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雇用関係をめぐる法務の全体像

雇用関係をめぐる法務の全体像

会社は1つの組織です。そして、組織にはある一定のルールが必要です。ルールのない集まりは決して組織として機能することはありません。

 

組織は「様々な考えを持った他人」が集っているので、利害の不一致を招くことが多くなるためです。

 

そしてそれは会社にも言えます。

 

会社にも様々なルールが必要となりますが、特に社内に必要なルールは「雇用関係のルール」です。従業員にとって会社で働くことは1日の1/3の時間を費やすことであり、かつ生活の糧を稼ぐ場所だからです。

 

よって、雇用関係のルールは非常に大切なものとして法令でも規定されています。

 

法務担当者にとっても、雇用のルールを知ることは会社と従業員の関係性を良くしていく上で非常に大切なことです。

 

雇用には様々なルールがありますが、ここではまずその概要を学んでいきましょう。

 

雇用に関する用語

 

雇用に関する法務を学ぶにあたり、あまり聞きなれないいくつかの用語が出てきます。

 

そこで、まずそれらの用語についてまとめて記載しておきます。これらの用語を踏まえた上で学習を進めるようにしましょう。

 

使用者

 

会社のことです。労働者を雇用し、労働に対して賃金を支払うのが使用者です。会社そのものも使用者ですが、会社の取締役などの経営者なども使用者となります。

 

労働者

 

会社に雇用されて働く人のことです。会社の指揮命令を受けて労働し、賃金を支払われる人です。

 

労働に関する法令は、弱い立場の労働者を保護することがその目的の一つとなっています。

 

労働協約

 

使用者と労働組合の間で結ばれる取り決めのことです。使用者と労働組合の協約であるため、原則としてその効力は労働組合員に限定されます。

 

労働契約

 

使用者と労働者の間で結ばれる取り決めのことです。労働契約は使用者と労働者個人とを結ぶ点で労働協約とは異なります。

 

また、労働契約と労働協約では、労働協約の効力が優先されます。

 

就業規則

 

使用者が常時10人以上の労働者を使用している場合に、作らなければならない会社の規則です。

 

作成または変更する際は、労働者の過半数で構成する労働組合あるいは労働者の過半数を代表するものの意見を聞き、その意見書を添付して労働基準監督署に届け出なければならないとされています。

 

ただし、その意見が仮に「就業規則に反対」であったとしても、効力は生じるとされています。

 

なお、労働契約と労働協約、就業規則の関係は以下のようになります。

 

効力が弱い←労働契約<就業規則<労働協約→効力が強い

 

労使協定

 

使用者と、労働者の過半数で構成する労働組合、あるいは労働者の過半数を代表するものとの協定のことです。

 

労使協定は、その締結によって仮に労働基準法に違反していても、それを免れるという効力を持ちます。

 

ただし、労使協定を締結してもそれ自体が労働者に義務を課すことのできるものではありません。

 

例えば、時間外労働で労使協定を結ぶ場合、就業規則で「場合により、時間外労働を行わせる場合がある」などと明記していることで、初めて労使協定に効力が生まれます。

 

労使協定はその内容により、労働基準監督署への届け出が必要なものと不要なものがあります。

 

【例題】
スマートフォンのアプリ開発を基盤事業とするZ社の法務担当者であるA君は、近頃「ブラック企業」という言葉が気になっています。ブラック企業という言葉はA君がチェックしているインターネットのニュース記事に頻繁に登場してきます。

 

そして、ブラック企業がどのような企業なのかのイメージもつきます。

 

過酷な労働環境やセクハラ・パワハラなどの横行、サービス残業などがブラック企業の最たる例です。

 

A君はZ社は決してブラック企業ではないと思っています。新しく成長著しい会社ですが、業務も決して無理強いをされるわけではなく、社員の意図をくんでくれる会社だとA君は感じています。

 

しかしA君は、先日開発部署の社員が「最近はうちもブラックだよなあ」と嘆いているのを耳にしてしまいました。

 

このことにA君は少なからず衝撃を受けました。会社として急成長を遂げている現在、もしかしたら開発部にはそのしわ寄せがいっているのかもしれません。

 

「うちはブラックになり始めているのだろうか」とA君は不安になってきました。

 

【解説】
会社に勤める従業員にとって、例えばその会社では「給与体系はどのような制度になっているのか」、「残業代は支給されるのか」といった待遇に関する問題は大変重要です。

 

従業員の生活に直結するためです。

 

そして、そのことから会社の法令違反、契約違反などは、従業員のその後の人生を左右することにもつながります。

 

ただ、会社としてコンプライアンスが機能していない場合は、会社に都合のよい論理で従業員と接することになってしまい、法令や契約がおろそかになってしまう傾向があります。

 

そのような会社が、いわゆるブラック企業と呼ばれてしまう会社です。

 

例題のZ社の場合は、もしかしたら開発部門が多忙を極め、従業員に負担がかかり始めているのかもしれません。

 

このような問題を解決するためには、まず雇用に関する法令としての制度を知ることが必要です。

 

そして、それらの法令が実際に会社に仕組みとして取り込まれているか、その仕組みがうまく機能しているかを確認することも大事です。

 

雇用関係をめぐる法務の全体像1

 

労働時間

 

労働時間は、労働基準法によって「法定労働時間」が定められています。

 

しかし、業種によっては月によって、あるいは週によって忙しさが異なる場合もあります。

 

そのような場合はどう対応すればよいかを理解する必要があります。

 

賃金

 

賃金はもともと労使間(労働者と使用者の間)で定められています。

 

しかし、時間外労働となると使用者は割増賃金を支払わなければなりません。

 

ただし、「残業=時間外労働」というわけではないため、どのようなケースが時間外労働になるのか、あるいはどのようなケースでどのような割り増しをしなければならないかを理解する必要があります。

 

配置転換

 

配置転換については、会社にその決定権があるようなイメージが強いと思います。

 

これはある意味では正しく、正当な配置転換であれば従業員は会社の決定に従う義務があります。

 

しかし、中には人事権を濫用した配置転換というものもあります。

 

どのような配置転換が人事権の濫用に当たるのかを理解する必要があります。

 

懲戒・解雇

 

会社は従業員を勝手に懲戒・解雇処分にすることはできません。

 

懲戒・解雇処分ができるのはどのような場合かを理解する必要があります。

 

メンタルヘルス

 

平成27年12月にストレスチェックが義務化されたように、会社は社員のメンタルヘルスもケアし、場合によっては休業などでリフレッシュしてもらう必要があります。

 

よって、休業に関する理解も必要です。

 

セクハラ・パワハラ

 

セクハラ・パワハラについては、どのような行為がセクハラ・パワハラに当たるのかはかなり周知されてきた感もあります。

 

しかし、今なお政治家によるセクハラが話題になるなどしているのも事実です。

 

どのような行為がセクハラ・パワハラに当たるのかを理解する必要があります。

 

安全衛生管理

 

会社は従業員の安全に配慮する義務があります。

 

そして安全に配慮できる体制作りが必要です。

 

どのような体制が必要なのかを理解する必要があります。

 

まとめ

 

・会社は、法令を守って従業員を雇用する必要がある。

 

・会社は法令を守っているか、実際に仕組みとして取り込まれているか、その仕組みがうまく機能しているかを確認する必要がある。

 

・円滑に雇用を保つ上では、賃金や労働時間だけではなく、労働者のメンタルや安全衛生などにも配慮しなければならないと法令で規定されている。

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