、複利現価係数を使用します。
複利現価係数は、計算対象となる期間のキャッシュフローが毎期異なる場合に使用される割引係数です。
複利現価係数で考えた場合は、キャッシュフローの現在価値は以下のようになります。
(ここでは、1年後のCFをCF(1)、2年後のCFをCF(2)、3年後のCFをCF(3)とします。)
キャッシュフロー(CF)の現在価値
= CF(1)×((1÷(1+r))+ CF(2)×(1÷(1+r2))+ CF(3)×(1÷(1+r3))
なお、複利現価係数の一例は以下の通りです。
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