継続的売買取引基本契約書の概要とつくり方
今回は継続的売買取引基本契約書の概要とつくり方について説明していきます。
この文章を読むことで、「継続的売買取引基本契約書とは」「継続的売買取引基本契約書の作成方法」について知ることができます。
継続的売買取引基本契約書とは
継続的売買取引基本契約書とは、ある同じ取引先との間で、商品を継続的に何度も売買するための契約書です。
基本的にはそのフォーマットは動産売買契約書に似ており、商品を売買するという意味で考え方も同じです。
継続的売買取引基本契約書の注意点としては、1.個別契約についてを明確に定める、2.何度も取引することを前提とした契約書にする、ということです。
継続的売買取引基本契約書は、その名の通り取引の「基本」について契約するため、個別取引の具体内容については明記しません。
また、取引が継続されることが前提で記載しなければならない条項も出てきます。
継続的売買取引基本契約書の作り方
【解説】
※第3条〜第9条、第11〜第13条、第15〜16条については、動産売買契約書の解説を参照してください。
タイトル
タイトルについては、特にルールがあるわけではありません。よってただ「取引契約書」などとしても、問題はありません。
しかし、「取引契約書」の場合は、何を売買しているのかの判断がつかず、後日混乱を招く恐れもあります。
ここでは「継続的売買取引基本契約書」としていますが、より詳細にする場合は「〇〇売買取引基本契約書」などとして、〇〇の部分に売買する商品の名称やカテゴリーを入れてもよいでしょう。
社内でのルールを決め、相手方と打ち合わせて最も両社が納得できるタイトルにしましょう。
前文
前文では「誰と誰が契約するのか」を明確にします。
今回は売主と買主の関係になるので、「売主〇〇(以下「甲」)」と「買主〇〇(以下「乙」)」としていますが、売主や買主という言葉は必須ではありません。
また、継続的売買取引基本契約という言葉は、その後も複数回にわたって表記されると考えられるので「本契約」とし、その後は「本契約」という呼び方で統一しています。
契約内容
第1条
まず、第1条で適用範囲を定義しています。
この契約が継続される個別売買のすべてに適用されるという宣言です。
そして、この契約と異なる条件を設定したいときは、書面で合意した場合に限ってその条件が適用されるとしています。
継続的売買取引基本契約は、比較的長期に渡る契約です。よって、今後内容を変更したいと思うこともあるかもしれません。
そのような場合に備えて、あらかじめ適用範囲と変更条件を決めておきましょう。
第2条
第2条では、個別契約を定義しています。
継続的売買取引は、その時々(個別契約)によって商品自体や発注数量、価格などが変更されることを想定しています。
よって、今後の個別契約で発注される品名、数量、納入期日、納入場所、単価、代金総額などは、その都度注文書及び注文請書で定めることとしています。
注文書などの書面がない状態でその都度個別売買に異なる条件を適用すると、根拠や証拠のない取引になってしまい、そこでトラブルが起こる可能性が高まります。
個別取引でトラブルが起きてしまうと、せっかく基本契約を結んでも意味がなくなってしまうことにもなりかねません。
よって、個別売買で条件を変更する場合は、別途書面を交わすことでその後の証拠を保全し、トラブルを回避するようにしましょう。
一つ一つのやり取りがはっきりした形で残る発注方法が望ましいでしょう。
第10条
第10条では、守秘義務を定義しています。
守秘義務の条項を設けている理由は、複数回の継続的売買取引において何らかの形で相手先の企業秘密を知る、あるいは相手先に企業秘密を知られる可能性があるためです。
当然、企業秘密は社外に流出させてはならないものです。
しかし、一回のやり取りだけであればともかく、複数回となると、取引を柔軟にするためにある程度の情報が必要になるときもあります。
そのような場合に備えて、あらかじめ相手方に渡った自社の情報及び自社で知ることとなった相手方の情報の第三者への開示は禁止しておきましょう。
守秘義務が課されているから情報を開示してもいいというわけではありませんが、「会社として必要な手段は取っておきましょう」ということです。
なお、すでに公知である事実などは秘密にする必要はありませんので、守秘義務からは除外しておきましょう。
第14条
第14条では、有効期間を定義しています。
継続的売買取引では、永久に取引が行われる場合以外は有効期間を設定します。
そして、原則としては、永久に取引が行われるというケースはほとんどないと考えられます。
よって、必然的に有効期間の設定は不可欠と言えます。
有効期間を設けておかなければ、「契約を解除したくてもできない」という事態になることも考えられますので、必ず設定しましょう。
なお、有効期間に特に定めはありませんので、状況に応じて設定しましょう。
通常は年単位で有効期間を設けることが多くなっていますが、取引が頻繁にかつ短い期間で行われる場合などは月単位でも問題はありません。
そして、基本的には双方に契約解除の意思がない状態で有効期間が経過した場合は自動更新とし、更新しない場合は解約の意思表示をするというのがよいでしょう。
自動更新にしなければ毎回同じ内容の契約を結ばなければならないためです。
なお、契約解除の意思表示についてですが、いきなり契約解除となると言われた側が困ってしまいます。
よって「いつまでに意思表示を行う必要があるか」についても明確にしておきましょう。
後文
後文では、契約書の部数と保管場所を明確にし、作成日を記入してそれぞれが記名捺印を行います。
これで契約書は有効となります。
必要で入っていない条文や不要な条文がないかを再度確認しましょう。
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